321 :621 ◆jnlT2G0izQ :2008/10/03(金) 23:30:26
今日の夕方客の少ないシティーホテルのコーヒーラウンジで妻と会ってきた
最初頑なに話すことは何もないと取りつく島もない様子だった妻も、あれから数日たって少しは頭も冷めてきたのか、
俺が最後の話をしようというとしぶしぶながらも了承した
ホテルにやってきた時には覚悟も決まっていたのか、電話で話した時よりはずいぶん冷静だった
離婚することについては簡単に話はまとまった
そしてそこで俺は気まずい沈黙の中ついに長い間の疑問の回答を求めて口を開いた
329 :621 ◆jnlT2G0izQ :2008/10/03(金) 23:36:37
俺「今回のことについて今更何も言うつもりはないんだ、ただどうしても聞きたいことがある」
「カメからも君の母からも聞いた、君は俺が君を裏切って浮気していたことが許せないって言ってるが、それはいったい何のことなんだ?」
「俺は君と結婚して以降今日まで君を裏切ったことは一度もないんだ、俺にはいったい何のことかわからない」
妻【・・・まだそんなことを言うの?この期に及んでまで?】
妻はややあきれ顔で嘲笑うかのような表情を見せながら言った
俺「わからないから聞いているんだ、いったい何のことだ?いつの話をしている?頼むから答えてくれ」
妻【・・・あなた私が気がついてなかったって思ってるの?馬鹿にしないで!】
俺「だからそれはいつのことだ、何を指して言ってるんだ?答えてくれ!頼むから」
ふうっと一息ついてから妻はやっと話始めた
妻【今から1年ちょっと前、両親の離婚問題で1年以上も苦しんだ私がやっと立ち直りかけた頃のことよ】
【あなたは鬱状態だった私の相手にいい加減疲れたんでしょ、私はずっとあなたに感謝していたし、心から信頼してたのに】
【私見たの、あなたが若い女性とホテルのレストランで楽しそうに食事してるところを】
【でもその時はたまたま部下かなんかの女性と食事してただけだって思った、思おうとしたの】
【でも一たん疑念が生まれると次々とあなたの不審な行動に気がついてしまった】
332 :621 ◆jnlT2G0izQ :2008/10/03(金) 23:40:02
【夜中にこっそりとリビングで電話してたり、あなたのスーツのちょうど胸のあたりに女性のファンデーションが付いていたこともあった】
【そして決定的にあなたの浮気を確信したのは、あなたがカバンに入れていたコンドームを発見した時よ】
【あなた嫌いだからって使ったことなんてなかったでしょ?】
【信じていたのに、愛していたのに、あなたは私を裏切った、父親と同じように】
【悲しくて辛くてどうしようもなかった、何度もあなたを問い詰めようと思った、でもあなたはいつも仕事、仕事、仕事、私の話をちゃんと聞こうとなんてしなかったじゃない!】
【それに私にもプライドがあるの、母親みたいに男にすがって捨てられるなんて絶対に私のプライドが許さない、だから聞かなかっただけ】
【あなたが毎日遅くまで帰ってこなくたって、仕事だから、私のために頑張ってくれてるんだって思ってたから平気だったし、感謝もしていた】
【でも全部嘘だったんじゃない、あなたは仕事っていいながら他の女と遊んでいたのよ】
【やっと立ち直りかけてたのに、あなたのせいで私はそれまで以上に苦しんだのよ】
【でもそれまでみたいにあなたに苦しんでるところなんて見せたくなかた、だからあなたの前では平気なふりしてただけよ!】
【どんなに辛いかあなたにわかる?誰も私を愛してくれないことが、必要としてくれないことが!】
【苦しかった、毎日毎日心が壊れそうに】
【そうして苦しめば苦しむだけだんだんとあなたのことが気持悪くなったの、だからあなたの下着に触るもの気分が悪かった】
【初めて人を憎いと思った、本当にあなたのことが大スキだったから、心から愛していたから、だから絶対に許せないって思ったの!】
【そうね、その頃から私は本格的に壊れてしまったのかもしれない】
【寂しくて寂しくて、誰かに求められたい、誰でもいいから、そんな風に強く思うようになった】
337 :621 ◆jnlT2G0izQ :2008/10/03(金) 23:46:21
【カメなんて好きでもなんでもなかった、あんな男、そうね、はっきり言えばだれでもよっかったのよ】
【私たちのマンションで撮影があった時、あいつは無理矢理私を抱きしめて押し倒したの、その瞬間に頭の中に電気が走った】
