和田 11/28(火) 09:44:39 No.20061128094439 削除
「・・・・・・・」
「どうしたの?」
急に俯き、喋らなくなった静香にそう尋ねてみる。
「・・・・うん。再婚した相手・・・杉本さんて言うんだけどね、なんか最近・・・・」
そこでまた言葉に詰まる静香。
「何?まさか、暴力を振るんじゃぁ・・・・」
「違う!!お義父さんはそんな人じゃない!!」
あまりの静香の激しい否定に完全に固まってしまった私。
「あっ、ああ、ごめん・・・・」
「えっ、やだ私、ごめんなさい!!怒ってる訳じゃないの。お義父さんはすごく優しいから・・・・・」
とりあえずは安心した。もし静香に手上げたりする父親ならぶん殴ってやろうとさえ思ったからだ。しかし、彼女の口振りではそんな様子は一切ない。
だが、静香のあんな顔を見たのは初めてだ。あれほどまでに、彼女の感情をむき出しにさせる義父に嫉妬すら感じた。
「お義父さんが優しいなら、家庭円満で言うこと無しじゃないの」
「うん、そうだけど・・・・お母さんがね、最近変なの」
「変?」
「うん。最近、お酒を多く飲むようになって家に帰って来るのも、最近は夜中だし・・・元々余りお酒の強い人じゃなかったから心配でお母さんに言ったの、最近おかしいよ!って。そしたら・・・」
静香はいつの間にか、ひときわ目立つ大きな瞳にいっぱい涙を溜めて、ゆっくりと悲しそうに震えた声で言った。
「泥棒猫って・・・」
僕はその言葉に、大きなショックを受けた。他人の僕でさえこれほどの衝撃だ、本人は・・・静香の受けた衝撃は計り知れないほどだろう。
「それ以来、お母さんは話しかけても目も合わさないし、それどころか気が付くと、すごい目で睨んでるの・・・・あの目は・・・私を憎んでる目だわ・・・」
静香の話を、半ば呆然と聞いていた私には、彼女の母親の変わり様に釈然としない物を感じていた。夫を亡くし、ただ一人のわが娘の幸せの為だけにこの身を捧げて来た彼女が、どうして愛娘を憎む事ができる?あまつさえ”泥棒猫”などとなじる事ができよう筈がない。だが、静香の話が、到底嘘とも思えないし・・・・
「お母さんがおかしくなったのって、何時頃から?」
何か原因が見つかるかもしれないと思い、すすり泣く静香に尋ねる。
「無理にじゃなくていいんだ、ゆっくり考えて・・・・」
それを聞いた静香は、徐々に落ち着きを取り戻し、少しの間考えた後、何かを思い出したかのように口を開いた。
「そういえば・・・夏休みに、お義父さんと2人で実家から帰ってからだわ」
「えっ!、お義父さんと2にんだけで行ったの?」
「ええ、その日丁度、お母さん仕事で行けないって言ったからどうせなら2人で行こうかって事になって・・・・」
あたかも当たり前と言う風な彼女を見て、僕はだんだんと、事の真相が見えてきました。
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