[3709] 情けない 2 投稿者:飯田 投稿日:2005/11/03(Thu) 08:27
本当は声を出して泣きたいのだが、それだけは何とか堪えた。
これは男としてのプライドか?
涙を流していては、プライドなど既に無いのだが。
普通の夫ならここで激怒し、離婚と言う言葉を叫ぶだろう。
すぐに離婚を口にしないまでも、頬を張り、家から叩き出しているだろう。
しかし私には、何も出来なかった。
夢か現実かの、区別すらもついていないのだ。
妻は週3回、生花店の2階を借りて教室を開いているが、その日以外は、温かい物を
食べさせたいと言って、昼食の弁当を届けてくれる。
その時、自分の弁当も作ってきて、一緒に食べる事もある。
仕事からどんなに遅く帰った日でも、必ず起きて待っていてくれて、一緒にお風呂に
入り、一緒に食事をする。
休日は2人で山歩きをし、季節の花を見に、遠くまでドライブする事も多い。
セックスも週2回はしていて、現に昨夜もしたばかりだ。
その妻が他の男と付き合っていたなど、すぐには信じられるはずが無い。
「相手は誰だ?」
「・・・・瞳の担任だった・・・・・加藤彰先生です」
この男なら知っている。
知っているどころか、我が家で一緒に食事をした事がある。
昨年、下の娘が中学3年だった時の担任で、体は細くて背が高く、青白い顔をした、
無口で大人しい男。
同じく教師だった奥さんが、同僚と不倫して家を出て、酷い事に、子供をおいて出た
ので、男手一つで2人の娘を育てている。
我が家も娘2人なので、役員をしていた妻は子供の育て方など、何かと相談に乗って
いたようだ。
妻が世話好きなのは昔からで、加藤の事を男としてよりも、幼い娘の父親として見て
いたので、まさかこの様な日が訪れるとは、想像もしなかった。
娘の進学では、他の生徒よりも随分世話を掛けたので、娘の卒業を待って食事に招待
したが、加藤の娘は小学3年と1年で、2人共礼儀正しく可愛かった。
お姉ちゃんはしっかりしていて、絶えず妹の世話を妬く。
妹は知らない家で不安なのか、お姉ちゃんの服の裾を掴んでいた。
それを見ていた私は、娘達の幼い頃を思い出し、この子達は母親に裏切られながらも
頑張っていると思うと、目頭が熱くなったのを覚えている。
加藤はと言えば、小さな声でボソボソとしか話さず、私との会話も続かない。
お酒を勧めたが、飲むのか飲まないのかはっきりせずに、結局私1人が飲んでいた。
奥さんが一方的に悪いと分かっていても、この男なら仕方がないとも思ってしまった。
しかし私は、その男に妻を盗られようとしている。
私はこの男よりも下だと言う事か?
情けない。
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