【ああ、私こんなに強く激しく求められてる、そう思ったらそれまでの苦悩が一気に消えていった、爽快で幸せな気分だった】
【でも回を重ねるに従ってだんだん刺激が足りなくなった、最初のころの爽快感が少なくなっていった、そんな私の反応を見てあいつはいろいろ頑張ってくれたわ】
【私に飽きられまいとして必死にね】
【何とか私を最初のころのように満足させようとして、もうほんと次から次へと】
【そうやって考えれば親切で便利な男だったわ】
【あなた私があいつを愛して骨抜きになってたとか思ってるでしょ?】
【でも残念ながら見当外れ、あなたに裏切られ傷つけられた私が簡単に男を信じたり愛したりできるわけがないでしょう!】
【あの男達に私はオモチャにされたんじゃないの、私があの男達をオモチャのしたのよ】
【あいつ達にめちゃくちゃにされるのは気持よかったわ、大勢の男が必死に競って私を求めている、頭の中がスーッとしてジンジンして苦しいこと全部忘れられた】
【それに私がめちゃめちゃにされればされるだけ、大っきらいなあなたが汚れていくと思うとよけいに快感だった】
【どう?これで全部わかったでしょ?満足した?】
【あなたがやったことは私を裏切っただけじゃない、自分自身をも裏切ってめちゃめちゃにしたのよ】
【だから私は死ぬまであなたを許さない、絶対に!!!】
347 :621 ◆jnlT2G0izQ :2008/10/03(金) 23:52:28
前にも書いたが俺は立場上取引先や部下の女子社員と食事をしたりすることがたまにある
妻がいったい俺が誰と一緒のところを見たのかは今となっては不明だ
夜中に電話していたのは、1年ちょっと前に優秀な部下の女子職員が、仕事上の問題で会社を辞めようと悩んでいたことがあった
俺は彼女の能力を惜しんだし、人間的にも見どころを感じていたので、一生懸命励ましていたんだ
そんな折に何度か夜中に泣きながら電話してきたことがあって、妻はきっとその時のことを言っているのだろう
そして結局その女子職員は会社を辞めてしまったのだが、最後の送別会のときに店を出た帰り際に泣きながら「いろいろ相談に乗っていただいたのにすいません」って
抱きついてきたことがあったんだ、勿論それだけなのだがその時に彼女の頬紅がついたのだろう、それ以外にはありえない、
俺はやましいことがない故に全く気にもしていなかったのだが
コンドームは俺は早く子供が欲しかったこともあって俺達夫婦は使っていなかった、
妻はまだもう少し二人でいたいからと俺に避妊するように求めていたのだが
問題のコンドームは上司と数人で飲んでいた時に酔っぱらった上司が上機嫌でワイ談を始めて、最近ネットのアダルトショップで購入したという
ジャンボサイズのコンドームを皆に見せながら(その上司は大きいらしい)そのコンドームがいかに具合がいいかを話して聞かせていた
その時にどうだお前たちも試してみろと言って俺達に一つづつ配ったことがあった
まさか断るわけにもいかず、その場で捨てることもできずに俺は何気なくカバンの中に入れてそのまま忘れてしまったのだ
数日たって思い出して捨てたのだが、妻が見たのはその時のコンドームに間違いない
356 :621 ◆jnlT2G0izQ :2008/10/03(金) 23:57:48
長い妻の独白が終わった後に俺は言った
俺「・・・違うんだ・・・違うんだよ○子、全部誤解だ、俺は君を裏切ってなんかいないんだ!」
その瞬間に妻の表情が変わった、ハッとして最初驚きの表情を見せた後、まるで憑物が落ちたように先ほどまでの険しさが消えていった
俺が全ての説明をするまでもなく妻にはわかったようだ、俺の悲しげな様子を見ただけで
そしてその後に見せた表情こそ俺が愛した妻の顔だった、不幸が重なり疑念に取りつかれて夜叉に変身してしまう前の
妻の大きな瞳にみるみる涙が溢れ、これほどまでに悲しそうに人が泣けるのかと思えるほど悲しそうに妻は泣いた
長い間の苦しみと憎しみで凍りついてしまっていた俺の心がやっと溶けた、そして振りきれてしまっていた心の振り子が再び元通りに戻った
妻は泣きながら無理矢理に微笑んでただ一言だけ残して去って行った
【・・・でも、もうダメね】
俺は悲しくて、ただ悲しくて、妻にかける言葉も見つけられないまま彼女を見送った
コメント
コメントの投稿
トラックバック
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)