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北原夏美 四十路 初裏無修正

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[653] 家主・4 投稿者:えりまきとかげ 投稿日:2002/07/23(Tue) 03:13

目を覚ますと妻の梓の姿はもう無かった。
時計の針は11時を指している、デザインオフィスを家に移動させてからだんだんと公私の区別を付ける事が難しくなって来ていた。起きたい時に起きてやりたい時に仕事をして寝たい時に寝るといういい加減な暮らしが身に就きつつある。
梓は初めのうちこそ、こんな私に文句を言っていたものの、一向に改めるどころか益々ひどくなる一方の私の自堕落な生活振りに最近は文句さえ言わなくなってしまった。

食卓にはいつもの様にコーンフレークが置いてある。最近の私の朝食である、いつ起きるか分からない私に対して妻の考えたワンパターンのメニューだ。冷蔵庫から冷えた牛乳を取り出し、コーンフレークの盛られた皿に注ぎ、味気ない朝食を頬張りながら、昨夜の梓の行動を反芻してみた。

帰ってくるなりシャワーを浴び、手際よく私の夕食をこしらえると、自分は食べる事無く寝室へ引き上げてしまった。食べないのかと聞いてみたが疲れて食欲が無く朝が早いので寝るとの事だった。
夜鷹の私は、それから深夜までパソコンワークを続けていたのだが、早く寝た筈の梓の居る寝室のノートパソコンから繋がれている居間のターミナルアダプターが接続のランプを点灯させている。それもかなり長い時間に渡って続けられていた。
寝室に残されている梓のノートパソコンは鍵が掛けられており開く事が出来ない。
遅くまで何をやっていたんだろう?
梓は、もともと隠し事を好む方ではない、なのに何故こそこそと部屋に篭ってパソコンを弄っていたのだろう?二日前、教えたエロサイトの事が頭の中に浮かんだ。

ベランダ越しにひひ親父の邸宅を眺めてみるが、しんと静まり返っているだけで何も動きは無かった。
ひひ親父は、いつも庭や駐車場をうろうろとしょっちゅうぶらついているのだが昨日からその姿を全く見ていなかった。「あの、ひひ親父が家に篭りっきり・・・。それも、梓がバイトに行くように成って急に・・・。」ざわざわと胸に不安の影がちらつき出していた。
その時、玄関脇にいつも止められている二台の自転車の内、妹の静の自転車が無い事に気付いた、クロはベンツの入っているガレージの奥に有る小屋に繋がれ日差しを避けるように木の陰に成っている地面に寝そべって舌を出しハアハア肩で息をしている。今日の暑さは今年一番になると昨夜の天気予報で伝えていた。
梓はひひ親父と二人きりで家の中に居るのか・・・。家政婦のバイトに行っているのだからそんな事は当たり前である、しかし私の動悸は早鐘のように高まっていた。

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