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北原夏美 四十路 初裏無修正

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所 8/22(火) 19:57:43 No.20060822195743

妻は娘が転校しなくても良いようにアパートを借り、離婚時の約束通り、週末になると娘を連れて来ていたが、私は娘を預かって泊めるだけで、妻とは一言も言葉を交わさず、一歩も家の中には入れていない。
遠藤は私が会社に乗り込んで全て話した事で、怒った父親に勘当されたが、そこは親子で、父親が慰謝料を持って謝りに来たところを見ると、数年で勘当も解けるのだろう。
悲惨なのは池田で、養子だった為に怒った奥さんに離縁され、当然社長の座も失った。
ただ奥さんは子供達の事を考えてか、犯罪では無かったと言い張り、私の妻も悪いと言って譲らなかったが、やはり穏便に済ませたい様で、後日弁護士を使って高額の慰謝料を提示してきた。
あとは楠木だけだが、私の再度の請求に、婚姻関係は破綻していたと言って逃げ回る。
私も楠木の顔を二度と見たくないと思っていたので、思い付いた時に電話するだけで会いには行かなかった。
しかし離婚して3ヶ月が過ぎた頃、楠木の自宅の電話も携帯も解約されてしまって連絡が取れなくなったので、前日から泊まりに来ていた娘が友達の家に遊びに行った隙に、楠木の家に行ってみた。
すると玄関には楠木の家ではなくなった事を知らせる張り紙がしてあって、裏に回って中の様子を伺っても、静まり返っていて人の気配が無かったので、工場へ行くとあの年配の男が掃除をしている。
「もう此処とは関係がなくなってしまったが、長年世話になった工場だからな」
聞けば楠木は可也の借金を抱えていたが、金銭感覚は麻痺していた様で、高級車を乗り回して以前と変わらぬ生活をしていたと言う。
しかしあの一件で2社からの取引が無くなると諦めも早く、さっさと倒産させて今ではアパート暮らしをしているそうだ。
どうして彼ら3人は、この様な危険を犯してまで妻に執着したのか。
普段のお淑やかな妻とのギャップに、それほどまでに魅せられてしまったのか。
妻もまた、どうしてこの様な事に。
「楠木のアパートを教えて下さい」
楠木の住んでいるアパートを聞いて愕然とした。
そのアパートは、妻と同じアパートなのだ。
離婚したので、妻と楠木がどの様な事をしていても関係ないはずなのに、なぜか猛烈な怒りが込み上げてくる。
特に週末は娘を預かっているので、ビデオで見た様な事をしているのではないかと思うと、なぜか辛くて遣り切れない。
こんな妻でも、私はまだ愛しているのか。
その夜娘が眠ってしまってから迎えに来た妻を、離婚してから初めて家に入れた。
「アパート暮らしは楽しそうだな」
「えっ?」
「週末は有希を俺に預けて、楠木とお楽しみか?」
妻は俯いてしまった。
「離婚したから、俺には関係無いか」
「そんな事はしていません」
「それなら、どうして楠木と暮らしている事を言わなかった?」
「一緒に暮らしてなんかいません。彼が勝手に隣に引っ越してきて・・・・・・・」
「どうして優子のアパートを知っていた?偶然なんて言うなよ」
「分からない。私は教えていない」
「もう離婚したのだから、嘘を吐かなくてもいい。昨夜からお楽しみだったのだろ?」
「そんな事はしていません。彼は言い寄ってくるけれど、私は・・・私は・・・」
「そうか。昨夜から今までしていて、迎えに来るのが遅くなったのか」
「違います。今日も仕事でした。遅くなったのは、急に残業になってしまったから」
あれから妻はスーパーに勤めたので、ほとんど平日しか休みが無い。
私は自分の事を、いつまでも女々しい男だと思った。
離婚したのだから、妻が何をしようと関係無いはずだ。
しかし私の口からは、妻を困らせる言葉しか出てこない。
「有希は俺が育てるから、もうここには来ないでくれ。あんな男のいる環境の所に、有希をおいておけない」
「有希まで失ったら・・・・・・・・」
「失う?有希の事よりも、楠木に抱いて欲しくて仕方がないのだろ?普段は有希が寝てから楠木の部屋に行くのか?まさか奴が来て、有希が寝ている部屋で」
「そんな事はしていません。あの時も私は有希を守りたかった。有希が私の事で後ろ指をさされるのは避けたかった」
この時の妻の真剣な表情から、妻は本当にそう思い込んでいるのだと感じた。
脅されて仕方なく従っていただけだと思い込んでいて、自分が快楽を求めていた事など、少しも気付いていない様だ。
「どちらと暮らすか有希に選ばせよう。優子のしていた事を全て話して」
「やめて。そんな事言わないで」
妻は狂った様に泣き叫ぶ。
「俺も有希に、そんな事は話したくない。お前が有希を放棄して帰れば、話さないと約束する」
妻が娘をおいて帰る事など出来ないと知っていた。
「帰れない。有希をおいて帰れない」
娘を利用する事に罪悪感を覚えていたが、別れてしまった妻に対して、今の私には他に強く出られる事がない。

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