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北原夏美 四十路 初裏無修正

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[1678] 贖罪23 投稿者:逆瀬川健一 投稿日:2002/09/11(Wed) 21:37

#23【狂宴】
「では、最後の奴隷を紹介しましょう」
 プロの司会者のような粋なアクションで、Sは橋掛りに片手を伸ばした。
 揚幕がぱっと上がると、褌姿の男二人に挟まれた妻の姿が現れた。革製の猿轡が頬に食い込み、白い貌を二分している。スリップとパンティだけを着けているが、ふだんの調教で着せられていたような扇情的なものではないし、デザイナーズブランドのものでもない。どこの主婦でも普通に着けている平凡なものだ。マニアックな猿轡の異様さが際だち、つい今しがた一般家庭から拉致されてきたかのような印象を受ける。
 妻の両腕を背後にねじり上げるとき、男たちの背中が見えた。仁王と龍の刺青。間違いない、京都のマンションで妻に針責めを行ったヤクザたちだ。それぞれが禍々しい陰茎を持つ、あの男たち。
「今夜の奴隷の中ではもっとも若い。しかも、いちサラリーマンの細君です」
 客席に真剣なまなざしをむけ、会場の空気を吟味したSは、ゆっくりと頷いて口許をゆがめた。
「ちょっとがっかりされているようですな。しかし、しばし待っていただきたい。この奴隷の境遇をお知りになれば、みなさんの見る目も変わりますよ」
 Sは咳払いをひとつして、私を指さした。客の眼が、その指先を追う。
「奴隷のご主人がお見えになっております。おっと失礼、ご主人といっても戸籍上――つまり夫君ということです。このかたは、われわれのような因果な趣味を持ち合わせておられない、いたってノーマルです」
 客たちの視線に射るような鋭さが加わっていた。
「ご心配なく。趣味人ではありませんが、こちらの世界に非常に興味を持たれています。細君を私の手に委ねたのは、ご主人本人なのですから」
 室内の空気が、わずかに和らいだ。
「二年前、細君はマルチ商法にひっかかり、ご主人に内緒で借金をこさえました。返済のために、みなさんもご存じのF氏のサークルに入りました」
 F……なつかしい名だった。妻を強姦し、被虐の悦びを仕込んだ男。Sという性の求道者に妻を引き渡した男。Fの名を耳にすると、客同士が下卑た笑みを浮かべながら目配せし合っている。関西経済界に顔が利くとうそぶいていたが、このような陰の部分で暗躍しているのだろう。
「細君の借金は、一年もかからずに返済されました」
 Fと交わした密約を、Sは平然と口にした。借金は、妻が快楽に屈するための、そして私の劣情を容認するための免罪符だった。私たち夫婦が耽る倒錯の性を正当化するためのもののはずだった。それが根底から覆されたとすると、私たちは再び平凡な性に目を向けなくてはならなくなる。いや、夫婦でいられるならまだましだ。自分の卑しい興味のために完済の事実を告げなかったことを妻が知ったら……。夫婦は崩壊する。私の心を読んだかのように、Sが言葉を継いだ。
「もちろん、そのことを細君は知らされていません。ご主人はとっくに知っているというのにね」
 だめだ。破滅だ。私は意を決して舞台の妻を見た。視線があった。妻はかすかにうなずいて見せた。夫に裏切られたことに対する怨嗟も失望もなかった。
「だが、とっくに細君は完済の事実を知っていました――まあ、私が教えたんですがね」
 えげつない奴やで! と誰かがSに野次を飛ばした。数人が笑った。
「賭けでしたよ。去るもよし、残るもよし、とね。その結果が、これです」
 先生がご主人様やったんか! 野次が飛んだ。Sは鷹揚に会釈をし、俯く妻の顎を掴んで正面に向けた。
「私が調教しましたが、奴隷一匹にそう時間はかけられない。人生の持ち時間が少ないおいぼれですからな」
 Sはふいに真顔になって私を見やった。
「この奴隷は、あちらのご主人にお返しすることにします。これで、名実ともにご主人様ということになる。さあ、舞台にお連れしてくれ」
 最後の言葉が終わらないうちに私の肩と両腕に強い圧力がかかった。知らぬ間に、ダークスーツが三人、私の背後に控えていたのだった。もがく間もなく、左右の肘掛けにそれぞれの腕を縛りつけられてしまった。椅子ごと持ち上げられて客席を縫って舞台に向かった。
 目付柱を背に坐らされた私にSがゆっくりと歩み寄ってきた。にこやかな表情を客に向けたままだ。「さきほど、このご主人はノーマルと言いましたが、『今のところは』と言い直しましょう。自分では認めたがらないが、素質は大ありです。そこで、こういった性癖の実際をお目にかけて、こっち側に飛び込んできていただこうという趣向です。なにかご意見はございませんか?」
「手間とちゃいますか」中年男の声。私の位置からでは見えない。「旦那まで構うてたら、きりありまへんで」
「そう焦らんと」年輩の婦人が穏やかな声で制した。「Sさんにまかせといたら大丈夫や。私はええ趣向やと思います」
「ご心配はもっともですが」Sが言った。「このご主人は筋がいい。私が保証します。ご主人は広告代理店に勤務しておられるから、のちのちお世話になるかもわかりませんよ。同好の士やったら商談も早いというメリットもありますからな」
 職業まで暴露されたことに、私は複雑な気分になった。それになんだ? 筋がいいというのは褒め言葉か?

