弱い鬼 10/10(火) 06:40:12 No.20061010064012
妹と車で実家を出て、公園を見付けた私は駐車場の隅に止めました。
「明にマンションへ連れて行かれた」
「明お兄ちゃんが!」
妹は知らなかったようで、驚いた声を上げましたが、すぐに俯いてしまいました。
「俺達の事をどうして話した。明とどの様な関係だ」
「約束が違う・・・・約束が・・・・・・・・」
妹はそう何度も呟くだけで答えません。
「お義兄さん・・・・ごめんなさい」
「他人に話されて困る様な事をした俺も悪かったが、どうして明なんかに話した」
妹は泣き出し、結局私の質問に答え始めたのは、車を止めてから30分近くも経ってからの事でした。
「明と付き合っているのか?」
「それはありません」
「それならどうして、あのマンションに下着が?」
妹は顔を上げ、驚いた表情をして私の顔を見ました。
「そんな物まで・・・・・・約束が違う・・・・・・」
「いったい明と何の約束をした?」
はっきりと答えない妹に、業を煮やした私は賭けに出ました。
「今から旦那を呼び出してくれ。俺と一緒に謝ろう。旦那が浮気して実家に帰っていると聞いたが、それでもやはりしてしまった事の責任は取らないと」
「やめて。そんな事をしたら離婚になってしまう」
妹は意地になって家を出たものの、旦那と離婚する気は無いと言います。
子供達の将来を考えても、離婚は考えられないと言うのです。
「それならどうして戻らない?」
「戻れない・・・・・・・・・」
戻れない訳を聞いても、妹はそれ以上話さなかったので、私は質問を変えました。
「もう一度聞くが、明とはどの様な関係なんだ?体の関係もあるのだろ?」
「違う。明お兄ちゃんは相談に乗ってくれただけ。主人が浮気した時に、相談に乗ってくれただけ」
妹は頑なに否定し続けます。
「分かった。旦那の会社に行こう」
「それは出来ない主人は今でも『許して欲しい。もう戻ってきてくれ』と毎日謝ってくれる。でもこの事を知れば・・・・・・・」
私は自分の立場も忘れて、妹を脅していました。
「だから本当の事を話してくれ。話してくれれば俺の気持ちも変わるかも知れない」
「私はどうすればいいの?話さなければお義兄さんが。話せば明お兄ちゃんが・・・・・・・・・」
「明に脅されているのだな?」
妹の旦那が浮気した事を知り、私の気持ちも少し楽になっていたので、答えなければ本当に謝りに行く気でエンジンを掛けると、妹は助手席からハンドルを掴んで阻みます。
「話します。話ますから主人の所には・・・・・・・・」
私がエンジンを止めると、妹は少しずつ話し始めました。
「半年ほど前に、主人が浮気しました。一度だけの関係だったのですが、それが相手のご主人にばれて・・・・・・・」
相手の女性に「主人に知られてしまいました。私のパート先の社長が間に入ってくれて、その事で今日お邪魔すると言っています」と言われ、妹の旦那は隠し切れなくなって自ら妹に告白し、その時来たのが明でした。
『もしかして、その奥さんは』
私の脳裏には調査員が撮って来た、彼とホテルに入って行くパート事務員の顔
が浮かんでいました。
「私も驚いたけれど、明お兄ちゃんもまさか私の主人だとは思っていなかったので凄く驚いて、親身になって相談に乗ってくれました」
彼は慰謝料の事まで「子供が3人もいては離婚出来ないだろ?今回智美も慰謝料を取れる代わりに、相手の旦那もご主人に請求出来る。普通この様な場合、男が多く払うのが普通だから、結局智美の家計から差額を払う事になってしまう。何とか俺が行って来いの、とんとんで済むようにしてやるよ」と言って、頼りになるところを見せました。
その後も妹は何度か相談に行き、実家に帰ったのも「暫らく別居して、旦那に危機感を持たせた方がいい。今回の問題を軽く済ませると、味を覚えてまたしてしまうぞ」と言われたからだそうです。
「明とはその時からか?」
「別居してから・・・・・・・寂しかったの。主人に裏切られた事や、子供達とも朝夕しか会えなくなって寂しかったの。最初こそ拒んだけれど、すぐに感じてしまって何もかも忘れられたの。私寂しかったの」
妻に裏切られて妹を抱いた私には、妹を責める事など出来ません。
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