投稿者:バーバラ 投稿日:2005/07/19(Tue) 19:22
わたしが幼稚園へ娘を迎えに行き、先生の話から、妻への疑惑を深めたその夜のことです。
ちくちくと刺すような不安と、爆発しそうな憤りを抱えながらも、わたしは妻を問い詰めることは出来ませんでした。何も喋る気になれず、鬱々とした顔で風呂に入り、食事をとりました。妻はもともと口数の少ない女ですが、その日はわたしの不機嫌に気づいていたためか、ことさら無口でした。
ところが、寝る前になって、妻が突然、
「明日は昼からちょっと外へ出てもいいでしょうか」
と言いました。明日は水曜なので、店番はわたしと妻で務める日です。
「どうして? どこかへ行くのか?」
「古いお友達と会おうかと・・・」
なんとなく歯切れの悪い妻の口調です。妻を見つめるわたしの顔は筋肉が強張ったようでした。
(あいつに会いに行くんじゃないのか・・・!)
わたしは思わずそう叫びだしてしまうところでした。
しかし、そんな胸中のおもいを押し殺して、
「いいよ。店番はおれがするから、ゆっくりしておいで」
そう言いました。
そのとき、わたしはひとつの決意をしていました。
「幼稚園のお迎えの時刻までには帰ってきます」
そう行って妻が店を出たのは昼の一時をまわった時刻のことでした。わたしは普段と変わらない様子で妻を見送り、妻の姿が見えなくなると、すぐに店を閉めました。
そしてわたしは妻のあとを、見られないように慎重につけていきました。
妻はわたしに行くと言っていた駅前とはまるで違う方向へ歩いていきます。
十五分ほど歩いた後、妻はある古ぼけたアパートに入っていきました。
前夜、わたしは勇次の履歴書を取り出して彼の現住所をメモして置いたのですが、確認するまでもなく、そこは勇次の住むアパートでした。
コメント
コメントの投稿
トラックバック
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)