川越男 2/19(木) 08:51:12 No.20090219085112 削除
「どうぞお座り下さい…」
ほんの数時間前まで繰り広げられた修羅場に、今度は憎き小僧の父親でありまた、疑惑の男でもある男が涙で目を腫らした家内と並んで目の前にいる。
「この度は本当に取り返しのつかない事を息子が…」
そう言って立ち上がり、頭を深々と下げる沢木。
それを見た妻も慌てて続き、並んで頭を下げました。
「…聞いていた通りだな」
「は?」
顔を上げた2人は怪訝な顔で私を見ます。
「いや、聞きしに勝る仲の良さだ。こうやってるとどっちが夫婦が分かったもんじゃないな」
それを聞いた妻は慌てて距離を取りました。そう言う問題ではないのですがあえて追求はしません。
「まあいい…沢木さん、電話でも言った通りあなたからの謝罪なんて要らない。はっきり言って意味がない」
「い、いえ、しかし…」
「取りあえずそこに並んで突っ立てられても気分が悪いんで座って下さい」
沢木は何か言いたそうな顔でしたが促されるまま腰をおろしました。妻は私に言われたのを気にしたのか、沢木の隣ではなく床に正座しました。
「さて…沢木さん。何故私があなたとの話し合いに応じたかわかりますか?」
「話し合い…ですか?」
私の質問に沢木は困惑しています。妻もまた一緒でした。
それは多分、謝りに来た彼らは私に一方的に罵倒されるものと思っていたからでしょう。しかし、明らかに私にはそんな雰囲気がない。それどころか、話し合いをしようと言ってきている…困惑は当然かもしれません。
「そうです。さっきも言いましたがあなたから謝罪を受けた所で何の解決にもなりません。あなたが少しでも私の気を鎮めようとしている謝罪が逆に私の気を逆撫でする事になるのをお忘れなく」
「はい…わかりました」
沢木の同意を得た私は改めて沢木の顔を見ました。
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