「会った事がないって…ちょ、ちょっと沢木さん!一体どう言う事ですか!」
沢木が来てから努めて冷静に振る舞っていました。
それは少しでも果歩の夫としての…いえ、男としての余裕をこの男にだけは見せ付けておきたいと言うちっぽけなプライドがそうせていました。
しかしメッキは剥がれる物なのでしょう。無様にも取り乱し、沢木の言葉にそんな事を忘れてしまいました。
「つ、妻は、あなたと隆がキャッチボールしたり電話で話したりした事があると言ってたんですよ!」
「……………」
私の質問に、沢木はただ黙って聞き役に徹し一言も喋りません。
(何でそこで黙りこくってるんだ?こんな肝心な所で…クソっ!)
私の苛立ちはピークを迎え、落ち着きがなくなった足は小刻みに貧乏揺すりを始めます。
少し落ち着こうと上着の胸ポケットから煙草を取り出し火をつけゆっくり吸い始めました。
「どうやら…」
沢木に背を向け、苛つきながら煙草を吸い始めた私の背後から唐突に沢木の声が聞こえ、瞬間的に沢木に向き直りました。
そして、その話を聞いた私は凍りつきました。
「どうやら…奥さんには別の【ヒデオ】が居るみたいですね。」
コメント
是非最後まで書かれている話を載せてもらいたいです。
このサイトのファンとしては!
コメントの投稿
トラックバック
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)