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北原夏美 四十路 初裏無修正

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柴田 2/23(金) 22:20:57 No.20070223222057

私が腰を上げずに睨んでいると、青山は謝罪するどころか説教まで始める。
「ご主人の浮気で可也悩んでいて、私が慰めてやらなければ千里はどうなっていたか。
ご主人、浮気だけは駄目だ。浮気は人の心までをも壊してしまう」
盗人猛々しいとはこの事で、まるで反省の色は無い。
「浮気したのはお前達の方だろ!裁判ではっきりとさせてやる」
「分からない人だ。これでは千里が離婚したがっているのも分かる。ご主人の浮気で夫婦が破綻してしまった後だから、私達の行為は不貞にはならない。それどころか、私は人助けをしていると思っている。今の千里は私だけが心の支えだ。訴えたければ訴えなさい。笑われるのはご主人の方だから」
「絶対に訴えてやるからな!」
私は馬鹿の一つ覚えのように、ただ「訴える」を繰り返していた。
「どちらにしても、今後妻とは二人だけでは会うな!」
「それは聞けない。悪い事をしているとは思っていないので。それに今私が見放したら、千里は精神的におかしくなってしまいますよ。私にはそのような薄情な真似は出来ないから、これからも今の関係を続けます。勝手に裁判でも何でもおやりなさい」
所長の言う通りだった。
何度も殴ろうと拳を握ったが、その度に所長の言葉を思い出し、殴る事も出来無い私は完全な負け犬で、ただ尻尾を巻いて帰るしか無かった。
死にたくなるほど情けない。
妻は約束したにも拘らず、その夜も帰りが遅かったので眠れずに待っていると、深夜の1時近くになって調査員から電話が入る。
「今警察にいます。奥様が事故を起こして普通の精神状態では無いので、すぐに迎えに来て下さい」
警察に行くと、妻は放心状態で駐車場に立っていた。
「自損事故で、少し腕をうっただけで大した怪我も無いようです。ただ車は動きませ
んが」
妻の運転する車はふらふらと何度も中央線をはみ出して、対向車に気付いて急ハンドルを切ったために、路肩の標識にぶつかったらしい。
それを尾行していた調査員が助けてくれた。
「妻に何があったのですか?」
「ええ・・・・・・・調査結果もまとめて、詳しい事は所長の方から話しますから、明日の夜にでも来て頂けますか?それまでに調べたい事もありますので」
助手席の妻は私に背を向け、窓から外を見詰めたまま動かずに、家に帰ってからも放心状態のままだった。
「青山と会っていたのか!どうして約束を守らない!」
しかし妻は何も答えず、焦点の定まらない目で一点を見詰めている。
そして翌朝、妻はまだ普通の精神状態ではないようだったが、私の言う事も聞かずにバスで会社に行くと言って出ていった。
私も出勤したものの仕事どころでは無く、約束は夜だったが午前で切り上げて興信所に向かう。
「青山に会われてどうでした?調査員が張り込んでいて、会社に来られた時に止めようと思ったらしいのですが、間に合わなかったと言っていました」
「すみませんでした。所長の言われていた通りで、惨めな思いをして帰って来ました」
「青山は可也の男ですよ。昨日ご主人が乗り込んだ事で、見張られていると分かっていたはずなのに、平気でまた奥様と・・・・・それに・・・・・」
「それに何です?」
「その前に、青山が会っていた女性が分かりました。今週も二度会っています」
写真を見せられたが、私はその女性を知っていた。
「小料理屋の・・・・・」
「そうです。女将は青山の愛人です。会った日は食事をした後、二度とも小料理屋に泊まっています。昔風に言えばお妾さんですか」
小料理屋の女将が愛人だとすると、これで青山と恵理が繋がった。

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