道明 12/2(火) 19:24:28 No.20081202192428 削除
一郎は、席に着くと赤鉛筆を片手に書類にチェックを入れていく・・・
美恵子は毎日必ずその姿を見届けると、一礼をして部屋を出て行く
一郎の精力的な仕事振りのエネルギー源は、間違いなく美恵子の存在だ
彼女にとっても一郎は・・・妻帯者となった今でも特別な存在であった
この会社に就職して1年が過ぎ、それでも業務に馴染めず落ち込んでいた頃
新入社員として配属されてきた男、高学歴それも一流の大学卒、スポーツマンで美男子
社内の女性社員が憧れる存在・・・・・そんな彼が彼女の家に電話をかけてきた
「藤、藤崎さんのお宅でしょうか?」
「はい、藤崎ですが・・・・」
「・・私、山、山本ですが・・・美恵子さん?」
「ええ・・・」
「今どうしてる?・・・もし良かったらドライブにでもいかない?」
「うーん・・」
「行こうよ、ドライブに・・・美恵ちゃん」
「・・・・・ええ・・じぁ」
この一郎との最初のデートを美恵子は今でも覚えている
季節は秋
紅葉が映える坂道を二人で歩いた
一郎は職場の上司のこと、同僚のこと、そして今取り組んでいる仕事のこと
意気揚々と語った・・・
情熱があり誠実で一直線・・・・そして女性には少し鈍感なところ
その背をみながら、美恵子は離れずに歩いた
時々、一郎が振り向き優しい眼差しで語りかける
・・・そして、美恵子が頷き微笑みを返す
一郎が言った
「これからも、美恵ちゃんを誘ってもいいかなぁ?」
「・・・・・うーん、私には・・・」
「えっ!もう?・・・・・そうなんだ・・」
この時、一郎22歳、美恵子19歳
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