[2477] 再婚男の独白<7> 投稿者:風倫 投稿日:2003/11/18(Tue) 23:35
30分後。私はクローゼットルームの片隅で息を潜めていました。目の前のガラスの向こうでは、北村が半裸でタバコをふかしながら、ベッドに腰掛けています。どこかで見た構図のような気がして、ようやく思い当たりました。
(DVDと同じ光景だ。つまり、カメラをこの場所に設置して隠し撮りしていたのか)
妻は、撮られることを承知してはいなかった。北村と愛人関係になったとはいえ、そこまで心を許したわけじゃない。哀しい安堵感でした。
寝室のドアが開いたのは、そのときです。室内に仕掛けてあるらしいマイクの拾った音が、左右の小型スピーカーから流れてきます。一体、何の目的でこんな設備を作ったのか。いずれにしても、まともな神経の持ち主とは思えません。
「どうしたの? 急にメール送ってくるなんて……」
今朝見送ったばかりのクリーム色のワンピース。私が昨年のクリスマスに贈ったプラダのバッグ。何度目を凝らして見ても、それは最愛の妻でした。
「急にやりたくなっちまったんだよ。おまえも、うずいてるんだろ?」
隣室に潜む私を意識してか、北村はことさら野卑た言葉を投げました。
「もう……困った人ね」
怨じるように軽く睨みつつも、床に投げ捨てられた北村の衣服を手際よくたたみ始める妻。少なくとも現在は、脅されて強要された関係でないことは明らかでした。
「今日は、あんまり時間がないの」
潤んだ声で告げながら北村の足元に跪くと、両手を男の股間に伸ばしていきます。続いて妻の頭がそこへ吸い込まれていきました。どうやらまず口で奉仕することが、彼女と北村の決められたプロセスになっているようです。
やがて北村がうめき、精を飲み下した妻はスラリと立ち上がりました。ここまではDVDで見慣れた光景です。
挑むように艶然と北村を見つめながら衣類を脱いでいく姿は、高級コールガールのようでした。私にも馴染みのあるフランス製のブラを外し、ショーツを手のひらにまとめると、彫像のような裸身を誇らしげに晒してから、ベッドに身を滑り込ませました。
満足げに笑った北村が、身体を起こします。張りのある真っ白な乳房が荒々しい愛撫でひしゃげ、舐め立てられていきました。
「ああ、あん……いい……」
甘やかな声を上げながら、妻の手は北村の背中や頭をいとおしげに撫でています。
長い前戯が終わると、北村は仰向けに横たわりました。これもいつもの手順なのでしょうか。妻はためらう様子もなく、その上に跨っていきました。右手で北村を股間に導き、少しずつ腰を沈めていきます
「んっ、んっ、うぅん!」
私の位置から結合部は見えませんが、その嬌声で妻が胎内深く北村を受け入れたことを知りました。
(ついに、見届けてしまった)
私の絶望などお構いなしに、妻はしなやかな腰を淫らにくねらせ始めます。はじめはゆっくりと、徐々に激しく。自分で両の豊かな乳房を揉んでいたかと思うと、今度は薄桃色の乳首を北村の口元へ押しつけたり、北村にねっとりとしたキスを浴びせたり……明らかにみずからの意思で、奔放に振る舞っています。
一匹の牝と化した妻の痴態を目の当たりにして、私は泣いていました。とめどなく涙を流しながら、ズボンをおろして逸物にしごきをくれていたのです。
「すごい……ああ……素敵!」
北村の上でのたうつ妻の美しい肢体はいつしか桜色に上気し、律動のたびに玉の汗が飛び散るほどでした。
長い時間のあと、静寂が訪れました。騎上位のまま果てた妻は、北村の胸にくず折れると切なげに眉根を寄せて荒い息を吐いています。一方の私も、めくるめく興奮の中でおびただしい精を放っていました。
本来ならば肌を合わせて余韻を共有しているべき夫婦が、ガラスを隔てて別々の快楽を貪っている。妻が私の存在を知らぬとはいえ、あまりにも凄惨な状況に、私はゆっくりと発狂していくような感覚を味わっていました。
そんな私に、北村がガラスの向こうから一瞥をくれ、薄く笑ったような気がしました。
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