 それから私の眼前で繰り広げられたのは、本物のSMプレイだった。自宅で強制的に見せられたプレイにも激しく興奮させられたが、これに較べると、あれは輪姦の一バリエーションにしか思えないほどだった。
 最初は鞭打ちから始まった。
 三人の女奴隷が舞台に跪き、両手を後頭部で組んで背筋を伸ばしたところへ鞭が唸った。
 仁王と龍の二人に唐獅子の刺青を入れた男が加わり、奴隷たちの背にわずかにタイミングをずらして振り下ろした。Sが膝を折り、私の目線の高さで顔を近づけた。「あれが一本鞭のショート。ショートのほうが小回りが利くから使いやすい。編み目があるから強打は禁物だ。よほどやり過ぎんかぎり疵は残らない。様子を見ながら加減したらいいだろう」
 最初から全裸で現れた奴隷二号のK美以外、一号のR子も妻も衣類の上からの鞭打ちだった。じかに鞭を受けるよりダメージは軽いだろうと考えた私に、Sは言葉を重ねた。
「下着の上からのほうが効く場合もある。布地の繊維で皮膚がすりむけることもあるからね。だが、腕に自信がつくまでは試さないほうがいい」
(腕に自身やと? 何を言うてるんや?)
 私が妻を鞭打つようになるとでも言わんばかりの口ぶりだった。SMプレイを見せつけられただけで性癖が変わってしまうわけはない。私はノーマルだ。妻が性的に満足するシチュエーションを認めているというだけのこと。嗜虐癖はないと言い切れる。
 鞭の打擲音がコンスタントに上がる。そのたびに眉間に皺を刻んではいたが、、両腕を下ろす女は一人もいない。
「よし、ゲストに背を向けて」
 Sの命令に、三人は正座のままでゆっくりと体の向きを変えた。妻がスリップを脱いだ。鞭痕は内出血をおこし、鮮やかな条痕が幾重にも浮かんでいた。そんな背中が並ぶさまは、朱墨より紅い墨で描かれた水墨画の趣を醸し出している。
「名づけて『夕照竹林図』。お気に召しましたかな?」
 客席から湧くうなり声と感嘆の溜息が消える間もなく、三人の刺青男は鞭を和蝋燭に持ち替え、紅の蝋涙を女奴隷の背中に注いだ。女たちは身を左右によじるが、正座は崩さない。
「竹林に雨が降ってまいりましたようで。風も出てきたようですな」
 紅の雨が竹林を彩り、深紅の竹がゆらめく。能舞台と相まって淫靡と幽玄の絶妙なコントラストを立ちのぼらせる。やがて、深紅の竹林は蝋涙に覆われて消えた。
「ゲストのみなさんに見ていただこうか」
 Sの言葉と同時に、男たちは自分が担当する女奴隷の前に回ると、肩に手をかけて膝を崩させると客席に正面を向かせた。背後に膝を突くと、女の上体を倒して胸で受け止めた。両の膝頭を掴んで左右に大きく割る。
 奴隷一号と二号の無毛の股間が見えた。天井のライトをうけ、秘裂がきらめく。濡れているのだ。鞭打たれ、熱蝋を浴びただけで愛液を分泌させる女の姿は哀れだった。
 妻のショーツに男の手がかかった。両サイドの、細い布地を力まかせに断ち、用をなさなくなった布きれを取り去る。露わになったの秘裂は愛液にまみれていた。
「それじゃ見えんだろう」
 Sにうながされた三人の女は、両腕を前に回し、両の指先で左右の大陰唇をつまみ、両側に引っ張った。ピアスをつけているのは妻だけだった。一号と二号の秘部には、ピアスよりも強烈なものが施されていた。大陰唇の裏側に文字があったのだ。分泌液にさらされながらも輪郭が滲んでいないところを見ると、刺青なのだろうか。
「さあ、いよいよお披露目だ。一号から口上を述べなさい」
 一号と二号は、それぞれ隷従の証を口にした。今夜はご主人様の許可をいただいたので、どんな責めでも謹んでお受けしますというようなことを、つかえつかえ言った。
 妻の番だが、猿轡は噛まされたままだ。
「一号と二号は、ゲストのみなさんにご奉仕しなさい」
