投稿者:バーバラ 投稿日:2005/07/20(Wed) 14:43
妻は語ります。
「そんなふうに日を過ごしているうちに、わたしの心は次第に勇次くんの誘惑にはまっていきました。あなたを、娘を裏切るまいとおもっているのに、店で勇次くんと一緒に過ごし、彼に愛の言葉を告げられているうちに、わたしは段々と、まるで自分が勇次くんと恋をしているような・・そんな錯覚に陥ってしまったのです」
「それは錯覚なのか? 寛子はそのとき、本当に勇次の奴が好きになっていたんじゃないのか?」
「そんなこと・・・」
妻は切なそうな表情でわたしを見つめ、首を振りました。
「まあいい・・・それで?」
「その週の金曜の勤務が終わって勇次くんは帰りがけに、<明日の昼、うちに来て>と囁いたのです。わたしは拒絶しましたが、勇次くんは<絶対に来てよ>と重ねて言って、そのまま帰っていきました。わたしはその夜、また悶々と考えて・・・悩んで・・・」
「勇次の家に行ったんだな」
「・・・そうです・・・本当にごめんなさい・・・」
妻の瞳は涙できらきらとひかっていました。
「・・・それで?」
「あなたに嘘をついて、勇次くんの家に行って・・・その日のうちに彼に抱かれました・・・それからは・・ずるずると関係を続けることになってしまって・・・・ごめんなさい」
「いちいち謝るんじゃない。謝るくらいならこんなこと、はじめからするな」
「・・すみません・・・謝るしかできなくて・・すみません・・」
「それはもういいと言ってるだろ!」
嫉妬でおかしくなろそうなわたしは、自棄になって妻に乱暴な口をきいてしまいます。
「それで奴とのセックスはどうだった? おれとよりも気持ちよかったのか?」
「そんなこと・・・」
妻は必死な顔で否定しますが、それはわたしの気分を少しも和らげませんでした。
「おれはお前と勇次のセックスを見ていたんだ・・驚いたよ。おれは自分しか知らないからな、世の中にあんなに激しいセックスがあるのかとおもった。これじゃあ妻を寝取られても仕方ないとな。そうおもわせるほど、あのときのお前の乱れ具合は凄かった」
「ちがいます・・・」
「何がちがうと言うんだ?」
わたしはどんどんサディスティックな気持ちになっていきました。
しばらくお互いに沈黙したあと、うっすらと涙の筋を頬につけた妻がぽつり、ぽつりと語り始めました。
「・・・彼に抱かれたときは・・わたしも驚いたんです・・・わたしがそれまで経験したことのないようなセックスで・・・荒々しくて・・・獣がするような感じで・・・。彼のは・・・大きくて、わたしにはきついんです・・・きついのに激しくされて・・そうしているとわたしもいつの間にかおかしくなって・・・声を出してしまうんです・・・」
普段の妻なら絶対に言わないような話でした。妻もここまできたなら、何もかも吐き出して楽になりたい、ということなのでしょうか。
「でも・・終わったあとは・・・いつも後ろめたくて・・・あなたや娘のことばかり考えて・・・本当に自分がいやになります・・・でもあなたとのときは、心の底から満たされる感じなんです、本当です」
それならなんで勇次に抱かれ続けた、とわたしは叫びたくなるのをこらえました。
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