[Res: 79197] Re: 赦さない・・・④ ヨシキリ 投稿日:2012/06/21 (木) 18:25
私は仕事を終えると足早に事務所に向かった。
事務所に着くと、いつもと変わらずに横山氏が出迎えてくれた。
横山「わざわざお越し頂いて申し訳ありません」
もしかして麻美さんが居るのではと思っていたが、そこには誰も居なかった。
私「どうかしましたか?」
横山「麻美さんからの伝言をお伝えしようと思いまして」
私「なんでしょう?」
横山「“離婚して頂いて結構です”と言われています」
私「どういう事ですか?」
横山「麻美さんにとって、堀切さんが離婚しないでいる意味が無くなったと言う事です」
私「もうどうでも良いから、好きにしてくれという意味ですか」
横山「そう言う事ではないです」
私「なにか理由があるんじゃないですか?」
横山「実は、寺岡敏文さんがお亡くなりになりました」
私「えっ!?」
横山「会社を懲戒解雇になり損害賠償を背負い、両親もスーパーと家を処分したのですが全ては追いつかず、
生まれ育った土地を離れる事になった日に、崖から身を投げたそうです」
私「そうですか・・・」
予想外の事で、私も何をどう話して良いか戸惑っていたのは確かでした。
静まり返った中、私は質問してみた。
私「損害賠償ってかなりの額だったのですか?」
横山「さぁ、会社の一件は一切関わってないので分かりません」
私「たしか、三井さんが用立てていたお金もありましたよね」
横山「そうです。その金額などはお教えする事はできませんが」
私「そりゃぁそうですよね」
横山「ところで、堀切さんは今後どうされますか?」
私「近いうちに結論を出します」
横山「分かりました」
私「その時は横山さんにお願いしたいのですが」
横山「その場合は料金が発生しますよ」
私「もちろん分かってます。その時は、宜しくお願いします」
帰り道、私の頭でグルグルと浮かんでは消えた事があった。
本当に自ら命を・・・。
まさか三井さんが・・・。
そんな事はないだろう・・・。
帰宅した私は、いつもと変わらないように妻に接したが、この日から“いつもの営み”をする事はなかった。
寺岡が死んだ事によって、全てが終わったという事ではないが、私達の結論を出す時なんだと考えた。
そう、これで終わりにしよう。終わりにしなくてはいけないんだと・・・・・。
私の中で、張り詰めていたものが崩れた感じがした。
この時は、妻との出会いから今までの事を想い出していた。
そして理由はないが、妻には寺岡の事を言わないでおこうと思った。
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