 全裸の年増は橋掛りを戻り、揚幕の中に消えた。そして、すぐに客席に現れ、四つん這いになって歩んだ。私の位置からは、息子にリードを曳かれた二号が、女性客に平手打ちを食わされるのが見えた。一号の動向は、ここからではわからない。
「三号に関しては、口上は抜きでまいりましょう。とにかく淫蕩な奴隷ですから、その浅ましい様をご覧いただくのが何よりの口上になるかと」
 舞台に立つ三人の刺青男が同時に褌をはずした。すでに陰茎は八分立ちというところか。何人、いや、何十人もの女を貫いてきたであろうペニスは暗褐色に変色し、あきれるほどの存在感と重量感を見せつけている。

 妻への弄虐が始まった。
 前戯はいっさい行われなかった。仰臥した龍の陰茎をていねいにしごいて硬度を高めると、腰を跨いで自らの手で勃起を胎内に納めた。妻の鼻翼がふくらみ、顎が跳ね上がる。ひと呼吸ほどの間を空けてペニスを肉洞になじませると、妻の腰は円運動と前後運動を合わせた複雑な動きを見せた。さらに上下運動も加わる。大臀筋が酷使されているためか、双臀の肉にたるみはない。真横からは連結部が見えないが、淫らな音で様子は容易に想像できた。
 唐獅子が妻の背後に回り、背中を押した。妻はその意味を悟り、両手を龍の胸板に突いて上体を傾けた。唐獅子のペニスは準備万端のようだった。腹とほぼ平行になるまで起き、その先端は臍まで届いている。
 龍との結合部に手を差し込み、そのぬめりをペニスに塗りたくった。粘液による艶が勃起に禍々しさを与えた。妻の尻の前に膝を突くと、唐獅子は一気にアヌスに挿入した。
 妻の鼻腔から呻きが放たれた。二十数センチはある肉幹を押し込まれたのだ、激しい苦痛に襲われているのだろう。思わず顔をしかめた私に、Sがにこやかに言った。
「痛そうだねえ。あんなものを突っ込まれた日には、壊れてしまうかもしれないね。口で息ができるようにしてやれば、まだましだろうが、どうする? 猿轡をはずしてやってもいいかな?」
 私は激しくうなずいた。「もちろんです。あれじゃ体がもちません」
「決定権はきみにある。責めはプログラムどおりに行っていくが、きみがストップをかければ、すべてが終わる。そして夫婦でお引き取り願う。これがルールだ。心得ておいてくれたまえ」
 Sが仁王に目配せすると、妻の猿轡がはずされた。口中に溜まっていた唾液がどっとあふれ、龍の胸元に糸を引いて滴った。苦痛を訴える妻の声を予測していた私は、次の瞬間、わが耳を疑った。
 悲痛な呻きではなかった。男たちのストロークにどんどん追い上げられ高ぶらされているのがはっきりとわかった。荒い吐息の合間に、懸命に言葉を洩らす。「……あう、あう……ありがとうございます。はあっ……はあっ。奴隷の穢れた穴にお情けをちょうだいして……くうっ、いい。それ、いい! ううん、ううん、当たる! 奥まで当たるの……み、身に余る光栄でございます。どうか……どうか、口もお使いくださいませ。せいいっぱい、ご奉仕させていただき……はうっ……」
 妻は首をねじり、私に顔を向けた。細められた眼には欲情の膜がかかっている。
「きみに訴えてるんだよ」
 耳許でSにささやかれ、私は我に返った。
「うなずくだけでいい。いやなら『ストップ』と一言」
 妻の視線を受け止めると、私はうなずいた。即座に、仁王の剛棒が妻の口を犯した。三本の肉杭を受け入れた妻は満足げな吐息を鼻腔から洩らしながら奉仕に没頭しはじめた。
 短時間の間に二度、三度と上りつめる妻に、私は奇妙な感情を抱いた。それは羨望だった。私以外の男と交わることで妻の性欲が深く満たされるならそれでいい、と懐の広いふりをしていたのは単なる強がりだった。私の中の嫉妬心が強い性欲を引き出してくれるのではないかと、Sに委ねた私の浅はかさを呪った。
 妻はすでに以前の妻ではない。口、性器、肛門を開発され、貪欲に男を受け入れる性の囚人になり果てていた。命じられるがままに奉仕することで、自らの性的エナジーを充電する。それはまさに桃源郷に遊ぶ心地だろう。エクスタシーという目的のために肉体と精神がみごとに融合していた。
