[3898] DVD10 投稿者:CD 投稿日:2006/01/09(Mon) 22:57
寝不足の頭で出勤した私は、すぐに部長の部屋に呼ばれた。
ヒラの私は、部長室など、はいったことすらない。
「・・・K藤です・・・」
「おお・・・はいりたまえ・・・」
秘書の案内で部屋に入ると、部長が応接セットに案内してくれた。
「・・・おめでとう・・・K藤君・・・来月から営業1課の係長を頼むよ。」
「・・・え?・・・」
呆然と言葉が出ない私。
「どうした・・・うれしいかね?・・・」
「・・・は・・・はあ・・・」
間抜けな声しか出ない。
「・・・ところで・・・」
「・・・は、はい・・・」
「君は、H 川氏とは知り合いなのかね?・・・」
「・・・え?・・・いえ。べ、べつに・・・」
「ふうん、そうかね??・・」
不振そうな部長。
「そ・・・その、H川氏って・・・どなたですか?・・・」
「??・・・知らんのかね君は?・・・」
呆れた声の部長。
「・・・H川氏はわが社の大株主であるだけでなく、
市内のいろんな企業、マーケットや不動産や駐車場までたくさん持つ実業家で、
昔っからのこの街1番の名家だよ。
江戸時代には殿様の財産まで凌いだと言う歌までが残されているくらいなのに・・・」
「・・・あ・・・え、そう。そうでしたよね・・・」
ごまかすように言ったものの、この町の生まれではない私には、知識がなかった
ここでビジネスを進めるにはこの街では致命傷になるのかも知れないし、
ごまかすしかなかったのだが・・・
しかし、あの壮大なお屋敷を見れば、うなずける話ではある。
妻はこれからあのお屋敷で暮らすのか・・・
妻妾同居とも言うべきか、
私一人に愛をささげてくれていると信じていた多恵子の愛人としての生活。
・ ・・想像もつかない。
清楚な純情さに引かれて結婚したのに・・・
新婚旅行での全身の笑顔。
・ ・・「奥さん、ホントにうれしそうね・・・」
ツアーのほかのカップルにまでからかわれるほどの舞い上がりぶりで、
僕との結婚を喜んでいた妻の多恵子が・・・・いまだに信じられない。
ああ、奥様が病気ということは、妻はあの屋敷に暮らしてH川さんに仕えるのか。
あれ、あのこの街最大のAマンションにも部屋を買うって言ってたな・・・
妻のこれからの暮らしを思い浮かべると・・・
ますます遠くへ行ってしまったという実感が沸いてきました。
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