[1263] 亜希子5 投稿者:E-BOX 投稿日:2004/06/04(Fri) 21:35
都市部から、車で約三時間の距離。
其処は山深い温泉地だった。観光地と呼ぶには余りにも客が少ない。
その規模さえ小さいのだろう、既に朽ち果てようとする閉館した旅館が目立った。
十数年前なら華やかだったのかも知れないこの旅館も、時折尋ねてくる訪問客に辛うじて
支えられている状況に過ぎないのかも知れなかった。
四階建てから成るその旅館の構造。大広間から続く廊下の一番奥に、その部屋は在った。年代を随所に感じさせるこの和室は、それでもこの旅館の部屋では一番の宿泊料を取るのだという。
漆塗りの一枚板で出来たテーブルには、当地の土産物となる煎餅が置いてある。
それを頬張りながら、一人の男が言った。
「しかし、流石は田沼さんだ・・・こんな場所、よく知ってましたね」
男は天を仰ぐ。大げさな口調だった。男の名は須藤隆夫。太鼓腹に似合わない原色のTシャツが、この和室にはそぐわなかった。
「おい、亜希子」
そう言う須藤の言葉を無視するかの様に、その真向かいで胡座をかく男、田沼五郎が口を開く。
「は、はい・・」
部屋の隅で正座していた亜希子の尻が浮く。咄嗟に呼ばれ狼狽した。
「お茶を入れろよ、気が利かない女だ」
「はい・・申し訳ございません・・」
膝の上に揃えていた指が微かに震えた。俯いた目線のまま、亜希子は立ち上がる。
「まあまあ、そんなに言わなくても。奥さん、緊張してるんでしょう。我々中年男子が取り囲んでいるんだから・・ねえ、高田君」
須藤が先程から一言も言葉を発する事も無く、亜希子の真向かい側に座りビデオカメラを撮影し続けている男に言う。
「え、ええ・・・そうですね・・そう思います」
高田伸章は、蚊の鳴くような小声で返した。その蒼白い顔がビデオカメラに隠れている。この旅館に入る前から、執拗に亜希子をカメラに収め続けている。
「もうカメラ、一旦いいんじゃない?テープ無くなるよ」
半ば呆れ顔を装い、須藤が言う。しかしその眼は高田が構えるレンズの先と同じ方向を凝視していた。その先に、背を向けて茶を入れる亜希子の姿がある。しゃがみ込んだ尻が踵の上に乗せられている。爛熟し張り詰めた三十路の肉球を、須藤の眼と、ファインダーが舐める。
篠塚亜希子は、無言で急須に湯を注いでいた。
精神科の医師、田沼五郎の奴隷にされたあの日から、一ヶ月が過ぎていた。
あの日の痴態。全裸にされ、奴隷になると誓わされた。その姿をビデオに撮られ、デジタルカメラに収められた。
(何故こんな事に・・・・どうして・・・こうなったの・・)
田沼は今や、他人の人妻である亜希子を牛耳っていた。以前、異常と言える性癖を露に持つ、サディスティックな男と付き合っていた日々。その男が亜希子には知らせず立ち上げていたアダルトサイト。個人的趣味とは言え、目線だけを残し、亜希子の全てを暴露している。亜希子を良く知る者なら、先ず本人だと分かってしまうだろう。
それを今もネット上に放置されていた。一体何人の男達が亜希子の痴態を閲覧した事か。
あの頃、性の拷問とも言える男の性癖に堪えられず、一方的に交際を断った腹いせなのか。あれから何年が過ぎているというのか。付き合った男とは言え、余りにも惨い仕打ちであった。
それが今、田沼の命令で見知らぬ男二人を迎え、この温泉宿に連れて来られている。
田沼は、亜希子を妻として呼称したサイトを立ち上げていた。「奴隷妻亜希子」というタイトルだった。苗字は伏せられているものの、名前は本名を使われている。
「どうぞ・・・お茶が遅れまして、申し訳、ございませんでした・・」
