道明 11/18(火) 19:02:43 No.20081118190243 削除
赤倉へ向かう寝台特急の窓からの眺めは、遠くの山肌の雪が次第に深くなり、田畑にも雪が降り注ぐ、そして、車窓の外一面が真っ白になっていった
妻の知子は、友人夫婦とワインを飲みながら談笑していた
私は一人、缶ビールを開けたまま窓の外を眺めてる
「山本先生の学校は、今年も交通安全コンテストで優勝して、全国大会へ出場するんでしょう?」
「そうなのよ。ことしも6年生の優秀な生徒を選抜して、熱心にこればかりやっている変人先生がいるからだけど。良いのか悪いのか、ほかの先生もよくやるよって感じでね」
私は山本一郎、妻の名は知子
妻と談笑しているのは、妻の勤めている学校から昨春異動した阿部幸子、夫も教師で真一という
阿部夫婦は職場結婚、妻同士が同期の同僚だったことから、毎年1度、家族旅行をしていた
今回は双方の子ども達が「スキーをしたい」というので信州への夜行列車で、北陸回りの赤倉への旅行である
「あなた、前の学校での職員旅行でね・・山本先生はお酒が強いし、凄いんだからびっくりしちゃた・・・私なんかとてもとてもあんなふうには・・」
「ええ?山本先生はやさしくて、可愛い先生だと教師仲間でも評判なんだよ・・何が一体凄いんだ?」
私が談笑する3人に振り向くと、幸子さんの目と会い彼女は話題を変えた
真一は体育系大学を卒業して小学校教諭になって、絵に描いたような良き夫、良き父で、いつもの人柄のよさそうな屈託の無い笑顔でいた
妻はというと、笑顔で聞き流すといった感じであった
私は何時も、この学校関係の話題には着いていけない・・・
「眠たくなったので、ちょっと先に寝台に戻ります・・後は宜しく」
私は、3人から離れて先に寝台へ戻った
(幸子さん・・おかしな事を言っていたなぁ)
妻は、炊事、洗濯など家事一切と子育てをしながら教師を続けている
学期末になると成績をつけることで多忙になり、新婚当時から夜の営みは少なく、私が求めても中々応じてくれなくて、よく不貞寝をしたのを覚えている
お酒を飲むことも稀で、私と酌み交わした記憶も無い
それが「凄いんだから」とは・・・・
その時は、職員旅行で羽目を外した程度に思っていた
コメント
コメントの投稿
トラックバック
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)