 羨望を超えて、嫉妬すらおぼえた。発情を自在にコントロールできるばかりか、欲情を満たす肉体を持つ妻に対して。常に欲情することなど、私には無理だ。四六時中、勃起を持続することはできはしない。
 五度目の絶頂を極めると、妻は気を失って龍の胸に突っ伏した。
「何度見ても、たいしたもんだよ」
 Sが溜息をついた。
「ほら、尻だけは蠢いている。肉体のみで勝負しても、男に分はない。だから、私たち男は姑息な手に出るというわけだ。SMしかりスワッピングしかり」
 舞台では、男たちが妻から身を離しつつあった。ゆっくりと引かれる唐獅子の腰を、妻の双臀が追うそぶりを見せた。あきれるほどの貪欲さに、私は固唾を呑んだ。
「心配はいらない。きみの出張中、毎日のように若い衆に突っ込ませていたが、むしろ締まりは良くなっているそうだ」
「いや、そうじゃなくて、ちょっと圧倒されてしまって……」
「調教記録をさんざん見てきただろうに」
「生では一度しか見たことがないもので」
「そういうことか。まあ、じっくり楽しむことだ」
 舞台の男たちがロープを手に、妻に取り付いていた。客席から悲鳴が上がった。見ると、奴隷二号が獣の体位で客に犯されていた。二人の脇に佇む上品な女性客が、十センチほどの針を無慈悲に一号の尻に突き刺している。
 その二列奥に奴隷一号がいた。椅子の上でのけぞるような格好をした男性客の股間に巨大な双乳を押しつけている。俗にいうパイズリを行っているのだろう。
 周囲の客たちは椅子から立ち上がることもせず、奴隷の奉仕ぶりを眺めたり、舞台に目をやったりしている。
「さあ、第二弾が始まるよ」
 Sにうながされて舞台に視線を戻した。
 妻はM字に開脚した状態で緊縛されていた。腹部から胸にかけて亀甲模様が並ぶ。さらに縄は乳房の麓をきつく縛り、双乳を絞り出していた。その頂の突起は、これ以上ないほどに固くしこっている。背後で妻の体重を支える龍が、その痛々しい乳房を揉み込んでゆく。
 新たな快感に陶酔の表情を浮かべはじめていた妻の鼻先に、唐獅子が黒い棒を突き出した。それを自由な両手で押し頂くと、妻は私に面を向けた。
「ご主人様の……ち、ちんぽはもったいのうございますから、この淫らな道具で卑しいおまんこを罰してもよろしゅうございますか」
 妻は私に向かって黒い男根そのものの棒を掲げて見せた。
「特別製の張型だ」Sが言った。「黒人のものを型取りしたものでね、感触、芯の固さまで克明に再現してある。全長三十センチ、直径十センチ」
 私がうなずくのを待ちかねたように、妻はその凶器で自らの女陰を突いた。
「……ふううっ、あう! 太い。無理です。こんなの、入りません。どうか許して、許してください。こんなものを入れると女のお務めができなくなります。お、お許しください」
 無理にやることはない、と口に出かかったが、私の脳裡を浸食しはじめた邪悪な興味と想念がそれを封じた。私の口からは、正反対の言葉が滑り出ていた。
「だめだ。甘えは許さん」
 妻の目に、安堵と諦めの色が交錯したように見えた。
「申し訳ございません。入れさせていただきます。それでお許しいただけますか」
 私は首を横に振った。
 仁王と唐獅子が妻の左右に跪き、両乳首に洗濯ばさみを噛ませた。妻の絶叫が上がった。さらに、左右の大陰唇も洗濯ばさみの餌食になり、新たな叫び声が湧く。それぞれの洗濯ばさみには紐が結わえ付けられており、その先は仁王と唐獅子の手に握られている。
 激痛に耐えながら、妻は両手で握りしめたディルドウを小さく前後させながら秘裂に押し込みはじめた。
「あああ、入ってくる。黒人のぶっといちんぽが入ってくる。裂けそうなの、でも、それがいいの! いいの!……」
