川越男 10/21(火) 19:38:47 No.20081021193847 削除
「あと1人…って、えっ!?ま、まさか!」
神田は、気の毒そうな目を私に向け、静かに頷きました。
「し、しかし、いくらなんでも飛躍し過ぎじゃないですか?相手は19ですよ!果歩だってそれ位の常識は持ち合わせてるはずです!そうだ…そんな事…そんな恐ろしい事を…する訳が…」
頭の中はぐちゃぐちゃです。いくら何でも現実的ではありません。(いや、そうでもないのか?歳が19と言っても男は男、浮気するのに問題はないのか?いいや違う、問題大ありだ!問題は大いにある…が、本当にそうなのか?証拠は?)
「そうまで言うのなら、私を納得させる証拠があるんですか?」
一縷の望みを託し訪ねました。すると、神田が静かに話し始めました。
「最終日の調査報告です。最終日の金曜、奥様は沢木邸には向かわず、駅前のファミレスに向かいました。時間が10時13分。デ〇-ズに入って10分後、この写真です、男が入店し奥様の席に着きました。直ぐに樋口と私も中に入り、2人の席の隣に着き、会話の録音を始めました」
写真には、帽子を斜めにかぶり、ダボダボのTシャツにダボダボのパンツ姿、耳と口には丸いリングのピアスをした若者が、ニヤニヤしながら席に着く姿が写っていました。目の前の妻とはおおよそ似合わない組み合わせに胸やけがしてきました。
(な、何なんだこのガキは!こんな奴が…こんな奴と…)ムカムカと、胃の中の物が逆流しそうになるのを耐え、神田に訪ねます。
「録音って言いましたよね?聞かせてもらえますか?」
「松田さん、顔色が悪い。今日はここまでにしてまた後日にでも…」
「いいんです!かまいませんから、聞かせて下さい!」
いきなり大声を出し、感情的な私に神田は、止められないと諦めたのでしょう、ポケットから録音機を出しました。
「あなたは依頼主ですから聞きたいと仰れば、私達はそれを止めはしません。しかし、この録音には、あなたが不快に思う様な事が多々あります。それでも宜しいですね?」
私を真っ直ぐに見つめる神田の顔には、【覚悟しなさい】と書いてあるかの様でした。私に迷いはありません。これを聞いた後、私はおかしくなるかも知れません。例え、そうであっても、もう止まる事など出来ないんです。
「覚悟はできてます」
私の言葉を聞いた神田は、静かに頷き、再生ボタンを押しました。
『…があるの』
初めに聞こえたのは妻の声でした。
『ん?何よ話ってさ』
次に聞こえたのは、若い軽薄そうな男の声、それだけで頭の血管が何本か飛びそうでした。
『あのね…今日はあっちゃんに大事な話があるの…』
(あっちゃん?それがこのガキの名前か。にしても30ヅラ下げたいい大人があっちゃんだぁ~舐めやがって!)
『大事な話?何、妊娠でもした?』
(に、妊娠!お、おい、まさか…)
『ち、違うわよ!妊娠なんかする訳ないじゃない!』
『はは、そりゃそうだよな、いくら毎回中に出してるからってピル飲んでんもんね』
『もう、真面目に聞いてよ』
『ははは、悪い悪い、んで何なの?』
短いやり取りですがとんでもない会話です。妻が中出しを許している。ピルを飲んでいる。最悪の事実です。避妊に気をつけているとは言え、ここまでガキの為にしているなんて。
『あのね、あの、ゴメンナサイ!別れよう』
『…またかよ』
『やっぱりね、こんな事しちゃだめだよ…もう…無理』
『ハァ、あんさー前もこの話になって揉めて…結局元に戻ったじゃん。果歩さんさぁ、言ったじゃん。ずっと一緒にいたいって。俺が、来年大学受かったら旦那と別れてくれるって。何、あれは嘘?』
『そ、それは…あの時は私も、その、ボーと…してたから』
『イった後だから、あの話は無効だとでも言うのかよ!ったく、これだから女は嫌なんだよ!アンタもお袋と一緒だな!嘘吐きの淫売だ!』
『ち、違うわ、お母様そんな人じゃないわ。ね、ねえ、あっちゃん?私は何言われても仕方ないけど、お母様の事をそんな風に言わないで…』
『何だ?罪悪感かよ。そりゃあそうだよな。自分のせいで親父達が離婚したんだもんなぁ、そう思っても仕方ないか』
『…………』
『でもさ、何で果歩さんが罪悪感なんか持つ訳?だって、親父とは何もなかったんでしょ?それにさぁ、前にも話したと思うけど、お袋だって影で男と会ってたんだぜ。今じゃあ、その男と大っぴらに会ってやがる…親父は知らないみたいだけどな』
『でも…私が、英夫さんに甘えてたから…会って色々相談に乗って貰ってたから…誤解とは言え、私のせいでお母様には嫌な思いもさせてしまったから…』
『フン、まぁ、そのお陰で果歩さんとこうゆー関係になれたからな…それには感謝してるけどね』
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