[805] 家主 34 (終話) 投稿者:えりまきとかげ 投稿日:2002/11/04(Mon) 06:47
テラス越しに夫の存在さえまるで気に留める様子も無く、目の前で繰り広げられている光景はあまりにも衝撃的で汗ばんだ肌から一気に水分を蒸発させてしまい、背筋を悪寒が襲う。
強引に引き立てられて行った筈の梓だったが、今や完全に身体をひひ親父に凭せ掛け、腰を抱きかかえられながら隙間無く肌を密着させている。
腰・・・と言うよりもその手は、歩みを進める度に左右にダイナミックに揺れる丸々とした肉丘を露骨に撫で回し、耳元ではしきりに何やら語を吹き込んでいる。
言葉は聞えなくても、むづがるように腰や頭を上下動させる様子からは、明らかに猥褻な匂いが感じとれる。
その上、梓のいでたちは夫の私までが赤面してしまうほど高い露出度・・・と言うよりも、上半身が身を摺り寄せる巨体によってあらかた覆われてしまっているため、剥き出しに成っている太い腿から下の素足しか目に入らず、まるで裸で引き立てられているかのようにさえ見える。
ここからでは確認する事は叶わないが、二人の姿は、他のアパートの部屋からも丸見えに成っている筈だ。誰が見ても只ならぬ異常さを感じるのは、まず間違い無いだろう。
高く迫り出した尻肉のボリュームには、男物のTシャツでさえ窮屈そうに布地をパンパンに引き伸ばし切っており、ウエストに掛かったひひ親父の腕に手繰られて、歩く度に太腿の露出を増している。
遂に裾は腿と臀部の境界線にまで達っしてしまい、こうなっては打ち振られる大尻によって陵戒線を割ってしまうのは確実だった。
アアッ・・・!思わず身を乗り出して顔を網戸に押し付けるほどに接近させた・・・。目は大きく見開かれ、だらしなく緩んだ口許からくぐもった声を発していた。
Tシャツの裾は遂に尻の丸みの頂に乗り上げてしまい、後はウエストラインへと連なるなだらかな斜面を一尺ずつずり上がるしかなかった。
お・・・おまえ・・・何も着けてないのか・・・。呻きに成らない呻き声が独りでに漏れ出た。
プリンプリンの尻肉は夏の日差しに眩く輝き、日焼けした脚と真っ白な尻のコントラストを水着跡のビキニのラインがくっきりと仕切っていた。
恐らく梓は後ろが丸出しに成ってしまった事に気が付いていないのだろう、相変わらずひひ親父の肩に頬を預けたまま、幾分ふらつきながらも変わらぬ歩みを刻んでいる。
まるで“裸の王様”を地で行くような、余りに惨めな姿だった。
梓とひひ親父が家奥へ姿を消してからも私はいつまでもテラスから離れる事が出来なかった・・・。
夏の長い日も西へ傾こうとしていた。
目線は家主宅へ向けられてはいる物の、何の変化も見つける事は出来なかった・・・。ただ家屋全体がとてつもない淫臭を漂わせているように感じた。
そして頭の中では、狂おしいばかりの妄想が渦を巻いていた。
愛する妻、梓の中で凶暴に牙を剥き荒れ狂うひひ親父の巨根・・・それに応えるかのごとく打ち振られる豊かな尻肉・・・愉悦を極め咽び泣きながら刻まれた眉間の皺を極限まで深めながら歪むきつく閉じ合わされた瞳・・・激しく突き破り夥しく子宮にぶちまけられる大量のザーメン・・・美味そうにいとおしく情交の名残を清め取るぽってりとした肉厚の唇・・・。
そして耳には昨日の身の毛もよだつ程の歓喜の声と、私との決別を意味するひひ親父への隷従の声が繰り返し繰り返し聞えていた。
網戸越しに掛けられた声に、やっと我を取り戻した。
真夏の日差しは山の稜線に消え去ろうとしており夕焼け空の橙色の光線が辺りに立ち込め夜の訪れを告げていた、家主の邸宅の長い影法師が我が家のテラスにまで掛かっており。
その影の中心に、日差しを避けるためのつば広の帽子を被ったしずが自転車に跨って私に手を振っていた。
真夏の炎天下、開け放たれたテラスに向かい一体何時間たたずんでいたのだろう、着衣は汗だくで気味が悪いほどに水気を含んでいた。
