非名士 8/10(木) 22:30:44 No.20060810223044
「あしたっから、クラブの合宿があるんだよ!」
「おいおい、ほどほどにしてちゃんと勉強もしろよ!」
「わかってるって!」
「健ちゃんは、昔っから頭が良かったもんねえ・・・」
自慢の息子に目を細める妻の多恵子・・・
いえ、もう、妻ではありませんでした。
斉藤多恵子さんは、愛おしそうに、好物のオムライスにかぶりつく、寮生活から夏休みに帰省した私の子供をみつめます。見つめる目がまぶしそうです。
いい歳をして中年男との愛欲に溺れきるあまり、私との離婚まで決心した淫蕩な熟女には、太陽の光を一杯に浴びて日焼けした健康な我が子が眩し過ぎて見えるのかもしれません。
いえ、私も、この場は、全力で斉藤多恵子さんに、話しを合わせねばなりません。
「・・・で、そろそろ志望校も考えるんだろ?」
「・・・ううん・・・一応理系だけど・・・」
「工学部?・・・」
「医学部とか?・・・」
夫婦で、あわせる様に、同時に声をそろえます。
お互いに、あまりにも声が嬉しそうなことに気がついていました。
「・・・ん・・・」
健一郎はちょっと言いにくそうです。
「・・・ま、少し成績が上がったらね?・・・」
「・・・医学部か?」
愛しい愛しい私の息子は、少し頬を赤らめました。自信のないときの健の癖です。
「・・・ま、国立なら、そう学費もかからないし・・・」
「・・・」
私の最愛の長男が、初々しく目を伏せました。
医学関係には縁のない私も、医学部受験の難しさくらいは知っています。
そして、私立医学部の学費の高さも・・・
目を伏せた健一郎に、私は、自分の子供の気遣いに気がつきました。
今通学している進学校を受験する際に、親の年収を書かされたのを思い出します
私の可愛い息子は、親の甲斐性を、よく知っているのです。
莫大な私立の医学部には到底届かない年収を。
はにかむ様な笑顔を浮かべる健一郎を見れば、
もしかすると国立の医学部へは成績が届いていないのかもしれません。
・・・国立なら・・・と、言う言葉に、
親としての情けなさを感じ、目頭が熱くなりました。
「・・・健ちゃん・・・大丈夫よ・・いざと言う時は、ママの親戚とかも頼ってみるから・・・」
優しく語り掛ける斉藤多恵子・・・
多恵子をよがらせるチンポコのついた親戚を(夫として)頼る、元、私の妻・・・
私たち夫婦の実家は、平凡なサラリーマンに過ぎないことも知っている健一郎は、怪訝な表情を浮かべました。
私は、あまりの情けなさに落涙しそうでした。
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