弱い鬼 10/14(土) 03:45:54 No.20061014034554
私は「最後まで」の意味を考えていました。
「ご主人とは別れたのですか?」
「主人は10日前に・・・・・・・・・」
彼女の言葉に嘘は無いようです。
私は彼女に同情して黙ってしまいましたが、私達夫婦の問題だけでは無いので、このまま終わらせる訳にも行きません。
「事情は聞いていると思うが、俺達夫婦が壊れるだけで無く、このままでは妹夫婦も壊れてしまう。君江さんは、子供は?」
「3人います」
「失礼ですが、君江さんは何歳ですか?」
「42歳になりました」
「そうですか。それじゃあお子さんは、もう大きいのですね」
「上二人が高校生で、下は中学生です」
「妹夫婦のところも3人いますが、まだ小さい」
すると彼女は声を出して泣いた後、ぽつりぽつりと話し始めました。
「まさか40代半ばで脳溢血なんて考えてもみませんでした。人のいい主人は友達の保証人になって騙され、頑張って2人で返していこうと、私も今の会社に勤め始めた矢先でした。それなのに主人が倒れ、騙された借金の他に、主人の入院費も・・・・・・。その時社長は、まだ勤め始めたばかりでどの様な人間かも分からない私に、お金を貸してくれて・・・・・・・」
私には彼女が逆らえない理由が、手にとる様に分かりました。
「君江さん、もういい」
しかし彼女はやめません。
「子供達を、高校ぐらいは出してやりたかった。人並みの生活をさせてやりたかった」
これは真実を告げられない彼女の、精一杯の回答だったのです。
私は聞いていられなくなり、泣いている彼女を残して戻ると、彼の大きな声がドアの外まで聞えてきました。
「抱いて欲しくて、優から来た事だってあったじゃないか!」
「あの時はどうかしていたの」
「それなら聞くが、赤ちゃんが出来てもいいと言ったのも嘘か!」
『優香が奴の子供を望んだ?』
「あれは明ちゃんが」
私が思い切りドアを開けると、妻は急に黙ってしまいましたが、彼は話を続けます。
「結果的に俺の子供じゃなかったが『明ちゃんの子供が欲しい』とまで言ってくれただろ!」
「やめてー。もう言わないでー」
「優香、帰るぞ!」
妻とやり直す気になっていた私は、妻が妊娠を望んだ事を聞いて動揺し、妻も話を聞かれた事で何も話せず、車の中には気まずい雰囲気が流れ、このまま帰れない私は、またあの公園に車を止めていました。
「奴の誘いが断れなかったのではなくて、優香からも誘った事があったのだな」
「誘ったなんて・・・・」
「言えないか。終わったな」
「どうかしていたの。あなたの顔を見ていると辛くて。その事で仕事もミスばかりで、何もかも忘れたかった。そして気がついたらマンションに行っていて」
私に対する罪悪感から、また彼と関係を持ってしまう妻の気持ちが分かりません。
「もしそうだとしても、その時優香は俺ではなくて奴を選んだ。奴とのセックスはそんなに良かったのか?何もかも忘れさせてくれるぐらい、そんなに凄かったのか?」
私は否定して欲しかったのですが、妻は涙を流すだけで何も言いません。
「本当は奴の子供が欲しかったんだ」
「逆です。子供が出来てしまわないかと、いつも不安だった。その事が怖かった」
「奴ははっきりと言ったぞ。優香が『明ちゃんの子供が欲しい』と言ったと」
「違うの。それは違うの」
黙ってしまった妻に怒りを覚え、私は車を走らせました。
「待って。少し待って」
「待ってどうする。また言い訳を考えるのか?」
「言います。何でも話しますから」
駐車場から出掛かった所に車を止めると、妻が話し始めました。
「最初に、これだけは信じて。あなたとのセックスの方が気持ち良かったです。
明ちゃんとは、あなたとしている時の様な安心感や、愛を感じる事は無かった。
明ちゃんとよりもあなたとの方が、数倍気持ちよかったです」
しかし私には慰めに聞こえ、信じる事は出来ません。
「何度も逝かせてもらって、俺とは経験出来なかったほど感じさせてもらったのだろ」
「いつも明ちゃんは「もう終わって」と言っても終わってくれずに、私は何度も達してしまいました。凄く乱れてしまいました。でもあなたとの方が気持ち良かったです。上手く言えないけれど本当です」
やはり私には信じられません。
これは離婚を回避したい妻が、嘘を吐いているのだと思って聞いていました。
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