[1264] 亜希子6 投稿者:E-BOX 投稿日:2004/06/04(Fri) 22:06
「じゃあ着替えなさい、亜希子。浴衣がいいだろうこんな場所では」
「・・・・はい・・そう致します・・」
低い声で田沼に返す。亜希子の声はもう逆らう気力を無くした響きが在った。
「待ちなさい」
亜希子の脚が止まる。
「ここで着替えなさい」
浴衣を持ち、隣の部屋に入ろうとする亜希子に、田沼の声が掛る。
「いいねえ、それ。亜希子の下着姿が早速拝めるワケですか」
妙に甲高い声で須藤が吼えた。早くも興奮し切っている様がその響きで分かる。
亜希子は唇を噛み締め、俯いた。自分への辱めは、今始まったのだと思った。
「返事をしなさい、亜希子。復唱だ」
再び田沼が言った。怒気を含んでいる。完全に自分の奴隷だと信じ切って疑わない口調がそれには在った。
「はい・・あなた・・ここで・・浴衣に、着替えさせて頂きます・・」
「高田君、カメラ、カメラ!」
「え、ええ・・・撮ります!」
須藤に急かされ、高田の構えるレンズがこちらを向く。亜希子は思わず背を向けた。
「正面を向け、よく見える位置で着替えなさい・・早くしろ、皆さんお待ちだぞ・・亜希子」
愉快そうに田沼が言った。
「はい・・わかり、ました・・」
亜希子は正面を向いた。目の前に三人の男。その中には、今日が初対面の人間が二人もいる。その中で、自分は裸同然の姿を晒さねばならない。
ブラウスのボタンに手が掛る。震えて上手く外せなかった。
眼を閉じ、無になろうとした。
しかし脳裏には、残してきた夫の顔が浮かんで来た。
「そうか、一日入院か・・・」
この日の言い訳を幾度も考え、悩み抜いて出した答え。それに大して、夫はそう言った。
「検査とか色々あるらしいの・・でも、一泊だけだから・・直ぐに終わるわ・・これが終われば・・・もう大丈夫だから・・」
「ああ、そうだな。行っておいで、完治させておかないとな」
(あなた・・・あなた・・・許して・・・こんな私を・・・)
「凄いパンティですね・・・ハイレグもいいところだ・・」
タイトスカートを脱いだ亜希子に、粘い声が浴びせられる。股間を被う逆三角形の布は、鋭い鋭角を描いている。辛うじて性器と呼ばれる部分を隠しているだけの代物。
黒いTバックのショーツだった。何時購入したのかも覚えてはいない。只田沼には、一番過激な下着を着けて来る様に命令されていた。亜希子は苦悩した後にこの紐で出来ただけの下着を選んでいた。夫にさえ見せた事など無い。
どうしてこんな卑猥な下着を持っていたのか。あの頃付き合っていた男の為に、自分が買った物なのだろうか。
「ブラジャーも外しなさい、浴衣には必要無い」
「・・・はい・・・わかり、ました・・ブラジャーを・・外します・・」
亜希子は抑揚の無い声を返した。感情を殺そうと思った。そうしないと何かが切れてしまいそうな恐怖が在った。
「あの・・・陰毛が見えないのですが・・」
か細い声でビデオを撮影する高田が言う。そのレンズは、股間を狙っていた。
真っ白く軟い肌のそけい部が露出している。中心に在る亀裂だけが見えない程度に。
「剃毛していますから・・まあ、亜希子は元々陰毛は薄いんですがね」
白い手がブラジャーのホックを外した。柔らかい仕草で肩に掛っている肩紐を降ろす。
部屋には異様な空気が漂い始めた。誰かが、音を立てて息を呑んだ。
黒いレース地のブラジャーが外れ、三十路を過ぎた女性特有の柔軟な脂肪をたっぷりと溜め込んだ乳房が、ゆらり、と揺れながら露出する。
「うわ・・・思った通りだ・・・いい乳房を持ってますね・・」
須藤が溜息混じりに呻く。亜希子は思わず両手でその乳房を覆い隠した。
「Eカップ・・と聞いてましたが・・F近いですよ・・大きいな・・」
カメラを向けた姿勢を崩さず、高田もその声に続いた。
「って言うか、長くて太い・・・乳房ですよね・・熟れた茄子みたいだ」
レンズを向けながら、尚も高田が呟く。
「隠すな、直立不動を保てッ!」
叱咤の声が飛ぶ。亜希子は従った。細い二の腕が、乳房から離れる。血管が透けて浮き出した光沢の在る胸部が、白日の基に晒される。
「熟れた茄子、か。なるほどそんな形だ・・何とも言えない猥褻な例えだな。でも的を得ている。この白さ・・乳輪の大きさ。熟れ切った張りの無さも私好みです」
「何とか言ったらどうだ、亜希子・・」
須藤の下卑た言葉に、田沼は礼を求める。あの、主に対する口調を言わせようとしている。
亜希子にはそれが分かる。
田沼は興奮していた。初対面の男達に亜希子の裸体を見せつけ、その反応を愉しんでいる。
「・・・はい・・ありがとう、ございます・・どうか・心行くまで・・・私の、乳房をご覧くださいませ・・」
「奥さん・・本当に奴隷みたいですね・・興奮します・・」
撮影を続けながら高田が又呟いた。口数が少なげに見えるこの男も、饒舌になっているのかも知れない。生の奴隷を目前にして。
「そうです。亜希子は私の妻であると同時に、従順で淫乱な人妻マゾ奴隷だ・・そうだな」
亜希子は俯き、湧き上がる屈辱感に下唇を噛んだ。
「返事をしろ・・・・自分の言葉で名乗って見せろ・・」
「・・はい・・あなた・・・・私は・・淫乱な・・人妻マゾ奴隷の・・田沼、亜希子と申します・・」
「いいなあ・・本名のカミングアウトか・・あのサイトでは、確か苗字の告白部分にピー音が入っていましたよね」
須藤が興奮気味に語る。亜希子のサイトを知り尽くしている口調だった。
「ええ。まさか本名全てをネットでは流せないでしょう」
田沼が答える。
「こうして、裸体を晒し・・直立不動の姿勢を取らせ、本人が目の前で本名を名乗る・・・それが本来のマゾ奴隷の姿ですよ」
悦に入った様子で、田沼が語る。亜希子は固く目を閉じ、黙したままで立ち尽くしていた。
眉間に苦悶の如く縦の筋が浮き上がっている。剥き出された乳房が、息衝く度に大きく上下する。
起立した腕が、腿の真横で微かに震えている。晒した身体が傾いで今にも倒れそうに思えた。それは裸体を晒しているという状況だけではない。自ら、田沼亜希子という名を名乗らされた絶望感からだった。
夫が脳裏に浮かぶ。笑顔だった。自分の妻が治療の為に家を出る際に見せた笑顔。
亜希子はその夫の映像を掻き消そうとしていた。その苦悶が表情に出ていたのだった。
無にならなければ、ここから先は到底堪えられない。
これは、罰なのだと思った。自らの性癖、マゾヒストである事を隠し続けた報いなのだと。
(田沼では無く、夫を裏切り続ける私自身に・・・この罰が下った・・そう思うしかないの・・このおぞましい欲望を・・・いやらしい想いを・・全て・・闇に葬りたい・・この旅行で全て終わらせるから・・あなた・・許して下さい・・)
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