川越男 11/15(土) 09:10:23 No.20081115091023 削除
沈黙が完全に真っ暗になった部屋を包みます。
相変わらず妻は俯きその先に進もうとはせず黙りです。
恐らく頭を最大限に稼働させ言い訳を考えているのでしょう。
このままそれを聞き、穴を責めるのも悪くはありませんが私の方が限界でした。この雰囲気にイライラのピークを迎えた私は妻に再度告げます。
「何時まで黙り決め込むつもりだ?いい加減にしないと俺にも考えがあるぞ」
妻は顔を上げ訝しげに私を見ます。
「何もしゃべらない。それは【肯定】と俺は受け取る。果歩、離婚だ。今すぐ荷物をまとめて出て行け」
妻は弾かれたように表情を変えしゃべり出します。
「ちょっ、ちょっと待ってよ!離婚だなんてあんまりだわ!卑怯よ!」
「卑怯?何でだ?お前が認めたんじゃないか」
「何を認めたって言うのよ!私は何も認めてなんかいないわ」
身を乗り出し座卓に手をつき怒りの形相で私に反論します。
「何も語らず説明すらしないお前のその態度が浮気をしていたと認めてるんだよ」
私はことさら呆れた感じで言いました。浮気の事実は報告書を見せれば否が応でも認めざる得ません。しかし、そんな簡単にネタばらしなんて冗談じゃありません。私はもっと意地悪く追いつめたいのです。
「ち、違う!そんな事してない…浮気なんて…してないわ…」
「本当だな?間違いないな?今朝も言ったが嘘はやめとけよ。もしも嘘をついていたら離婚だぞ?」
「……嘘なんかついてないわ……」
一瞬間があり、ビクッとした後俯きながら妻は答えました。
「よし…じゃあ一つ一つ誤解を説いていこうじゃないか。まず何で英夫と隆がキャッチボールなんかするようになったんだ?おっと、黙りはやめとけよ。答えがなければ認めたもんとするからな」
妻は、顔を上げると私の顔を恨めしそうに見た後、逃げ場がないと悟ったのか、ようやく話し始めました。 妻の話を要約するとこうです。
― 英夫と果歩は果歩が高校生の時、果歩の学校に教育実習生として英夫が赴任した時に出会った。その頃の果歩は、母親の事で悩み落ち込んでいた時期で、周りを拒絶し荒れていた。そんな時、英夫だけが親身になり優しくしてくれ相談にも乗っていたそうだ。そんな英夫に果歩は少なからず好感を持ち段々と心を開き次第にそれは恋愛感情になった。だが、教育実習生とはいえ英夫は教師だ。果歩の気持ちを受け入れる事など出来るはずがないと思い、打ち明ける事なく英夫の実習期間は過ぎ英夫は去っていった。それからの数ヶ月、果歩は失恋の苦しみと心の支えを失った悲しみにくれたらしい。それでも月日が果歩を癒してくれたお陰で忘れる事が出来た。たまに思い出してもいい思い出だったと懐かしむ事も出来た。ところが去年の4月、英夫に偶然再会した。ライトをつけっぱなしにしたままスーパーに入った妻は、買い物が終わり戻って来た時にバッテリーがあがってしまった事に気付く。機会音痴の妻は焦ってしまい途方にくれている時、助けてくれたのが英夫だった。英夫は気付いていなかったが、妻はすぐに気付いたらしい。妻は嬉しさからすぐに自分の事を話した。『覚えてますか?』と。すると、英夫の方も覚えていたらしく、更に嬉しくなった妻はその場で携帯番号を交換し、後日ゆっくり話しましょうと言って別れた。それから、英夫と電話をちょくちょくする様になり、愚痴や相談なんかをしていたらしい。その会話の中で、隆が外で遊ばず家でゲームばかりしている事を言うと、昔息子が使っていたグローブがあるからプレゼントすると言ってくれた。果歩は素直に喜びお礼を言った。隆も、果歩と買い物の帰宅途中に偶然?英夫と会った事があるから一言お礼を言わせようと、電話にだしたら次の日にキャッチボールをする約束を隆とした。その約束通り、次の日にグローブを持ってきた英夫と隆はキャッチボールをした―
「…あなたに言えなかったのは…少し度か過ぎたとおもったからです…16年振りに会ってみて、恋愛感情がなくなったとは言っても、あなた以外の男性と連絡をとっていたから…何もないにしろあなたに余計な心配もさせたくなかった…ごめんなさい…私が浅はかでした」
「………………」
私は考えていました。
今私が持ってる証拠は、妻と英夫の息子の不倫関係を示すものです。がしかし、妻の話を聞いていて思ったの事があります
「じゃあ、英夫に恋愛感情は全くなく、浮気はしていないと言う事だな?」
妻は無言で答えます。
(ふーむ… いまいち納得できない…腑に落ちない…何かあるな…)
気になる事は多々ありますが証拠がなければ何とでも言えます。それなら仕方ない。核心部分をつき始めます。
「わかった。じゃあ次だが…」
立ち上がり蛍光灯の紐を引っ張ります
「何で俺に内緒で事務員を雇ってるんだ?」
暗闇から映し出された妻の顔は青ざめていて死人のようでした。
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