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北原夏美 四十路 初裏無修正

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悪い夫 4/5(木) 22:16:37 No.20070405221637

疑いながらもまさかとは思っていましたが、そこには別れた彼と会っている事が分かる内容や、彼や妻の想いが沢山書き込まれていました。
彼の名前は淳と言い、彼は妻との別れを望んでいなかった事。
一方的に妻が離れ、妻はきちんと別れの訳を言っていなかった事を未だに気にしていた事。
そして北村にキャンセルされた時、彼の事が気になり出してから調べてあった、彼の医院に電話してしまった事などが分かりました。
そしてその引き金になったのは、妻に断られた時に私が何気なく言った「一度医者にでも診てもらえ」でした。
私からのメールで昔の事を思い出した妻は彼との思い出で頭が一杯になり、これではいけないと思っても彼の事が頭から離れないようになり、悪いと思いながらも私に抱かれる気にならず、誘いを断り続けていました。
そのような時に私から「医者に行け」と言われ“医者に診て貰うイコール医者の彼に会って謝る”が頭に浮かんび、今の状態から抜け出すには、彼に会って過去を清算する事だと思い込んでしまいます。
しかし隠れて元恋人に会う事には抵抗があり、その様な事は出来ないと思っていたところ、家には帰れない時間が出来てしまいました。
妻が隠れて別れた彼に会っていた事に、私は今までに経験した事がないほどの衝撃を受けましたが、これも全て自業自得なのです。
唯一の救いは会って話をしているだけで、メールを読む限りでは身体の関係はまだ無い事なのですが、今後その様な関係に発展してしまいそうな、それ以上の関係になってしまいそうな恐ろしい言葉を見付けてしまいます。

奈美に負担を掛けるといけないので、会っている時には言えなかったけれど、私が未だに独身でいるのは、奈美の事が忘れられないからかも知れない。
奈美が私の前から去ってしまってから、今まで数人の女性とお付き合いしたけれど、どうしても奈美と比べてしまう。
どうしても奈美の姿を追ってしまう。

このメールが来てから、妻は彼と頻繁に会うようになります。
このメールが来るまでは、最初に電話して会って欲しいと言ったのは妻だったのですが、以後彼からまた会いたいと矢のような催促のメールが続いても、妻は断り続けていました。

私は一目会って、あの時の心情を聞いてもらって謝りたかっただけなの。

それは卑怯だ。
どうにか立ち直っていた私に、また奈美を思い出させておいて。

ごめんなさい。
でも私には主人がいるから。

それならどうして今になって電話してきた。
どうして会って欲しいと言ってきた。

このように妻は断り続けていましたが、妻の事が忘れられなくて未だに独身を通しているというメールが来てから、妻は断れなくなってしまいます。
妻は彼の人生に対して責任を感じて、彼に誘われるまま会い続けているのでしょう。
その証拠に次のような言葉が書かれていました。

私だけが幸せになってしまってごめんなさい。

妻も彼が嫌いになって別れた訳ではありません。
仮に今は私の事が好きだったとしても、彼を嫌いなわけでは無い。
妻を慕い続ける独身の彼と会い続けていれば、その内妻はきっと彼を。
今の内に妻に全てを懺悔して、彼と会うのをやめてもらうのが一番の方法だと思います。
しかし私は駄目な男です。
そのような事を知られれば、尚更妻の気持ちは彼に向かってしまうような気がして怖くて言えません。
他人に成り済まして妻の過去を探り、今では携帯まで盗み見ている男。
本来真面目な妻が、このような私に愛想をつかす事は目に見えています。
自分で自分が情けなくなりますが、この期に及んでも有利に立つ方法で、この事を解決しようと考えていました。
そしてまさか私が携帯を見るような姑息な男では無いと信じている妻は、ロックもせずに内容を消す事もなかったので、私は妻が次の金曜の夜にホテルでのディナーに誘われている事を知ってしまいます。
「今日は一度帰って敦の食事の用意をしてから、典子と食事に出掛けます。申し訳ないのですが、あなたは外で済ませて貰えますか?典子ったら、急に何の相談かしら」
この頃には妻は嘘を吐く事にも慣れてしまったのか、私の目を見ながら堂々と話しました。
妻と彼が待ち合わせたのは7時30分だったので、2時間ぐらいで終わるだろうと思った私は、仕事を終えると食事をしてから9時にはホテルの前まで行って待ちましたが、一時間待っても妻は出て来ません。
まさかホテルに部屋がとってあって。
不安になった私は居ても立ってもいられずに、レストランの中を探そうとホテルに向かって歩き出した時、ようやく二人は出てきたのですが、妻は彼としっかり腕を組んでいました。
私は咄嗟に偶然通り掛った振りをして、そのまま止まらずに二人に向かって歩いてゆき、妻達の前まで行くと驚いた顔をして立ち止まると、何も言わずにそのまま通り過ぎます。
「あなた、待って」
私は背中に妻の声を聞きながら、振り向きもせずに早足で駅に急ぎます。
すると妻は慌ててタクシーで帰って来たのか、既に家で待っていました。
「あれは違うの。彼は大学時代の友人で、典子と別れてから偶然あって、懐かしくてホテルのロビーでお茶を・・・・・・・」
私の計画では、妻を責めるつもりはありませんでした。
私が卑劣な行為をしていた事は言えないと思いましたが、自業自得なので妻に今後彼と会わないで欲しいとお願いするつもりでいたのです。
しかし妻が彼の腕を抱き締めるように、しっかりと腕を組んでいた事がその思いを拒みます。
「女友達と会うと言って出掛けたおまえが、男と腕を組んでホテルから出て来た。それが全てだ」
妻は急に震え出し、立っていられないのかテーブルに両手をつきました。
「これで俺を拒んでいた訳も分かった」
私がそう言い残して寝室に行くと、一時間ほどして入って来た妻は必死に言い訳をしていましたが、私は布団を被って何も言いませんでした。
精神的に疲れてしまったのかこのような時でも眠れるもので、朝になって一睡も出来なかった妻に起こされます。
「あなた・・・・朝食の用意が・・・・・」
私は何も話さずに顔を洗うとコンビニに行き、妻の作ってくれた朝食を生ゴミの容器に放り込んでから、これ見よがしに買ってきたパンをかじりました。
「お父さん、どうかしたの?」
「今から部活でしょ?あなたは心配しなくてもいいから行って来なさい」
息子が出掛けると、妻は床に正座して頭を下げます。
「彼とは何もありません。今後このような事は絶対にしませんから許して下さい」
「奈美は一緒にお茶した男とは腕を組む事にしているのか?それならば携帯を見せろ。どうした!見せられないだろ!」
私は拗ねた子供のようでした。
私も悪かったと妻に謝って、仲直りしようと何度も思いましたが出来ません。
私のやって来た悪行で、この後もっと酷い事態になってしまうとこの時分かっていれば謝ったのですが、この時の私は妻を責めることに不思議な快感まで覚えていたのです。

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