道明 1/21(水) 19:27:37 No.20090121192737 削除
知子は一郎より先に調停委員との面談を終え
家庭裁判所の玄関ロビーで一郎が出てくるのを待っていた
肩を落とし、伏し目がちに・・愛しい夫、一郎が階段を下りてくる
「あなた・・」
「・・・・・」
「一郎さん・・・少しお話ししたいのですが・・・」
一郎は厳しい目線で、知子を見ると
「調停中だ、君と直接話し合うことは余計な混乱を招く・・・じゃ」
「あなた・・いまでも、私を信じてもらえないのですか?」
「あたりまえだ・・・・もう、後戻りはできないんだ」
「後戻り?」
「ああ、そうだ・・・私は美恵子と約束している・・新しい家庭を築くと」
「そんな!あなた・・子どもたちの幸せも考えてあげて、ね・・私は、もう、一郎さん無しでは生きていけない・・精一杯あなたに尽くしていきます・・・ね、あなた・・考え直して・・ねぇ」
「やめろ・・もう決めたことだ」
「そんなこと・・・・一郎さん、私は絶対に諦めません・・・きっと、あなたの心を取り戻して見せる・・美恵子なんかにあなたを渡すもんですか」
足早にその場を立ち去る一郎の背に、知子の最後の言葉が重く圧し掛かった
その日の午後
知子は蓬莱の自宅を訪れていた
ジーンズにセーター姿
知子は蓬莱の申し出を受け入れたのだった
蓬莱の申し出は
自分はお金に困っているので
一郎が見たビデオや写真など全てを買い取って欲しい
そうすれば、今後一切、知子には関わりあわないと
しかし、あの蓬莱のこと、蓬莱の自宅で会うことはためらわれたが
自分のアノ写真やビデオが存在していたのでは何時か災いになる
廃棄できるのであれば、そうしようと
自分がしっかりしていれば、二度と蓬莱とは同じ過ちはしない
今の知子には、男は愛しい夫、一郎しか考えられなくなっていたのだ
それほど、一郎による復讐に近い夫婦の営みの影響が、知子の肢体に染み付いていた
「約束のお金は持って来ました、これで私に関するものは全てですね」
「ああ・・あんたが映っているものはネガ、マスターを含めて全部だ、安心しろ」
「私が映っているもの?」
蓬莱はニヤリと笑う
「それよりどうなんだい?旦那と別れて肢体が疼いて辛抱できないんじゃ・・」
「いいえ、私はそんな女じゃありません」
「よく言うよ、あんなにヨガリまくった女が・・・旦那の代わりに、欲求不満の解消に相手してやってもいいんだぜ」
「何て事を!・・私は今でも一郎の妻です・・誰があなたなんかと・・じゃ、帰ります」
席を退ちかけた知子に見えるように、蓬莱は数枚の写真を机に並べた
「ほう・・そうかい、たいした自信だなぁ
・・でも、旦那は新しい女とよろしくやってるぞ」
「・・・・・・」
その写真を見た知子の表情が険しくなった
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