ランニングシャツとステテコはベットリと肌に張りつき密着しており、あからさまにツッパリを浮き出させる勃起が眼下で奮い立っている。
こんなみっともない姿でずっと一日中窓辺に突っ立っていたらしい・・・。
その上、限りなく続いた妄想の中で幾度か精を噴いたのだろう紺色のステテコの中心部ではどぎつい大染みが紺地を黒く塗り変えていた。
昼には殆ど出払っていた前方の駐車場の契約車の粗方が既に戻っており、今頃は部屋で眉をひそめて陰口を叩かれているのは確実だった・・・。それも最も辛辣な表現で・・・。
「御主人のあの姿を見りゃあ、だいたい何が有ったかくらいは見当がつくよ。兄とは気が遠くなるほど長い事一緒じゃからのう。」
しずは梓が出て行ってから、ずっと開けっ放しに成っていた、玄関から遠慮無く入り込んできて、食堂の椅子に座って煙草をくゆらせ始めた。
私は汗とザーメンでベトベトの着衣を着替えたかったのだが、でんとしずに居座られて、ばつの悪さに股間を食卓の下に隠すようにして向き合って座っていた。
「気の毒じゃが・・・御主人、奥さんの事は諦めにゃならんかもしれんよ。」
「あ、諦め・・・。そんな・・・。」
「内の兄の噂は、御主人だって知らん訳じゃないじゃろう・・・。昔から言うじゃろ“火の無い所に噂は立たない”って・・・のう。全くその通りでのう、兄に一辺でも色事を仕込まれた女子は、自殺でもせん限りは、その肉欲から逃れられんように成ってしまうんじゃよ・・・。梓さんだって例外じゃありゃあせんよ・・・、現に今だって二人は延々と肉を食らい合っとる筈じゃよ。」
食卓を両手でバンッと打ち据えて声を荒げた。
「梓はそんな女じゃない!あんたに何でそんな事が言えるんだ!」
しずは、驚いた素振りも見せず、キッと強い目線を私に向けて。
「いくら吠えたところで、事実は曲げられやせんのよ。経験者の私が言うんじゃから間違いは無い・・・。情けない姿を晒さずにじっと私の話しを聞け。ええかそれしか道は無いんじゃから。」
「け・・・経験者・・・。」
「さよう、さっき言うたじゃろ・・・“火の無い所に噂は立たん”と。」
脳天をハンマーで一撃にされたような衝撃を受けた。これ以上は、しずの言葉に反論する気力さえも失ってしまった。
しずは、静かに一人語りを始め、私はただ俯きじっとそれを呑み込んだ。
「兄はのう、あんたらが陰口を叩いている通り、私の・・・それも始めての男やったんじゃ・・・、始めは親の目を盗んでお互いに異性への好奇心で身体を触り合っておるだけじゃった。じゃがのう年頃に成りゃあのう・・・情報の少ない時代でもだんだんと増せた知識を持つようになる。そんでのう・・・見たんじゃよ、てて親と母様が寝床で声を堪えてふける姿をのう。兄に急かされ襖の陰から声を殺して・・・、てて親が兄と同じ棍棒をおさねに突き刺して・・・枕を噛み締めて声を殺しながら熱病患者のようにうなされているような母様の表情をのう・・・。」
ここまで言い終えると、さすがに喉が乾くとみえ、私に飲み物を催促した。
氷を浮かべた麦茶のグラスを傾けると、再び語り始めた。
「次の日、母様が買出しに行く留守番を言い付けられると兄は早速、私の部屋へ遣って来て胸や股をいらい出しよった。私もいつものように兄を白褌から取り出してゆるゆると扱いてやった・・・。ここまでは日常の悪戯で、私が手を使って兄を導いて悪戯は終わるのじゃが今日の兄は、いつもと違っておった・・・。扱けど扱けど吐き出さん・・・、そうして私に“俺もとう様みたいに、しずの股へ出したい・・・”とせがんだ。いくら子供と言えども、既に女学校へ通うていた私には、兄とそんな事になる事が許されよう事で無いのは充分に理解していたのじゃが、欲望に我を忘れた兄は、抗う私を省みずに圧し掛かってきおったんじゃ・・・。」
ふう~。溜め息をついて、かっと開いていた目を閉じて続けた。