声が微かに震える。田沼に叱咤されたが、そう言うのが、亜希子は精一杯だった。
「いや奥さん、お気遣いなく」
真横にしゃがみ、両手を添えて茶を注ぐ亜希子に向かい、須藤が言う。
「奥さん、なんて言わなくてもいいですよ、須藤さん・・亜希子、と呼んでください」
田沼が薄笑いを浮かべた。
「そうですか・・・いやしかし照れるな」
今時珍しく硬い目のパーマをかけた頭を掻く須藤。
「そうだな、亜希子」
田沼が言う。
「・・・はい・・あなた・・」
赤の他人である田沼を、あなた、と呼んだ事に亜希子は唇を噛んだ。そう言わなければならない。命令されている。更にこの男達には、田沼と亜希子は夫婦として認識されている。
あの日、田沼は散々に亜希子を犯した後、こう言った。
「俺と旅行しろ、亜希子・・。その日は仲間を連れてくる。お前を観たいそうだ・・あのサイトを観て・・メールでしつこく連絡をしてきたSMマニアの男二人だよ」
犯された姿勢のまま腹這った亜希子の尻を、踵で踏む様に弄びながらの言葉だった。
「・・・そんな・・・どういう事なのですか・・・旅行って・・」
裸の尻を踏まれながら、亜希子は呻く様に問うた。
「公開調教というイベント告知をしてな・・何人メールがあったと思う?三桁はあったよ。目の前で私に調教を受けて悶える、全裸のお前が観たいんだとよ・・三十路の人妻奴隷ってのが、奴等SMマニアには堪らないらしいな・・」
ククク、と掠れた声でサディストの医師は笑った。
「い、いやです!・・お願い・・・そんな、そんな旅行だけは許して、お願いです!」
うつ伏せた格好のまま、必死に訴える亜希子の尻に、田沼の平手が飛ぶ。
「あうッ!」
亜希子の叫びと同時に真っ白い尻がブルッ、と弾んだ。
「逆らえない事は分かっているな?え?お前はもう、私の妻なんだよ・・私の奴隷妻・・田沼亜希子だ・・」
「田沼、亜希子・・・・?いやです!私は・・篠塚亜希子です!主人の・・あの人の妻です!」
「マゾ奴隷のクセに、私に逆らうとはいい度胸だ・・・」
そう言うと腹ばった亜希子の腰をグイッ、と抱え上げる。
「ああ!!いや!もう・・今日は帰して・・お願い!」
「ククク・・・まだまだ犯して欲しいクセに・・奴隷の様にケツを掲げてな・・」
田沼は今放出したばかりの尻を見据え、再度犯すべく抱えあげる。
「ああ・・・だめ・・いやあ・・・」
熱を持った男根を膣口に当て込まれ、亜希子は嗚咽を放った。放出された精液が、内壁から溢れている。亜希子の言葉と裏腹に、其処は貪欲に、田沼の男根を待っている。簡単に呑み込めそうだった。
「泣け、マゾ妻!」
「ああう!・・・・アッ、いやッ、いやッ・・はアッ、あはあッ・・・・」
そして今日。
目の前の夫と称する男は、依然として言葉でも妻を辱め続ける。
「こいつは私の妻であり奴隷でもある・・あなた方も観たでしょうあの姿を。卑猥な乳、括れた腹、盛り上がった尻、太い腿の肉付き・・。マゾ奴隷そのものの卑猥な肉付きだ」
高田の湯飲みに茶を注ぐ白い手が震える。亜希子は無言で堪えた。
自分の仕草を、真横から高田のビデオカメラが狙い続ける。執拗なその行為が、亜希子に絶望と、言い様の無い拒絶感を与え続けた。胸元を狙っているのが分かる。
「僕なんか、何回、亜希子の画像でイカせて貰ったか分かりませんよ」
須藤が笑う。亜希子と呼び捨てに出来た事への下卑た笑いだった。
「今日は画像じゃなく、生身を観てもらいますから・・」
自分の横に来た亜希子を観ながら、田沼が言う。
急須を投げ出し、耳を塞ぎたい衝動に、亜希子は駆られた。
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