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北原夏美 四十路 初裏無修正

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WR 1/28(日) 16:55:46 No.20070128165546

「夕方には帰りますから……」

妻は小声でそう言うと、家を出て行きました。男に抱かれるために出かける妻を見送るというのはなんとも嫌なものです。こんな気持ちを人生で味わうことになるとは思ってもいませんでした。

私はすぐに待機している興信所の調査員に電話します。ミクシイでのやり取りにより、妻が村瀬と会う日は予め分かっているわけですから、ピンポイントで調査が出来ます。私自身が尾行しても良いようなものですが、証拠としての価値を考えると興信所の報告書があった方が良いと思いました。

妻が不貞を働くことを知りながら泳がせる、当時のことを今思い出してもこの時期が一番辛かったです。知らないということはある意味幸せなことです。

やがて興信所の調査員から電話がありました。妻は出かけるとまっすぐにラブホテルに向かったということです。昼前からラブホテルで若い男と情事に耽る女、そんな女が自分の妻だとは……実に情けない話です。

次に興信所から電話があったのは4時間以上後でした。妻と村瀬はよほど名残惜しかったのでしょうか。10時から2時までの4時間をホテルの中で過ごしたようです。

これで証拠は押さえたわけですから、調査はここで切り上げても良いのですが、私は念のためにそのまま継続を依頼しました。妻の行動の全てを把握しておきたかったのです。

妻はその後、村瀬と共に元町へ向かいます。私には美奈子さんと佐和子さんと買い物に行くと言って出かけたのですから、何か買って帰らないと不審に思われると考えたのでしょう。

元町で久美が2人と合流したのには少々驚きました。初日以降、久美はミクシイにはほとんど顔を出していなかったので、今回の逢引にはからんでいないのかと思っていたのです。考えてみれば村瀬と久美は電話で連絡が取れるわけですから、3人が行動を共にしてもおかしくはありません。

3人はしばらく一緒にショッピングをします。といっても、妻と久美の女同士の買い物に村瀬が付き合うという感じでしょうか。確かに3人が仲良く買い物を楽しんでいる写真を見ると、母親とその娘と息子、という風に見えなくもありません。

4時半ごろ、妻と村瀬・久美は駅で別れます。調査員からここで再び継続の要否確認の電話が入ります。

「妻が帰って、村瀬と久美はその場に残っているのだな」
(はい、このまま奥様を尾行しますか?)
「……」

予め夕方には帰ると行って出かけた妻ですから、おそらくこのまままっすぐ帰ってくるでしょう。私は引っかかることがあって少し考えます。

「村瀬と久美の方を尾行してくれ」
(わかりました)

私が当初から村瀬と久美に対して抱いていた疑念がありました。それが正しいかどうかが、証明できるかもしれません。村瀬と久美は妻と別れると駅から元町通りを抜け、山下公園に向かいました。そこから中華街に行き食事をします。

(デートコースじゃないか……)

そうこうしているうちにそろそろ妻が帰ってくる時間です。私は調査員に、以後の連絡はメールに切り替えるように依頼しました。しばらくすると玄関のチャイムが鳴りました。
「ただいま」

妻が帰ってきました。私が玄関まで迎えると、妻は手に持った買い物袋を置きます。

「遅くなってごめんなさい……すぐに食事の用意をしますね」

妻は一瞬私と視線が合うとすぐに逸らし、キッチンへと向かいました。その時ポケットに入れてあった携帯電話が震え、メールの着信を告げます。

(2人は石川町近くのホテルに入りました)

私は調査員からのそのメールを複雑な思いで眺めます。妻と村瀬の不倫が露呈し、久美が村瀬と共に私の家に来たときから、私は久美に対して不審なものを感じていました。村瀬が母親のような年齢の妻を愛するというのはわからないでもありません。また、久美のような娘が同年代の男には興味がなく、これも父親のような男に身を任せるというのもあり得ない話ではありません。しかし、その2人が同じ大学で、同じフルートのパートに所属しているというのが偶然にしても出来すぎだと思っていたのです。

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