川越男 11/21(金) 18:27:46 No.20081121182746 削除
「自分の事は全て犠牲にして働き続けました…もちろん皮肉でも嫌味でもありません」
憑き物が取れたかのように話し続ける妻のその態度に、全てを話し、漸く反省の気持ちが現れたかと思ってました…が、
「木村さんの事は…すみません。昔御世話になった人で無碍に出来なくて…あなたにもちゃんと説明するつもりだったんですけど…きっかけが…」
やはり…やはり妻は反省などしてませんでした。
この期におよんでまだ偽ろうとしたのです。しかも平然と。
(もう駄目だ)と本心でそう思いました。そして、わずかに残っていた愛情が完全に消えました。
「木村さんだけ残して何処にいたんだ?」
「家に帰って掃除したり、街に出て買い物したりしてました」
「…………」
妻の返答は予想がついてました。いえ、知ってました。
私が木村さんと初めて会った翌日、焦った妻は予想通り木村さんに電話をしたそうです。
木村さんには事前に『私と会った事は内緒にしてくれ』と言ってあったのでその通りしてくれました。
ひとまず安心した妻は、漸くこの先こういったケースがあると気付いたのか、『実は主人には内緒で働いてもらってる。それがバレルと私が主人に怒られてしまう』と告白し、木村さんの良心を利用して上記のような事を打ち合わせしたのです。
木村さんと、密に連絡をとっていた私はその事を知ってました。
「英夫さんとの事は…行き過ぎた事をしてしまったと思います。ごめんなさい…」
妻はソファーから降り、カーペットの上で額を擦り付けて土下座しました。普通に見れば究極の謝罪表現も、その意がない事を知れば怒りと共に虚しさすら感じます。
「お前の言いたい事は分かった…果歩、顔を上げてくれ」
ゆっくりと上げたその顔は、反省の色や後悔の念が入り交じった縋るような顔でした。
「木村さんの事は怒ってないよ…」
妻は驚いた顔をしました。
「それに…これからも彼女には事務員として働いてもらおうとおもってる。せっかく優秀な人を君が雇ってくれたんだ、有り難く思ってるよ」
「そ、そんな…あなたにそう言ってもらえて私は…うれしい…」
妻の顔にはそれまでの悲壮感は欠片もなく、身を起こし、安心しきったのか笑顔です。が、私の次の言葉で妻は地獄へ落とされます。
「月水金と言わず毎日来てもらうことになった。だから果歩、お前はクビだ!」
「ど、どう言う事?」
一瞬にしてそれまでの笑顔が驚きと疑心で曇ります。
「どう言う事って…知ってるだろ?うちには事務員をもう1人雇う必要がない事は?」
「それなら普通淳子さんでしょ!」
「いやそれは違うな。優秀な人材を優先して雇うの経営者として当然の事だ…それにお前も忙しいだろ?」
「…ど、どう言う意味よ?」
「木村さんを雇ってまで会いたかったんだろ?【あっちゃん】に」
コメント
コメントの投稿
トラックバック
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)