「昨夜、てて親の性器が膨らんでいる所を始めて目の当たりにした時、兄の物がてて親のそれよりも数段、巨大な事に気付いておった・・・。母様のおさねを破るてて親のそれは、薄暗い中で遠目ではあったが、いつも目にしていた兄の物の半分の大きさも無いことが覗えた。そんな兄と一つに成る事が心底、恐ろしかったのじゃが。自制心が失せた兄は昨夜の光景を真似るが如く、私の処女を一気に割り裂いたんじゃ・・・。」
しずの話は余りに痛々しく、聞いているのも辛かった・・・、だが股間はその禁断の相姦絵巻と、しずとは違い処女では無くとも稚拙な性技にしか経験の無い梓の受けた衝撃を夢想して嘶きを増し続けていた。
「それから兄は一日も空ける事無く私の中に毎日毎日、精を注ぎ続けおった・・・。許されざる行為である事なぞ私だって百も承知しておった・・・。じゃが・・・兄に寄って極めさせられた悦楽は、麻薬のように私から理性を奪い取ったんじゃ。勿論、兄弟じゃからとて子種は容赦はしてくれる筈も無く、堕胎を繰り返し・・・。親にもばれて引き離された・・・。私とて馬鹿では無い、兄を忘れようと幾度も恋をした・・・しかし遂には、兄を超える・・・と言うよりも私を悦ばせる事の出来る男とは、めぐり合わず仕舞いじゃった・・・。今から思えば当然の事なのじゃが若かった私は、それでも男を捜し歩き・・・。遂には子宮は使い物にならなくなってしまい・・・。女としての私の生涯は二十歳で終わって仕舞ったんじゃよ・・・。」
話し込むしずの目尻には薄っすらと涙の粒が光っていた。
玄関で履物を着けながら、しずは「兄の慰み者になったとは思うておらんよ・・・。破天荒な兄じゃが心は特に女子には、限りなく優しい兄じゃ・・・。余りある性欲を向けた相手には、最後まで面倒を見よる・・・。今でも養育しとる子の数は両手両足の指を合わせても足らんほどじゃ。まあ・・・資産が有るから出来るんじゃがの・・・。だが、資産なんて使えばいつか底を尽こう。兄が事業に手を出しとるんは、そのためじゃ・・・。」
ただ、私は黙ってしずの話を聞いていた。普通に考えればしずは、哀れなひひ親父の犠牲者で悲劇の半生を生きて来たとも思えるのだが、しずにはそんな悲劇性は微塵も感じなかった。金が有るから・・・そうは思えなかった。金が悲劇の縁で喘ぐしずを救える訳は無い・・・。
「御主人・・・私、さっき梓さんを諦めろって言ったじゃろ・・・。じゃがのう、あんたさえ耐える事が出来るのならば、今一度よう考えてみんさい・・・。あんたの辛さはよう分かる、私だって今のあんたの何倍もの苦汁を舐めてきたんじゃ・・・。梓さんとて手放しで兄と愛し合とる訳じゃあないんじゃ・・・。ただ、今は心でのうて身が兄を求めよるんじゃ・・・わかるな。だがのあんたさえ耐える勇気を持つならば、やがては梓さんは、あんたの元へ帰って来よう・・・。なんせ兄は来年には米寿を迎えるんじゃからのう・・・。あんたが許せるか否かにかかっとるんじゃよ・・・それは、あんたばかりで無く、梓さんの生涯ものう。悲劇の私を救ってくれたのも・・・愛じゃった、人は愛無しじゃ生きられん・・・。肉欲や失望などは、ほんの一時の気の迷いじゃよ。歳を取りゃ分かる・・・。」
ようやく、ひひ親父がこの齢まで妻を娶らなかった理由がはっきりと分かった。
しずは、最後に「な、御主人・・・悪い話ばかりでもないぞ。暮らしに困ることは何も無くなるんじゃからのう・・・。」と言い終えると、玄関の戸を開けてどっぷりと暮れた闇にとけた。
私は、梓がいつ帰っても良いようにベッドへ潜り込み、冴え切った目を無理に閉じて睡眠を演じた。
―終―
コメント
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あ~ぁ
Re: 抜け分?
家主29の後に掲載させていただきます。
ありがとうございました。
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