道明 12/22(月) 19:29:41 No.20081222192941 削除
9月になり、学校は第2学期が始まる
一郎は東京に行ったきり、一度も大阪には帰ってこない
・・それどころか、電話もあまりかけてこなくなった
知子は、さすがに夫の一郎のことが気になり始めていた
「あなた・・仕事は、上手く行ってるの?」
「ああ・・なんとか漸くゴールが見えてきたよ・・それにしても、知子が電話してくるなんて珍しいじゃないか」
「ええ・・私、まだ一度もあなたのところに行ってないでしょう・・・だから、次の土・日にそちらに行ってみようかと思って・・」
「・・・・次のって・明日じゃないか?」
「ええ、そうよ・・・明日、なにか不都合でもあるの?」
「いや・・突然で驚いただけだ・・じゃ、待ってるよ」
一郎が電話を切った・・・
夫の話す口調がどうも何時もと違う
それに、夫は自分から先に電話を置くことはしない
なにか・・・・
知子は一郎の微妙な変化を敏感に感じ取っていた
知子は時計を見る・・・まだ、東京行きの最終には十分間に合う
その頃、一郎は美恵子と夕食を共にしている
週末の金曜の夜には、美恵子が一郎の元に訪れる
そして、身のまわりの事はもちろんのこと、一郎の愚痴の聞き役にもなってくれる
美恵子が話す言葉・・・声、そして仕草が、困難な事業に正面から取り組む一郎の疲れた心を癒し、新たなエネルギーを生み出していた
「室長・・・奥様からの電話ですか?」
「ああ・・知子が明日、ここに来るらしい」
「それじゃ・・・私・・・」
「かまわないよ、美恵ちゃん・・・明日、知子が来たら紹介するよ。私がこんなに頑張れるのは君のお陰なんだから・・・」
一郎がそっと美恵子の肩を抱くと、美恵子優しい笑顔を見せる
「でも・・・・・・」
(この人は、人を疑がうことをしない・・・でも、ほかの人はそうではない)
その日の午後11時
知子が一郎の玄関のチャイムを鳴らす
「どなた?」
一郎の声だ
「あなた・・・私、明日が待てずに今日来ちゃった」
「知子!!」
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