川越男 10/3(金) 10:04:31 No.20081003100431 削除
「なるほどね…だんだん解ってきた…」
腕を組み、一人納得している私を不思議そうな顔で木村さんが見ています。ですが、今は一々説明している余裕はありません。木村さんには悪いですが、私は質問を続けます。
「もしかして、先週の電話は木村さん?」
「先週って……あぁーハイハイ、それじゃあ、あの電話は社長だったんですね」
(やっぱりな…)
【淳子】と言う名前でピンと来ました。私が妻の携帯からかけた女性は木村さんだったのです。
「て事は、妻はあなたに…」
「ええ…初めは9時頃に『出社時間を遅らせてくれない?』って果歩さん…いえ、奥様から電話があったんです」
「ほう…それで?」
「私が『どの程度遅らせればいいんですか?』って聞いたら、『今は何とも言えないから私が電話するまで待機してほしい』って言われて…」
「なるほど…それじゃあ12時にあった電話で休むよう言われたんだね」
「はい…それで『今日の分の給料はこっちの都合で休みにしたので通常勤務と同じにするわ』って言われたので…まあ、良いかなって…」
「…で、私から無言電話がその後あったと…」
「そうです。」
「…………」
木村さんの話を聞いて、私は背筋が凍る思いでした。
もちろん怒りはあります。しかし、それ以上に妻に対して異様な気持ち悪さも感じていました。
長年連れ添った妻が何か別人の様な気さえしています。
私の知っている妻は平気でこんな事のできる女ではありません。
私は、木村さんにもう一つの【確信】めいた質問をしました。
「話は変わるけど、あなたにうちを紹介した友人とは?」
「ああ、沢木さんですか?」
「沢木?」
「はい、私の主人の後輩なんです…あれ?」
「どうしました?」
「社長、沢木さんをご存知ですよね?」
「いや…私の知り合いに【沢木】と言う名の人間はいませんが…」
-ドクン-
「あれ?おかしいな…」
-ドクン ドクドクドクン-
「奥様と沢木さんからは家族ぐるみの付き合いって…」
-ドクンドクンドクンドクン-
「木村さん」
(頭がボーっとする)
「はい?」
(胸が…息苦しい)
「その【沢木】って人の名前…」
(うぁぁ-おかしくなる!)
「【英夫】じゃないか?」
薄々は、気付いていました。
木村さんにうちを紹介したのが第三者と言われた時から…妻が汚いアリバイ工作をしていたと知った時から…判ってたんです…この名前が出るって事は…
「あれ?なーんだ、やっぱりしりあいだったんですね」
無数に散らばっていた点と点が、無情にも…繋がった瞬間でした。
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