[45995] 器6 Tear 投稿日:2009/09/22 (火) 05:18
私は17時の定時になるとすぐに会社を飛び出した。
無論、妻に男がいるのであれば、間違いなく行動に移すはずだと思っていたからだ。
私は車に乗ってエンジンをかけると、すぐにある方向へと向かっていた。
それまでに行き先は何度も考えていたのだ。
妻の帰宅する予定の19時過ぎという時刻を考えると、そんなに遠くへは行けない。
そうすると会社から自宅までの通勤エリアからかけ離れた場所へ行く事はあるまい。
選択肢は3つしかないはずだ。
①会社近郊
②会社と自宅の間
③自宅近郊
『②会社と自宅の間』にホテルが2軒あるが老朽化が進んでおり、立ち入る人は少ない。
しかも古いホテルにありがちで、駐車場入り口にビニールの暖簾がかけられているため、
駐車場の出入り時に、車の天井に暖簾の跡が付いてしまうのだ。
私はこの選択肢はないものと早くから判断していた。
結局、『①会社近郊』か『③自宅近郊』の選択になる。
私の推測はこうだった。
会社近郊か自宅近郊かを選択するにおいては、「人の目と時間」への考慮が欠かせない。
浮気目的であれば、特に「人の目」が気になるはずだ。
私は妻の相手が『会社関係の人間である』と仮定して考えをめぐらしていた。
『①会社近郊』であれば、男の車であれ、妻の車であれ、会社の誰かがどちらかの車を
知っている訳で、ホテルに1台で行こうと2台で行こうと、会社の近ければ近いほど、
会社の誰かから見られてしまう可能性は高くなるわけだ。
『③自宅近郊』を選んだ場合、妻の車をどこかに止めて男の車でホテルに入るのであれば、
危険性がぐっと少なくなってくる。
会社近郊の方が早く会えるという考え方もできるが、『まだ帰りたくない』とか『一緒に
いたい』とかいう心理が強ければ強い程、ギリギリまで許される時間を選ぶはずだ。
会社近郊ではなく、自宅近郊であれば、妻が言う19時過ぎの帰宅であれば、19時まで
は部屋にいることができるのだ。
つまり、早く入れる部屋よりも、二人が限界まで居れる部屋を選ぶと考えたのだ。
こうして「もう帰らないといけない」という状況が、皮肉にも二人を惹きつけ合わせること
を繰り返していくのだろう。
私は『③自宅近郊』のホテルへの方向へと車を走らせていた。
但し、『③自宅近郊』と言っても3つのホテルがあった。
私は立地条件からその中の隣り合う2つのホテルを選んでいた。
この推測では、妻の車でホテルに入る事はありえない。
想定している男が忘年会の深夜に妻を送ってくれた相手であるならば、黒いハッチバック
しか分かっていないが、私にはそれで十分だった。
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