悪い夫 4/11(水) 05:35:07 No.20070411053507
私は妻の挑発に乗らないように我慢していましたが、終に我慢の限界を超えてしまうメールが届きます。
明後日からの連休に、淳に温泉に誘われました。
温泉に浸かって美味しい物を食べて、今後の事をゆったりした気分で考えたらどうかと。
明日仕事を終えてから行くので二泊になってしまいますが、敦の事を宜しくお願いします。
淳は仕事で疲れているようだけれど、私の事を最優先に考えてくれる。
妻が言うように私はすぐにそちらに考えがいってしまい、温泉の家族風呂でじゃれ合う二人の姿が浮かびます。
いくら私が悪くても、ここまで来るとどちらが悪いかの話では無く、私は自棄になって離婚を考えましたが、このまますんなりと離婚してやることは悔しくて出来ません。
何より離婚しかないのかと思いながらも、まだ完全には妻を諦め切れないでいました。
今まで殴り合いなどした事がない私ですが、彼を殴らなければ気が済みません。
暴力などでは何も解決しない。
逆に私が不利になる。
そのような事は十分わかっていても、一矢報いなければおかしくなりそうでした。
本来この怒りは妻にぶつけるべきなのでしょうが、暴力とは無縁だった私が彼を殴る事が、妻にとっては自分が殴られるよりもショックだろうという思いもあります。
ですからこれは妻の目の前でやらなければ意味は無く、二人が会った時に殴ろうと、妻を尾行しようと思いましたが、それよりも一度しか会っていない彼を尾行する方が気付かれる可能性も少ないだろうと、定時よりも少し早く会社を抜け出して、予め住所を調べてあった岩本クリニックを探すとそこが見える位置に車を止めて、じっと彼が出て来るのを待ちました。
するとその時妻の車が駐車場に入って行き、尾行するまでも無くその場面は早く来てしまって緊張が増し、口の中がカラカラになって唾液も出ません。
私は一度大きく深呼吸をしてから車を降りましたが、情けない事に足まで震えています。
しかし中から彼が出てくると妻は千切れるほど手を振り、彼が駆け寄った妻の背中を押すようにして仲良く並んで中に入って行く姿を見た時、怒りから私の足の震えは治まって、駐車場まで走って行って出て来るのを待ちましたが、いくら待っても二人は出て来ません。
今から旅行に行こうと言うのに、旅館まで我慢出来ずに。
私はその様な事を考えながら中を覗こうと、入り口まで行くと意外にも自動ドアの電源は切られておらずに開いてしまいます。
更に足を進めると次の自動ドアも開き、真っ暗な待合室のソファーには二つの人影がありました。
「来てくれたの」
「どう言う意味だ!」
妻は彼に頭を下げると、私の腕を掴んで外に連れ出します。
「帰りましょう」
妻はそれ以上何も言わず、一人車に乗り込むと駐車場を出たので、私も慌てて車に戻って妻の後を追いました。
すると妻は途中でスーパーに寄り、家に戻ると何事も無かったかのように夕食の支度を始めます。
私はこの時になって、初めて妻が不自然だった事に気付きました。
妻は彼の事がずっと気になっていた。
私の悪戯メールでその気持ちは高まり、私のしてきた行為を知った時に一気に彼に気持ちが傾いた。
私はそう思っていましたが、よくよく考えれば私に分かるように彼と会うのは私に対する当てつけだったとしても、彼と会っていた内容を一々メールで送ってきていたのは当てつけにしては行き過ぎです。
彼が好きなら、尚更彼との事を私に知られたくないでしょう。
妻の性格からして、二人の秘密にしておきたいはずです。
「奈美・・・・・おまえ・・・・」
「彼に協力してもらって・・・・・・」
その夜私が妻に覆い被さると、妻は私を押し退けました。
「待って。そこまでは気持ちの整理がついていないの。今日は手を繋いで寝たい」
妻は隣に寝た私と手を繋ぐと、今までの自分の気持ちを話し出しました。
「メールの相手が北村さんだと思った時、こんな事をしていては駄目だと思っていてもやめられなかった。浮気するような奥さんは、こうやって浮気に嵌っていくのかと思いながらも、私はそのような人達とは違うと自分に言い訳して」
その後別れた彼の話題が増えて、北村が彼に似ていた事に気付くと彼と北村が重なって、尚更想いは深くなっていったと言います。
「昔に戻ったようで楽しかった。あなたに悪いと思いながら、やめる事が出来なかった。北村さんに会えると思った時も、初恋の時のようにドキドキしていたの。でも可笑しな関係にはならない自信があった。北村さんとは話をしたかっただけ。彼には昔の事を謝りたかっただけ。それだけは信じて」
そして妻は北村と会ってしまいます。
「あなたがこのような事をしていたと知って、私は凄く減滅したわ。一瞬、本当に別れたいと思った。でも今考えると、昔彼の性欲処理をしていた事を知られたのが大きかったような気がする。そのような事をしていた女だと、あなたには知られたくなかった」
妻はその事を彼にメールすると、彼は自分の事のように一緒に怒ってくれ、今回のような事を持ち掛けてきました。
「あのまま許すなんて出来なかった。だから彼の計画に乗って」
その時私は薄暗い待合室に入っていった時の、私を睨む彼の鋭い眼差しを思い出していました。
「彼はただ協力してくれただけか?未だに奈美の事を・・・・」
妻は一瞬言葉に詰まります。
「本当に別れてしまった方が良いぞと言われた事もあります。別れて俺の所に来いと言われた事も。でも私が主人を愛しているからと言ったら分かってくれた」
「じゃあ誘われた事もあるのか?つまり・・その・・ホテルとかに・・・・・」
「何度か誘われました。でもそれは皆冗談。私が主人を愛していると言ってからは、彼の方から今後は友達として付き合おうと言ってくれたぐらいだから」
妻は話しながら眠ってしまいましたが、私は妻と彼がホテルでのディナーを終えて出てきた時の光景を思い出していました。
あの時彼の腕にしっかりと?まっていた妻は、間違いなく女の顔をしていました。
昔を思い出して少しふざけてしまっただけかも知れませんが、あの時の妻は母の顔でも妻の顔でも無く、ましてや普段の真面目な教師の顔ではなくて、愛しい人といる時の女の顔でした。
それにあの時点では、私が北村に成り済ましていた事はばれていなかったので、私に対する当てつけでしていた訳でもありません。
納得のいかない事もありましたが今回の事は私に非があり、全て終わった事なので、これで元の夫婦に戻れると思って私も眠りにつきました。
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