弱い鬼 10/12(木) 07:14:27 No.20061012071427
実家に戻ると、妻と義母は玄関に正座して待っていました。
「優香の事は信用出来ないから、奴と会っていなかったか智ちゃんを連れ出して聞いた」
私は妹との事を言えませんでした。
私に脅されながら、決死の覚悟で話してくれた妹がその気にならない限り、私からは言えないと思ったのです。
「会っていません。生まれる前に一度お見舞いに来て、その時は何も知らずに通してしまったけれど、優香に今回の事を聞いてからは会わせていません」
そう答えたのは義母でした。
私はなぜか我が子を見ているのが怖く、その日はわざと息子の寝ている部屋を避けて誰かと何かを話すでも無く、一人で今後の事を考えていると、妹夫婦が不憫に思えて来ます
妹夫婦は、今回の事では被害者です。
旦那も無理やり女に襲われた訳では無いので、断らなかった事は自分の否です。
妹にしても、彼を信用してしまった事は自分の否であり、最初は無理やりだったとしても、二度目に強く断らなかったのは快感に負けたのかも知れません。
しかし妻の事が無ければ彼もこの様な事まではせず、今でも仲の良い普通の夫婦だったでしょう。
妻がこの様な事をしなければ危害は及ばず、つまりは妻に隙を与えた私の責任でもあるのです。
私達夫婦がしっかりしていれば、妹夫婦もこの様な事にはなっていなかったはずです。
もう私達夫婦だけの問題では無いと思い、妻を妹と行った公園の駐車場に連れ出しました。
「俺は智ちゃんを抱いた」
俯いていた妻は顔を上げて、運転席の私を見ました。
「俺は責められても仕方が無いが、これも明の仕組んだ事で、智ちゃんは明に脅されてした事だ」
その時妻が、一瞬驚いた顔をしました。
驚くと言う事は、未だに彼をそのような事をする人間だとは思っていないという事です。
「智美が脅されて?それが本当なら、まさか智美も明ちゃんと・・・・・・」
「本当なら?話にならん!」
「ごめんなさい。決してあなたを信じていない訳では・・・・・・」
私は彼が妹夫婦にしてきた事を全て話しましたが、妻は私に逆らえないので反論出来なかっただけで、まだ半信半疑のような顔をしていました。
「優香は俺を愛していると言うが、それは子供の父親が俺だったからだろ?」
「違う。私はあなただけを・・・・・・」
日記などから分かっていても、何度も確かめたいのです。
「それが本当だとしても子供が明の子供だったら、今頃優香は明と幸せな家庭を築こうとした。あんな男と夫婦になって、毎晩に抱かれても良いと思っていた。違うか?」
妻は何も答えません。
「そうか。抱かれても良いと思っていたのではなくて、毎晩でも抱いて欲しいと思っていたんだ。俺とでは経験出来なかったほど、感じさせてもらっていたらしいから、子供に託けて、それが離婚したい一番の理由だったんだ」
やはり妻と彼のセックスの事が気になって頭から離れず、すぐにそちらの話になってしまいます。
「違います。あの頃私は、後の事は何も考えられなかった。お腹の子供の事だけしか考えられなかった。どうしたら子供が一番幸せになれるか、それしか考えられなかった」
「もう一度聞く。子供の事を除いても俺が好きか?」
「私はあなたが好き。あなたを愛しています」
私は妻を交えて、彼と話し合う決心をしました。
「奴の家に案内しろ!」
妻もこのままでは駄目だと思っていたのか、すんなりと私を案内しました。
「案内させて言うのも変だが、よく奴の家を知っていたな」
妻が俯いてしまった事から、ここに来たのが初めてでは無い事が分かります。
おそらくマンションだけでなく、私に出張だと嘘を吐いてここに泊まった事があるのでしょう。
「奴の会社は?」
私は自宅に隣接していると勝手に思い込んでいましたが、会社は別の場所にあるようで、今度は妻に会社の場所を聞きました。
すると妻は携帯を出して、ここに来るように電話を掛けます。
「消してなかったんだ。奴と縁は切れないという事か。裸で抱き合った仲だから仕方ないか」
「違います。何の意味もありません。でも、あなたの気持ちを考えれば、削除どころか携帯を代えるべきでした。ごめんなさい」
奴はすぐにやって来ましたが、私を見て怪訝そうな顔をしました。
「優が会いたいと言ってきたから嬉しくて、会議を中止してまで急いで飛んで来たのに、あんたも一緒か」
経済力、腕力、セックスで敵わないこの相手に、勝てるとすれば夫婦の絆だけだと思いましたが、これは妻次第のところがあり、妻の携帯に彼の番号が残っていた事で不安になった私は、心臓がいつもの倍の速さで動いていました。
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