道明 1/17(土) 20:29:51 No.20090117202951 削除
家庭裁判所での調停の日の前日
藤崎美恵子が一郎の自宅を初めて訪れていた
一郎からこの間の経緯は聞いているものの、判断と行動が迅速で直線的、そして徹底し過ぎているように思えた
美恵子には、それが自分に対する一郎の愛情の深さであり、嬉しくはあったが短兵急な行動には不安が付き纏っていた
「一郎さん・・・いよいよ、明日ですね・・後悔されていませんか?」
「後悔なんてしていないよ、美恵ちゃん・・これでいいんだ
・・私は君と人生をやり直すと決めたんだ、そう決めた限りは必ず知子と離婚をする」
一郎は美恵子を抱き寄せる
「でも・・知子さん、これから・・・」
「大丈夫だよ、知子は・・・彼女には教師としての職がある、生活には困らない・・ただ、あの蓬莱と寄りを戻すようだとまともな人生は送れないかもしれない・・そうならないように知子にはすべきことはしたつもりだ」
「そうならないように、すべきことを・・?」
「うん、知子の肢体から蓬莱という男を追い出したと思ってもらえれば・・・・」
「肢体から男を追い出す?」
「うーん・・・それは、余り聞いて欲しくない・・私としてもやり過ぎたと反省しているんだ」
「そうですか・・それと、あなたのお二人のお嬢さん・・・さぞ心配なさっていらっしゃるのではないですか?」
「それなんだ・・・幼い子ども達には可哀そうなことになってしまって、母親の知子と離れるのは寂しいだろうとは思うんだけど・・・親権は私が持ちたいんだ」
「一郎さんは、お嬢さんたちを知子さんに渡したくないんですね?」
「ああ、あの知子に子どもたちを育てられると思うと、我慢がならない・・・それに、子どもを渡すとなると、知子から何かと条件が出てきそうで」
「一郎さんはそこまで考えられているんですね」
「美恵ちゃんはどう思う?・・子どもたちは知子に渡して、君との新しい家庭を築くことも考えられるんだけど・・・」
「いいえ、お子さんたちは私たちで・・・ね、そうしましょう・・・一郎さんと一緒に、私も頑張ります・・いくら時間が掛かっても良き母になれるように努力します、そして良き妻にも」
「美恵ちゃん、本当にいいんだね、それで・・・・・・本当に有難う、美恵ちゃん」
再び一郎は美恵子を抱き寄せると、美恵子は一郎の胸に頬を寄せた
美恵子の香りが一郎の鼻を擽る
二人はベランダに出ると肩を寄せ合い遠くの夕日を眺めていた
辺りは太陽が沈み、夜の暗闇が訪れるまでのマジックアワー
自然に、一郎の手が美恵子の肩を抱き、髪を優しく撫でた
そして一郎の唇が美恵子の唇に重ねられていった
その様子が、写真に収められていく
(一郎さんよ、あんたも相当な男だなぁ・・・知子を追い出し、早速、知子に劣らぬ美形の女を家に入れる・・・罰が当たるぞ、調子に乗りすぎると)
へらへらと笑う蓬莱の顔がそこにあった
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