悪い夫 4/4(水) 00:13:37 No.20070404001337
それから3日もすると、妻が頻繁にメールしている事を指摘して、やめさせてしまった事を後悔し始めていました。
それは初めの頃のように、妻が他の男に夢中になる事への興奮を得ようと言うものではなくて、妻の過去や本心を知りたいという思いからです。
この時の私は妻の過去を覗く事への罪悪感よりも、妻の全てを知りたい感情が勝っていました。
自分に無理をしているだけで、私よりも今でも彼の事を好きなのではないのかという嫉妬が勝っていました。
それで私はメールを送り続けたのですが、流石に妻からの返事は返って来ません。
しかし二週間ほど根気良く送り続けると、妻も寂しさを感じていたのか誘惑に負けて徐々に返事を返してくるようになり、一ヶ月が過ぎた頃にはすっかり元の関係に戻ってしまいます。
これは私の望みどおりの結果なのですが、一方では妻もメールに嵌って抜け出せず、その後相手と浮気に発展するような女と何ら代わらないと思えて複雑な気持ちになります。
私は卑劣な事をやりながら自分の首を締めていきましたが、怖いもの見たさの様な感覚から抜け出せません。
私はたまに昔の彼女の事を思い出すことがあります。
奈美さんは、別れた彼の事を思い出しませんか?
主人には悪いけれど、たまに思い出す事はあるわ。
実は正直に言うと、北村さんとメールを続けているのも彼の事があったからかも知れない。
北村さんの目が彼に凄く似ているの。
北村さんが家に来られた時、目を見た瞬間彼を思いだしてしまったぐらい。
そして話してみたら、考え方や真面目なところも凄く似ていて。
私が誰か連れてくると、いつもならお酒やおつまみを出して少し話してから自分の部屋に行ってしまう妻が、北村が来た時はお酒に付き合っていつまでも話していた訳が分かりました。
今も妻は、北村に元恋人の影を重ねているのです。
それで北村には恥ずかしがりもせずに、彼との事を何でも告白出切るのでしょう。
まるで当時の気持ちを、別れた彼に懺悔しているように。
その彼とはもう交流はないの?
会った事もないわ。
それはもう過去の事で、私は夫を愛しているから。
何だかご主人にも彼にも妬けるな。
私は彼の代わりだったと言う訳か。
その彼の住んでいる所は知っているのでしょ?
会いたいと思ったことは無い?
彼の代りだなんて思っていないわ。
そうね。最初は北村さんに彼を重ねてしまっていたかも知れない。
でも今は北村さんは北村さんで彼は彼よ。
それと彼の家は開業医だったから、今頃は跡を継いでいると思うから調べれば分かると思うけれど、今の私は主人一筋だからその気は無いわ。
もう終わった事よ。
終わった事だと言いながら、妻のメールはどこか悲しそうでした。
私一筋だと言うのは北村に軽い女では無い事を主張したいだけで、それが本当ならこのようなメールには嵌らないと思います。
私が妻の封印していた想いを、このような事をして掘り返してしまったのかも知れません。
私は自分の仕組んだ事で、自分をどんどん辛くしていきます。
ご主人が一番なのは分かったけれど二番は?
私だったら嬉しいけれど、やはり彼かな?
またその話?
もうやめましょう。
主人が一番で二番はいない。
ただ彼とは沢山の思い出が有るから。
私は話の合間に、必ず彼の事を聞くようになっていました。
そして妻は昔の事だから忘れたと言いながらも、まるで過去の事を思い出しながら日記でも書くように、聞かれれば色々な思い出を語ってくれます。
そして次第にそれは彼からの愛に応えられなかった事への、懺悔のようなものになっていました。
彼は凄く愛してくれた。
全てを賭けて私を愛してくれた。
でも若かったから私はどこかで、代々医師の家系で家柄も違う彼とは結婚までは無理だと思ってしまっていたの。
だからこれ以上彼を愛してしまわない内に、私から身を引こうと。
ようやくこの時になって、これ以上彼の事を聞き出す事は、彼を愛していた頃の妻に戻してしまうような気がして怖くなり、それ以後彼の話題を避けるようにしました。
しかし時既に遅く、妻はこの頃から私の夜の誘いを断る事が多くなり、一人考え込んでしまっている事も増えていきます。
「今夜はいいだろ?」
「ごめんなさい。何だか体調が良くなくて」
「ずっとご無沙汰だぞ。一度医者にでも診て貰え!」
このような妻にしてしまったのは私で自業自得だと分かっていても、妻が彼の事ばかり考えているのではないかと思うとやり切れません。
妻の心が離れてしまうような気がして、今までよりも妻を求めてしまいます。
私も昔付き合っていた彼女の事を思い出すことはあります。
しかし勝手だと分かっていても、妻には思い出して欲しくないのです。
思い出させてしまったのは私なのに、その様な妻は嫌なのです。
やはり架空の北村に恋する妻には興奮出来ても、実在の彼に恋する妻に対しては興奮するどころではありませんでした。
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