道明 2/14(土) 01:26:42 No.20090214012642 削除
その日の午後、美恵子は憂鬱な気分が抑えられない
夫の一郎と、元妻の知子が娘二人の参観に同席している
それも、あの様子では
二人は連絡を取り合って待ち合わせをしているのではと考えてしまう
美恵子は無性に夫の声を聞きたくなった
「電算室長の山本をお願いします」
「申し訳ございません
本日、山本はお休みを頂いております。ご伝言でよろしければ
お聞きいたしますが・・」
「そうですか・・お休みですか?・・それではまた改めます」
(そんなこと・・・一郎さん、あなた)
美恵子に、孤独感が漂う
愛しい男と結ばれた美恵子
これから、幸せな家庭を二人で築いていくはず
それが・・・・・
涙が出そうになる目頭を押さえ、美恵子は夕食の食材を買いに出かけた
家の直ぐ近くのスーパーマーケットまで
歩いていく美恵子の後姿を、車に中から蓬莱が見つめている
(美恵子さんよ・・・なにやら、寂しそうだなぁ
そらそうだ・・・知子と旦那のこと心配だよなぁ)
蓬莱がスーパー駐車場で美恵子が出てくるのを待ち伏せしている
「これは奥さん!またお会いしましたね」
「えっ?」
美恵子が食材の入った重そうな袋を片手に持ち、声のする方を見た
「あっ・・あなたは」
「はい、蓬莱です
私は一人身なので、今夜の食べ物を買って帰ろうとここへ寄ったのですが
ほんとうに奇遇です・・お住まいはお近くなんですか?」
「ええ・・まあ」
「これも何かの縁・・じゃ先にお送りしましょう」
蓬莱はそう言うと、強引に美恵子の買い物袋を手に持ち
車の後ろ座席に入れてしまう
「いえ、蓬莱さん・・・結構です」
「まあ、まあ・・そんなに遠慮なさらずに」
蓬莱はどうぞとばかりに、助手席のドアを開ける
美恵子はこの駐車場でこの男と長く会話するのは、近所の人の目もあり避けたかった
それで、しかたなく助手席に座ったのだった
助手席のドアを閉めた蓬莱の口元が下品に崩れている
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