柴田 3/18(日) 23:14:19 No.20070318231419
確かに妻は、この二週間で可也の回復を見せた。
薬が効いたのか、それとも誰にも明かせなかった胸の内を医師に聞いてもらった事で落ち着いたのか、または両方が良かったのかは分からないが、回復したのは表情にも表れていた。
しかし私と二人だけで部屋にいると、暫らくすると二週間前の硬く無表情な妻に戻ってしまう。
妻の浮気は心の浮気ではなくて、どちらかと言えば身体の浮気なのだ。
心まで奪われたのでなければ、子供達の事も考えて許すという人もいるだろう。
ここで妻を許せば、妻は完治するだろうと思った。
一先ず許した振りだけでもしようかとも思った。
しかし身も心もという言葉があるように、仮に身体だけが裏切ったとしても、私には妻という存在の半分近くに裏切られた思いがある。
いや、それ自体も自分が小さな男に見えないように自分自身に嘘を吐いていて、心の浮気なら心が戻ればやり直せる気もするが、私を裏切って他の男を受け入れてしまった身体は、元には戻らないような気さえしている。
実際にそのような事は有り得ないのだが、他の男に広げられてしまった性器は、元のサイズには戻らないような感覚さえある。
「青山や今中のチンチンは気持ち良かったか?まだ二人のチンチンの感触を、千里の身体は覚えているのだろ?」
当然妻は何も答えられない。
「また何かあったら、青山や今中に抱いて欲しいと思う気持ちがあるのか?」
妻はただ激しく首を振る
「私はあなたが好き。あなたを愛しています」
「そんな事は聞いていない。また二人に抱かれる可能性が有るのか無いのか聞いているんだ」
「もうあなた以外には・・・・・・・・」
「正式に俺と離婚が成立したらどうだ?それでも奴らに抱かれる可能性は無いのだな。奴らではなくても、一生他の男に抱かれる事も無いと言えるか?」
無理な事を聞いているのは分かっていた。
離婚届を出してしまえば、妻は自由になれるのだ。
そうなれば、私は妻に何も言う権利は無くなる。
私にはその事が途轍もなく寂しい。
「離婚届は書いたが、今の俺は何とか千里を許そうともがいている。しかしどうしても許せない。何かペナルティーを与えて許そうと思っても、どのようなペナルティーを与えれば許せるのかも分からない。子供達のために、このまま仮面夫婦で暮らせないことも無いが、そんな暮らしは絶対に嫌だ。それならこのまま離婚届を提出した方がいい」
それには妻も頷いた。
「だから俺は自分に正直になろうと思う。下衆な男と思われてもいい。俺は千里の全てが知りたい。千里と青山の行為。千里と今中との行為。全てを知っても許せるのなら許したい。千里が復縁を望んでいないのなら、それも仕方ないが」
妻はすぐには返事が出来無い。
ただでさえ誰にも知られたくない行為を、一番知られたくない私に話す事など出来ないのだ。
「分かった。終わりにしよう」
「ごめんなさい。私は酷い女です。私は酷い妻です。取り返しのつかない事をしてしまいました。ごめんなさい。ごめんなさい」
私が立ち上がると初めて妻は必死で謝って、私の足に縋り付いて泣く。
「千里は俺の事を全て知りたいと思ったことはないか?」
「知りたい。自分が裏切っていながら、女将さんと何があったのか知りたかった。恵理さんとは結局何も無かったけれど、それでも居酒屋で何の話をしたのか。部屋で飲みながら、何を話したのかまで全て知りたかった」
このような話を続ければ、また妻が二週間前に戻ってしまうかも知れないと思ったが、妻を許せる可能性があるとすれば、全てを知ってからで無いと無理だと思った。
許した振りなら出切るが、心底許す事の出切る可能性があるとすれば、全てを知った上でも許せなければ心底許した事にはならないと思った。
「青山に会えば、奴は自慢するように全て話してくれるだろう。しかし俺は千里の口から聞きたい」
結局自分からは話せなかったが、それでも私の質問に答える形で話し出す。
初めて青山に抱かれた日、可也抵抗はしたがそれは最初だけで、すぐに感じてしまって青山の背中に腕を回してしまった事。
青山にその時の様子を聞かされて、勝手な理由をつけてまた抱かれたが、本当はまた味わってみたいという気が少しはあった事。
青山は異常に性欲が強く、毎日のように誘われるばかりか、昼間抱かれた日でも夜も誘われた事があった事。
得意先などに連れて行かれ、異動するから帰る車の中でも運転席の青山の性器を握らされたり、逆に青山に触られたりしていた事など妻は素直に答えたが、セックスの内容については話したがらない。
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