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北原夏美 四十路 初裏無修正

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柴田 2/21(水) 06:42:06 No.20070221064206

妻も仕事を持っていたので、ある程度の付き合いは認めていたが、連絡も無しに、このように遅くなった事は初めてだ。
それで携帯に電話したが電源は切られていて、結局妻が帰って来たのは午前0時を過ぎていた。
「携帯の電源まで切って、こんな遅くまで何処にいた!」
「何処にいたって勝手でしょ!嫌なら離婚しましょう!」
私は驚きで言葉が続かなかった。
このような激しい口調の妻を見たのも初めてだったが、簡単に離婚を口にした事が信じられない。
私が27で、妻が24の時に結婚して18年。
近所でもオシドリ夫婦で通っていて、私もそう自負していた。
ここ最近は少し妻の様子がおかしかったが、それでも私の妻に対する愛は変わらず、妻も私を愛してくれていると信じていた。
その妻の口から離婚という言葉が出た。
「本気で言っているのか?」
「だって、もう私の事を愛してはいないのでしょ!」
妻はバッグから興信所の名前の入った封筒を出すと、その中に入っていた数枚の写真を並べる。
彼女と初めて会った日に、楽しそうに話をしながら駅まで歩く姿。
出張先のホテルのロビーで、笑いながら話す二人。
そして二人は、一緒にエレベーターに乗り込む。
彼女と居酒屋へ行った時の写真もあるが、酔った彼女は帰り道で足元がふらつき、悪い事に写真では私の腕を抱き締めるように掴んでいる。
何よりも決定的なのが、いつの間に撮られたのか、二人で彼女の部屋に入っていく姿まである。
「誰なの!」
「渡辺さんという、ゴミを出しに行った時に知り合った・・・・・」
「下の名前は!」
「名前は聞かなかったから分からないんだ。名字しか聞いていない」
「付き合っていて、そんな訳が無いでしょ!」
「付き合ってなどいない。偶然会って、ただ一緒に食事して」
私は彼女との経緯を詳しく話したが、妻は全く信用してくれない。
「言いたくないのなら、それでいいわ。彼女の身元が分かったら、興信所から連絡が入る事になっているから」
出張に行く二週間前から妻が口を利かなくなったのは、彼女と歩く姿を興信所から連絡されたからなのか。
一ヶ月前から様子がおかしかったと言う事は、その頃から私の女性関係を疑っていたのか。
彼女と会った二週間前からならまだ分かるが、一ヵ月も前から疑われる様な事は、私には全く身に覚えが無い。
「これは誤解だ」
その後の妻は時々連絡もなしに遅く帰る事があり、中には午前様になる事もあったので、誰と何をしているのか気になったが、二人だけの時は口も利いてくれないのと、女性を誘って二人だけで食事をした罪悪感もあって、妻に対して何の追及も出来なかった。
妻が怒るのは最もで、あのような写真を見せられては、これが逆なら私でも信用出来ずに激怒していただろう。
「今夜も遅いのか?」
「私の事は放っておいて!私に干渉しないで!」
いくら私の浮気を疑っていて怒っていたとしても、控えめで大人しかった妻の変わり様に驚きを隠せない。
妻は見るからに優しいお母さんといった風情だが、私と一緒にいる時には顔付きまで変わる。
「渡辺なんて嘘だったのね。それにゴミを出しに行って知り合ったのも嘘じゃない。そんなに彼女を庇いたかったの?木下恵理36歳。同じ町内でもないのに、わざわざここまでゴミを出しに来たと言うの!」
遅くに帰って来た妻は私を睨みながらそう言ったが、私は妻の言っている事の意味が理解出来なかった。
「木下?彼女は近所に住んでいない?」
「まだ惚ける気!離婚していて、今は独身だと嘘を吐いていたらしいわね。そうなると彼女も被害者だから、彼女には責任の追及は出来ないけれど、あなたには責任をとってもらいます。子供達が手を離れるまでは離婚しないけれど、私の事は今後一切干渉しないで」
「何を言っている?さっぱり意味が分からん。第一俺と彼女はそのような関係では無い。彼女に聞いてもらえば分かる」
「彼女と電話で話したけれど、彼女は素直に認めたわよ」
私は更に訳が分からなくなった。
現実に彼女とは何もないのだ。
妻か彼女の、どちらかが嘘を吐いている。
妻が嘘を吐いてまで私を陥れるなどとは考えられないが、彼女もまた嘘を吐ける人間には見えなかった。

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