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北原夏美 四十路 初裏無修正

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水曜日

夕方、妻のパート先の会社に向かい尾田が退社してくるのを待った、妻から聞いた退社時刻を少し過ぎてから尾田が現れた、尾田は中肉中背で背は私よりも低く170cm前後だろうか、近づく私に尾田はまったく気付いていなかった。

私「アナタが尾田さんですか?」

私を不審そうに見ながら尾田がボソッと答える

尾田「そうだけど、アンタは?」

私「理香の旦那です、なぜ私が来たかわかりますか?」

尾田「・・・」

私「ここでは話もし辛いので、移動しましょうか」

会社近くの喫茶店に入る

私「先程も伺いましたがなぜ私が来たかおわかりですね?」

尾田「・・・」

私「黙っていても終わりませんよ、単刀直入に聞きます、アナタは理香と関係を持っていましたね」

尾田「・・・」

私「黙るしかないですよね、脅してたんですから」

尾田「おっ脅してなんかいない、同意の元に関係を持ったんだ」

私「なら関係があった事は認めるんですね?」

尾田「・・・あぁ認めるさ、俺達は結婚するんだからな」

私はどうしても確認したい事があった、それは妻が本当に脅されていたのかどうか、そこで一つの賭けに出ることにした。私は少し驚いた口調で喋った

私「理香もそう言っていたのですか?もしそうならなぜアナタと結婚したいと?」

尾田の表情が一瞬緩んだ

尾田「あぁそうさ理香も俺と結婚したいと言っていたよ、アンタと一緒に居てもアンタは種無しだから子供が産めないからってな、だから俺達はいつも中出しでやってたんだよ、子供をつくれば嫌でもアンタとは別れられると思ってな」

しかしこの男はよくもここまで強気に出れるものだと、なぜか冷静に思う私がいた

私「なぜ私が種無しだと?理香がそう言っていたのですか?」

尾田「いや聞いたのは理香の知り合いの真理子からだよ」

「真理子」という人物は妻に今のパート先を紹介した妻の友達で真理子自身も社員として働いています、私の知る限り妻の良い友達ですが、少し口が軽いのがたまに傷と妻も笑いながら以前言っていました。しかし今回はこの真理子のお陰で妻が本当に尾田に脅されていたと確信を持つ事が出来ました。

私「そうですか、わかりました今度、妻を連れて3人で話し合いたいのですが、時間を作ってもらえますか」

尾田「あぁいいだろ、今週の日曜はどうだ」

私「では今日はこれでお引取り下さって結構です」

なぜ私がこんな低姿勢なんだろうか、いや今はそんな事はどうでもいい妻が本当に脅されていたと確信を持てたのだから、
尾田が店を出た事を確認し、隠し持っていたICレコーダーを取り出すとしっかり録音出来たかを確かめ、私も店を出た。

なぜ私が「妻は脅されていて関係を持った」と確信を持てたのかと言うと、それは私が「種無しではない」からです。ではなぜ私が種無し扱いなのか、その理由は妻にあります。実は私達夫婦は子供を望んでいました、しかしなかなか子宝に恵まれず二人で病院に行った結果、妻が不妊であると判明したのです。本来ならば隠す必要はあまりないのかもしれませんが妻は自分の体が子供を産めないと知って精神的に相当参っていました、そこへ私達両親の「子供はまだか?」という声が聞こえ出し、このままでは本当に妻が精神的におかしくなると判断し「私が種無しだから子供が出来ない」という事にしました。両親も当初は驚いていましたが、私達夫婦にはそれぞれ兄弟がいて既に子供もいます、つまり私達の両親にとっては孫がいるので、それ以上はあまり言ってこなくなりなんとか乗り切り事が出来ました。そしてこの話をした人物がもう一人います、それが真理子でした、何故真理子にこんな話をしたかと言うとそれは両親の時と同じ理由です。今思えばこの頃から私達夫婦は少しずつすれ違いだしたのかもしれません、いえ私の方が勝手に妻と距離を取り妻を避けていたのです、そんな結果今回のような問題が起きたのでしょ、そんな事を考えながら私は帰路に着きました。

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