川越男 2/19(木) 09:57:02 No.20090219095702 削除
「失礼ですが、沢木さんお年は?」
「42です」
「そうですか…」
それを聞いた私は、テーブルの上に置いたままの興信所の報告書をとり沢木英夫の記述を読み確認します。
(なるほど。確かに42歳だ…となると、あれは果歩のついた嘘って事か…)
「あの…」
「何です?」
「私の年齢が何か?」
いきなり年を聞かれた事を訝しんでいるのでしょうか?それにしても一々うるさい男です。大きな溜め息を吐き出した私は沢木の問いに答えます
「以前…いや、今もそうですが、果歩の浮気相手はあなただと思っていました-」
「あ、あなた、沢木さんは-」
話し始めた矢先、妻が話に割って入ってきました。
私には、それが沢木を庇っている様に見え、一瞬で怒りのメーターが振り切れました。
「お前には聞いてない!黙ってろ!今度俺の話の腰を折ったら問答無用で叩き出す!いいな?」
「…はい…」
私のいきなりの変貌に、妻は怯え俯いてしまいました。それは沢木もそうで、妻から彼に視線を戻した時、明らかにさっきまでにはなかった緊張感が彼の顔には浮かんでいました。
「…話を戻します。どこまで話したか…そうそう、あなたが浮気相手だと思ってたんです。私の知らない所で子供にまで会っている」
「…………」
「あなたならどうです?疑いませんか?だから聞いたんです。最近頻繁に聞く【ヒデオ】は何者か?ってね」
「…………」
反論したいが私の話の腰を折るまいと躊躇しオロオロしている妻とは対照的に、沢木は顔色一つ変えません。
(何だ?反応がないな)
沢木の反応のなさに不満を感じつつ話を続けます。
「その時言ったんですよ、『英夫さんは高校の時の先輩です』ってね」
その時、話の最中全く反応がなかった沢木に初めて変化が見えました。
驚いた顔をして果歩の方に振り向きます。
「果歩ちゃん、先輩なんて嘘を何で…」
驚いた顔と言うより悲しい顔で果歩を見る沢木。明らかに狼狽しシドロモドロの果歩。その2人を困惑顔で私は見ていました。
(何で沢木はあんな顔するんだ?果歩の嘘がそんなに気になる事なのか?それに、果歩のあの慌て振り…)
何かあると睨んだ私は妻に、
「そうだ、何で先輩なんて嘘をついたんだ?さっきはハッキリ『学生時代の先生』って言ってたのに…俺には嘘をついた意味が分からない」
すると妻は、私と沢木を交互に見た後、逃げられないと分かったのか、俯きながら話し始めました。
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