BJ 8/17(金) 13:27:11 No.20070817132711 削除
夏目漱石に『門』という小説があります。
重い過去に結び付けられ、閉じられた生活を送る夫婦を描いたあの作品を、私は共感と悲哀の念をこめて思い返します。
閉じられた生活―――それはこの一年間の私たちの生活でもあったのです。
そんな生活に粛々といそしんでいるような妻を、時にもどかしく思ったことも事実でした。
もっと自由に、広い世界で生きてくれてもいいのに。
そう思う私こそ、息苦しくなっていたのかもしれません。
この世に二人きりのような、濃密な妻との暮らしに。
そんな私たちの生活には、いつだって陰がありました。
それは忍び、這いよってくるような一年前の記憶。
妻はその記憶を恐れ、私も恐れ―――
しかし、その一方で私は焦がれてもいたのでしょう。
あの灼けつくような瞬間に。
「くぅ・・・・うぁ・・・っ」
赤嶺の舌が秘口に入り込み、花びらの奥の膣襞までも舐めあげる度に、妻は身をよじり、熱い息を噴きこぼします。茹だったような火照りに汗ばんだ肌が光り、蹂躙の度に足指の先がくいくいと折り曲げられます。
妻は長方形の卓の上に寝かされていました。両手両足をそれぞれ卓の手足に結わえ付けられ、身動きすることすら容易にならない格好で妻は固定され、赤嶺の舌の玩弄に晒されていました。
赤嶺はそんなふうに妻を卓上に縛り付けた後で、まずは冷蔵庫から冷えた日本酒を取り出し、無残な妻の寝姿を眺めやりながら、一杯やりはじめたのです。
その姿は征服した領土を宮城から見下ろす支配者の姿に似ていました。
支配―――
「さっきから暴れどおしで瑞希も疲れただろう」
ふんわりと笑いながら赤嶺は言って、指で妻の繊毛をかき分け、くつろげました。目隠しの上の眉間に皺が寄り、乳房が波立つのが見えました。
「これで舌を潤すといい」
そう言って―――
赤嶺は妻の下の口につっと冷酒を注ぎました。
「ひっ!」と悲鳴を上げて、妻は腰を引こうとしました。もちろんその動きは成功しませんでした。
杯にされた妻の女園を、透明な酒が満たしてゆきました。
かつて織田信長が、討ち取った敵将の頭蓋を杯にしたというその行為よりも、妻にとって、そして私にとって、赤嶺の行為は蹂躙と呼ぶにふさわしいものでした。
そして今、赤嶺の赤黒い舌は酒盃を綺麗に舐めとっています。美麗な縁取りも、なめらかな杯の底も、何もかもを。
しかし、赤嶺はいつまでも酒盃を干すことは出来ません。杯の底には新たな潤いが後から後から生まれ、赤嶺の舌を愉しませることをやめないのです。
ぴちゃぴちゃ、と―――
赤黒い舌が、そして妻の秘部が、卑猥な音を辺りに響かせていました。
これが私の希んだことか。
これが私の渇望した情景なのか。
濁り、灼熱した頭蓋の奥で、ただひとつたしかな事実は、私が妻との静かな生活の中に、赤嶺という名の男を呼び込んでしまったことだけでした。
自ら、門を開いて―――
しかし、その赤嶺という男は、到底私の手の範疇に留まるような男ではありませんでした。
この世が支配するものとされるもので分けられるとすれば、赤嶺は確実に前者なのです。
その支配者―――赤嶺がようやく妻の紐を解きました。
先だってからの連続的な刺激と、膣の奥から吸収されたアルコールで妻の肌はいよいよ紅潮しています。
危ういくらいに。
紐を解かれた後も、妻は卓から身を起こすことも出来ないほどに消耗していました。ぐったりと横たわったまま、開かされた足も閉じることの出来ないほど。
開いたままの妻の陰部から雫がねっとりと垂れ落ち、卓の上を濡らしていました。
先ほどまで紅い花のように思えたその部分は、拷問めいた長い愛撫に充血し、腫れぼったくなっています。
散花―――
そんな言葉を、私は思い出しました。
「仕置きは終わりだ。辛かっただろう。でも、もうこれで素直になれるんじゃないか」
赤嶺は猫なで声で言いますが、妻は放心したように横たわったまま、ぴくりとも反応しませんでした。
「腰が抜けてしまったようだな」
苦笑しながら赤嶺は言い、すっと妻の腕を掴んで、畳の上に引き下ろしました。
ずるり、と音を立てるように、妻の肢体が畳の上に崩れ落ちました。
赤嶺はそんな妻を四つん這いの格好に這わせました。
目隠しされた妻の顔は、私の正面を向いています。
一年前と同じように。
もはや意識が曖昧模糊としている妻に、そのことを思い出す余裕はなかったに違いありません。しかし、私は赤嶺の意図を感じました。
ぞわりとするような冷気が総身を走りぬけ、汗が滴りました。
「いい格好だ」
妻ではなく、私を見ながら―――赤嶺は言い、妻の双臀のあわいから秘園をぽんと叩きました。
「あうっ!」
限界に近づいて意識を喪失してしまったような妻が、高く悲鳴を上げて、色白の臀部を震わせました。その躯の反応は「仕置き」を受ける前よりもずっと鋭敏で、峻烈で・・・、意識を失ってゆくのとは逆に、躯のほうはいよいよ研ぎ澄まされ、牝に近づいていくようで―――
ぞっ、としました。
赤嶺は自身の浴衣の帯を解き始めました。
ぱさり、と帯紐が、続いて浴衣が落ちて、頑強な赤嶺の裸体が現れます。
赤嶺のものは天を突くがごとく、高くそびえたっていました。
妻の躯に、
私の心に、
愉悦を、
引導を、
破壊を、
混沌をもたらす肉の凶器。
私の意識は混線したラジオのように乱れ、ざぁざぁと不穏な音を立てていました。
過去が、未来が、幻影のように切れ切れに私の現在に入り込み、そのすべては赤嶺の切っ先の先端に集中していくようでした。
どす黒いその部分に。
「今度は抑えるなよ」
赤嶺の囁きが聞こえます。
「思うがままに愉しめ」
思うがままに―――
それは―――お前の―――
赤嶺が腰を落として、妻に近づきます。
くぐもった声が、妻の喉から漏れました。
おそらくは意味のない言葉、だったのでしょう。
日常を守ろうとしたもの。
日常を壊そうとするもの。
私に関わる二つの存在が、今、眼前で、一つに繋がろうとしていました。
ひゅう、ひゅう、と。
私の喉から、先程の妻のような息がかすれ響いています。
赤嶺の手が、妻の細腰に伸びました。
そんな私から見て主人公のように妻を人に寝取らせない、
自分の妻をそんな対象にされたら、必ず公開させてやります。
また、逆の立場で友人の妻などに絶対そんな気は起きない。
こんな類いの文章は私など平凡人に『読後感』が非常に悪いです。