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北原夏美 四十路 初裏無修正

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WR 1/29(月) 17:36:22 No.20070129173622

私は再び静かな声で話します。

「いくらなら用意できるんだ?」
「二百万なら……」
「それは君の貯金か。さすがR大の学生だ。結構貯めているな」

村瀬と久美は身を縮めるように私の言葉を聞いています。

「今すぐ学生向けの消費者金融を回って来い。200万くらいは借りられるだろう。残りの4600万円は借用書でいい。約束どおり久美が連帯保証をしろ。俺も鬼じゃないから金利は利息制限法上限の15%にしておいてやる」

村瀬と久美は愕然とした顔を私に向けました。

「金利だけで月57万5千円になるな。元金の返済込みで100万円以上、これを毎月末に払え」
「ぼ、僕は学生です。そんなには払えません……」

村瀬は顔を引きつらせています。久美も真っ青な顔を私に向けています。

「そんなことは俺は知らん。5000万円払うと啖呵を切ったのは君だろう」

私は冷たく突き放します。

「一度でも遅れると、借用書を債権回収業者に売り払う。連中の取立てはきついぞ。村瀬君には臓器を売れとか、久美さんにはソープに沈めるとか言ってくるだろうな」
「許してくださいっ!」

村瀬と久美は震え上がって頭を床に擦り付けます。

「謝る時期が間違っているんじゃないのか。どうして前回、自分たちが約束を破ったときに謝らなかった?」
「……それは」
「君たちは今日いきなり土下座をした。金が用意できなかったことを謝ることはできるのに、どうして人の心を傷つけたことは謝れない?」

久美は村瀬の隣で身体を強張らせていましたが、顔を上げるとすがるような目を私に向けました。

「……私も払います。自分の貯金と、お金を借りて真一さんとあわせて500万は払います。ですから、サラ金なんて恐ろしいことは……」
「まだわからないのかっ!」

私はそれまで出来るだけ穏やかに話そうとしていましたが、この久美の言葉で激高します。妻が手にもったトレイを音を立てて置くと、久美の隣に並んで土下座しました。

「あなた、許して、私が、全部私が悪いんです。私の財産はみんなあなたにお渡しします。これからずっとあなたの言うとおりにお仕えします。ですから、ですから、2人を許してあげてください」
「先生、駄目っ!」

久美がわっと泣き出しました。

「本当は私なんです。私が悪いんです。私が先生にお願いしたんです。ご主人、ごめんなさい。私、なんでもします。なんでもしますから先生と真一さんを許してあげてくださいっ」

妻と久美は互いに手を取り合うように、わあわあ声を上げて泣き始めます。村瀬は土下座したまま拳を握り締め、涙を流しています。私はそんな3人の姿を見ながら、なぜかたまらない寂寥感がこみ上げてくるのを感じていました。


村瀬と久美が帰った後、私と妻はリビングで向かい合って座っていました。妻の目は泣いたせいか、真っ赤に腫れています。

「あなた、本当にごめんなさい。私が悪かったです」
「……許してくれとは言わないのか」
「私から言うことは出来ません。それだけのことをあなたにしてしまった訳ですから。いまさら償いと言っても遅いでしょうが、何でもしますから言ってください」

妻は頭を下げて、私の言葉を待っています。私はやがて口を開きました。

「離婚してくれ」

妻の肩先が一瞬震えました。

「……わかりました」

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