 紐を持つ二人は、絶妙のタイミングで妻を快楽の淵から現実に引き戻す。龍も、乳房を揺らしたりしながら仲間の意図を効果的にサポートする。
「ひいいいい……くうっ、痛いの! お願い、いかせて、罰は後で受けますから、お願い! 今はいかせてえええええ」
 哀願とは裏腹に、妻はゆるみきった口許からよだれの筋を幾重も落とし、眉間に皺を刻みながら快楽に身を委ねつつある。妻の脳の中では屈辱感と羞恥心を触媒に、痛覚が愉悦へと変質しているのだろう。
 ディルドウの動きがスムーズになっている。沸き立つ淫液が卑猥な粘着音を響かせる。龍に下から貫かれていたときとは較べものにならないほど猥褻な音だった。
「いきそうだな」Sは、私の腕のロープをほどきはじめた。「どうする? あっさりいかせてもいいのかね」
「さっきたっぷり満足させてもらったようですから、これ以上は贅沢というものでしょう」
 Sは顔に笑みが広がった。「何がいい?」
 私は椅子から腰を上げた。「針をください」

 素人の私は、Sの指導を受けて初めての針責めを行った。
 最初の一刺しには緊張したが、二本、三本と注射針を刺すうちに、この責めの虜になった。乳房はもちろん、太腿にまで針を打った。以前に龍と仁王が使ったまち針とは異なり、シリンダーにジョイントするためのパーツが並ぶさまは美しくすらあった。
 二十一本めの針を刺された瞬間、妻が達した。粘液ではない分泌物を、模造男根に押し広げられた秘裂の上部から噴き上げた。
 その光景を目にした瞬間、私は激しく哄笑していた。その衝動がどこから出てきたものか今もってわからない。ついに何かを突き抜けたという達成感だけはあったような気がする。

 それから数時間にわたって、能舞台と客席で乱交が繰り広げられた。
 九人の男性客が三人の女奴隷を、あらゆるやり方で陵辱した。三人の女性客は、ときおり女奴隷にちょっかいを出すことはあったが、だいたいは刺青男やダークスーツのスタッフたちに組み伏せられ、飽くことなく肉欲を貪っていた。
 私は、九人の趣味人の責めを見学した。年季の入った責め具を持ち込んで使う者、素手のみで巧妙な責めを行う者、さまざまだった。
 やがて、狂宴の熱気も落ち着いた頃、客席の真ん中に一枚のマットレスが敷かれた。スタッフの手によって、その周囲に椅子が並べられた。身繕いをした観客が着席するのを見計らって、Sが言った。
「奴隷三号の刻印の儀を執り行います」
 荒淫にぐったりとした妻が、スタッフの手によってマットレスの上に寝かされた。作務衣姿の痩せた老人が、妻の腰のあたりに木製の道具箱を置いた。
「では、ご主人。どこに、どのようなものをお入れになりますか?」
 かしこまった表情と口調で、Sが私に訊いた。
「何を入れるんですか?」
 私の質問に、客の一部から小さな笑いが洩れた。
「墨を入れます。あなたの所有物である証に。奴隷一号と二号が入れているのをご覧になったはずだ」
 年増の大陰唇に刻まれていたのは、やはり刺青だったのだ。Sからすでに引導を渡されていたのか、妻の表情に驚きはない。穏やかな表情を浮かべて私を見上げている。
 私に否やはなかった。夫婦という法的な絆よりも固いもので、私たちは結ばれようとしているのだ。ご主人様と奴隷という呼び名は芝居じみてはいるが、互いの欲望を尊重する関係を示すにはこれ以上的確な名称はない。
「“爛”――“ただれる”の爛を、恥丘に」
 客の間から溜息が洩れた。
 そして、私は妻が好きな色を思い出して付け加えた。
「紫陽花色でお願いします」
 作務衣の老人が和紙に“爛”と記し、私に確認した。
 私はしっかりとうなずいた。

今回も長々と書いてしまい、申し訳ありません。次回で私たち夫婦の告白を終わらせていただきます。では、後日。

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