川越男 10/3(金) 11:54:49 No.20081003115449 削除
午後8時
「ただいま」
「あ!パパだぁーおかえりなさーい」
「隆…ヨイシッと、どれどれーパパの暴れん坊君は元気かな~」
「あはははは!元気だよー」
息子が嬉しそうな笑顔で玄関まで迎えに来てくれます。その笑顔は最高の薬…治療薬です。
私のドロドロとした感情が、一気に洗われます。(悲しいかな、一時的ですが)息子を抱きかかえていると、その後ろに妻が居ました。
最近は、全く出迎えてもくれなかったのに…何やら言いたげな目で私を見ています。私は、そんな妻を無視して息子を抱っこしたまま横を通り過ぎ居間に入りました。
「隆、お風呂は?」
息子をリビングで下ろし尋ねます。
「んーまだー」
「よーし!じゃあパパと入ろうか?」
「いいよ~」
「じゃあ、パパは着替えてくるから隆は先に入ってな」
「はーい」
風呂場に向かった息子を見て、私も着替えに寝室に向かいました。
スエットに着替えてると、後ろに人の気配がしました。
「ねぇ、あなた…ちょっといい?」
妻から話しかけられましたが、無視して着替え続けます。
「……」
タンスから下着を取り、妻を無視して部屋を出ます。すると、
「ねぇ、聞いてる?話があるの!」
私が無視をしてるのが気に障ったのか、声に苛立ちが見えます。
「…何だよ…」
妻の方を向いて立ち止まります。
「今日の昼の電話だけど…」
「その話なら隆を寝かせた後に聞く…それでいいな…」
「…………」
何か苦々しいものでも見るような目で私を見やる妻をその場に残し、私は風呂場へ向かいました。
「木村さん…頼みがあるんだか…」
「頼み…ですか?…はは…怖いな…」
「今日、私に会った事は…妻には内緒にしてもらいたい」
「…………」
「今日初めて会ったあなたにこんな事頼むのも変だけど…」
「……社長。」
「ん?」
「浮気ですか?」
「ははは…直球だね」
「すみません…でも、どんなに鈍感な人間でも、ここまで聞けば…」
「うん…まあ、まだはっきりとした証拠がないから何とも言えないけど…ね」
「…………」
「だから…調べようと思う…事が事だからね…まあ、こんな事ベラベラ喋ってるけど、あなたが妻にこの事を言わない保証はない。でもね…変な話、今日初めて会ったあなたを信用しようと思ってね…どうだろう?」
「本当、そうですよ、私が言うかもしれませんよ~(笑)」
「ははは…」
「……………」
「…………」
「解りました…私に出来る事なら協力します」
(以上!臨場感たっぷりにお届けしました)
事務所から出たのが13時ちょい過ぎ。
木村さんとお互いの携帯番号を交換して別れました。
「んでねーパパのねー自転車に1人で乗れたんだよ~」
「そうか~じゃあ隆の自転車はパパが乗ろうかな~」
「えーダメだよ~、パパが乗ったら壊れちゃうもん」
息子とバスタブにつかりながら今日一日にあった事を話す。私が一番幸せを感じる一時。最近は特にそう思えます。
(この子にだけは…悲しいかな思いは決してさせたくない!)
私達夫婦の問題で、もしかしたら息子に悲しい思いをさせるかも知れない…
それは何よりも辛い事です。しかし、このままの状態はもっと息子にとって辛いかもしれないのです。
実際、最近の私達を心配そうな顔で見ている事がありました。 子供は子供なりに感じる事があるのです。
その時です、私はある事を思い出しました。
息子は英夫の名前を知っていました。普通、一度会っただけの男の名前を覚えるでしょうか?もしかして、何度か会った事があるんじゃないか?
「なあ、隆…前に英夫おじさんとキャッチボールした事があるって言ってただろう…隆は、英夫おじさんと何回か会った事があるの?」
「あるよ」
「何回くらい?」
「んーとね、遊んだのは2回。でね、見たのは1回だけ」
「見たのは1回?どこで?」
「んーとね、んーとね、、、、秘密」
「秘密?どうして?」
「だってね、ママが『誰にも言っちゃダメ!』って言ったから」
「ママが?パパにも?」
「うん…パパには絶対言っちゃダメだって言ってたもん」
「………隆、ママには内緒にするからパパに教えて」
「でも…パパに言ったら…もう、パパに会えなくなるもん…」
「どうしてさ、パパは隆を置いて居なくなったりしないよ?」
「でも、ママが…」
「ママが?」
「パパに言ったらよその子にするって言ったもん!」
「!!!!!」
(な、何て酷い事を…こんな小さな子に…あいつ…気でも狂ったか!)
沸々と湧き上がる怒り、憎しみを止められません。今すぐにでも行って殴り飛ばしたい気持ちを精一杯我慢し、息子を抱きしめながら、
「大丈夫!誰が隆をよそにやるもんか!心配しなくても良いよ」
「本当?」
「ああ本当!」
「本当に本当に本当?」
「本当に本当にホントーに本当!だから教えてくれる?」
「うん!えーとね…初めて英夫おじちゃんを見たのはねーここ!」
「ここって?お家!」
「うん、僕が学校から帰ってきたらママと英夫おじちゃんがお風呂場にいたの」
やっぱり未完のままなんだ。。残念。
でも、この名作を載せてくれた管理人様の心意気に感謝して毎更新を楽しみにしています!