BJ 8/14(火) 19:34:46 No.20070814193446 削除
玩弄―――
としかいいようのない動きで、赤嶺の手指は柔弱な妻のおんなを責めつづけます。
その手指は妻の秘奥から溶け出した流露で、ぬれぬれと光っていました。
鼻頭をうっすらと染めた顔を小刻みに振りながら、妻は身悶えを繰り返しています。
薄布で隠された瞳は、今、その瞼に何を見ているのか。
いつだって私の真実を揺さぶらずにおかなかったあの澄んだ瞳は―――
赤嶺の膝に乗せ上げられた妻の裸身が、ひどく覚束ない動きでうわずり始めました。
「うっ、うっ・・・・・」
断続的に洩れ聞こえる苦しげな微吟が、次第に大きく熱っぽくなっていくのが分かります。赤嶺の手指が蛇の舌のような陰湿さで妻の秘口を撫でまわす度に、細い腰がびくりと跳ね、形の良い椀型の乳房が重たげに揺れました。
肉芽を弄んでいた赤嶺の掌がその乳房をわしづかみました。
「熱いな。乳房がかたく張っている。動悸もすごく早い」
黒髪の流れ落ちた妻の耳朶に囁きかける赤嶺。その手に囚われた胸乳は、ぶあつい掌でつよく握られた白餅のように、歪み、たわめられていました。
乳房を覆う手の人差し指が伸びて、もう一方の隆起の頂点に触れました。
「ん――――っ」
「乳首もこりこりの勃ちんぼ状態だ」
赤嶺は唇の端を下品に歪めながら、世にも娯しそうな声で囁きました。
「いやらしい―――躯だ」
「ううっ」
啜り上げるような短い泣き声をあげて、妻の顔が天井を向きました。露わになった白い喉首が、何かを飲み込んだときのようにくっと動くのが見えました。
「今さら羞ずかしがらなくても良い。瑞希の躯がそれだけ女として優秀だというだけだ」
あからさまにからかう口調で言って、赤嶺は掴んだ乳房をゆるりと揉み上げました。
「感じやすい―――いい躯だ」
今度は私の目を見ながら―――
赤嶺は言いました。
私に答える言葉などないと知りながら、この男は。
この男は。
赤嶺の太い腕に抱きしめられた妻の白裸は、薄闇に溶け出してしまいそうなほど、輪郭がぼんやりと霞んでいて―――
ひどく、不安定で―――
見ているこちらの心まで、頼りなく不安にさせるほどに。
―――いや、本当に私を不安にさせるのは、その白皙の裸身を我が物のように抱いている男の目です。
不敵で、自信に満ちていて、それでいて底の見えない、
闇のような目―――
「もう―――許して」
不意に空気を切り裂くような哀訴の声がしました。
「これ以上はもう―――もう」
うわごとのように、悲鳴のように、妻は叫びながら、激しく頸を振りたくりました。ほつれた黒髪がばらばらと乱れ、なびく様が、凄艶な舞いのように見えました。
「お願いします―――お願いです」
普段の落ち着いた口調からは想像もつかないような切迫した響きで、妻は、お願い、お願い、と繰り返します。その様はあまりにも哀婉で、悲痛で、見つめる私のほうも絶叫したくなるほどで―――
けれども、私はかすれ声ひとつあげることが出来なくて。
「―――近いんだね?」
代わりに妻の朱に染まった耳朶に囁いたのは、赤嶺でした。
妻は答えませんでした。答える代わりに、哀訴の声を繰り返すだけでした。
「我慢しなくてもいい。思い切りいけばいい。思い切り声をあげて、悦びに身を委ねればいい。大丈夫、瑞希の羞ずかしい姿を見てを笑うものはいないよ。ここには二人だけだ」
軽やかに歌うように言った後で、赤嶺はにやっと笑い、口に出したばかりの自らの言葉と矛盾するようなことを平然と続けました。
「そのほうが―――壁もよろこぶ」
いましめられた両手を揺さぶって暴れていた妻の肢体の動きが、止まりました。
「瑞希はそのために来たのだろ?」
先程まで徹底的に私を無視しながら、都合のいいときにだけ、私の存在を妻を縛るダシに使う赤嶺に、そのとき、私は燃えるような憎悪を感じました。
赤嶺の言葉は、両手のいましめよりも、目隠しよりも、妻の力を削ぎ、殺してしまいました。放心したように妻の総身からがっくりと力が抜けるのを見て、私はやりきれなさでほとんど涙ぐみそうになりました。
聞かなくていい。そんな男の言葉など。
考えなくていい。私のことなど。
痛切にそう思う気持ちは真実なのに、彼女を今の運命に追い落としたのは、他の誰でもなく、この私自身であるわけで―――
何だかひどく悲しくなりました。
言葉で妻にもう一重の呪縛をかける前も後も、赤嶺の手指だけは妻の縛られた裸身を弄るのをやめませんでした。秘園も、そこに咲く花びらも、白く盛り上がった乳房も、ぴんと張りつめた乳首も、敏感な腋下も、太腿の付け根のくすぐったい部分も―――赤嶺は妻の躯のすべてを知悉しているような迷いのない手つきで、妻の奥深くに秘められたものを煽りたて、炙り出していきます。
「あっ、あっ、あっ・・・・・」
火を点けられた妻の口から洩れる声の調子が高くなりました。色づいた胸が波立ち、苦しげに喘いでいるのが見えます。
「我慢するな。そうすれば苦しいだけだ。抑えないで声をあげろ。壁を愉しませてやれ」
冷酷な声で、赤嶺は命じます。
妻の背筋が反りかえり、鼻腔から抜けるような吟声に啜り泣きの調子が混じりました。
紅潮した頬、額には玉の汗が浮かんでいます。
妻が身を震わせた瞬間に、その汗がぽつり、と落ちる様が、スローモーションのように私の目に映り―――
ああ――――
私は胸の内で、長く引きずるような叫びをあげました。
ワルツを奏でるように赤嶺の手指が白と紅の鍵盤を弾きます。
妻の背がぐっと伸び上がるのが見えます。
その顔が哀しいほど、きつく歪みました。
「―――――――っ」
妻の喉首が引き攣れるように動き、
ぱあっ、とその肢体に微光がかがやきました。
高みに達した妻の肢体が軟体動物のようにぐにゃりと折れ、崩れ落ちるように天上から地上へ―――赤嶺の身体の上へ墜落しました。
ひゅう、ひゅう、と。
妻の喉から、苦しそうな吐息が洩れています。
そんな妻の様子を赤嶺は冷然と眺めていましたが、不意にその手が子供を撫でるように、もたれかかる妻の頭にそっと触れました。
「堪えたね。声を抑えるなと言ったのに。馬鹿だな」
不思議なほど優しい口調で呟いた後、しかしその口調と相反するようなことを赤嶺は言いました。
「―――お仕置きが必要だな」
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