投稿者:バーバラ 投稿日:2005/07/22(Fri) 02:18
その夜のことです。
わたしは妻を夫婦の寝室へ呼びました。触れないほうがいい、とおもいながらも、わたしは勇次の言葉が気になってたまらず、妻にことの真偽を確かめたかったのです。
「きょう、勇次の家へ行ってきた」
妻は瞳をおおきく見開きました。
「あいつに自分のしたことをおもいしらせてやりたかったんだ・・・情けないことに、結局、わたしが一方的にやっつけられただけだったんだが」
「その傷・・・転んで出来たって・・・」
「違うんだ」
わたしはぐっと腹に力を入れました。これからの話は妻を傷つけることになるとわかっていました。しかし、わたしにはそれは乗り越えなければならない壁のようにおもえていたのです。
「勇次は好き放題に言っていたぞ・・・お前がおれとのセックスは不満だといつもこぼしていたと・・・」
「そんな!」
「いつも失神するまで求めてきて大変だったとか・・・縛られてされるのが好きだとか・・・」
「・・・・・」
「そうなのか?」
妻は強いショックを受けたようで、しばらく呆然となっていました。しかし、いつも泣き虫な妻がそのときは泣きませんでした。昼間の決意をおもいだして、必死に耐えていたのでしょうか。
うなだれていた妻がすっと顔をあげて、わたしを見つめました。
「あなたとの・・・セックスに不満なんかありません・・・もちろん、勇次くんにそう言ったこともありません・・・勇次くんにわたしから求めたとか・・・縛られたりとかは・・・」
妻はさすがにくちごもりました。わたしが黙って次の言葉を待っていると、妻はまた少しうつむいて言葉を続けました。
「そういうことも・・・ありました・・・ごめんなさい」
「そうか・・・奴とのセックスでは・・・そうか」
「ごめんなさい・・・」
「謝らなくてもいいから、あったことをすべて話してほしい。そうでないと、おれは二度とお前を抱けそうにない」
「・・・勇次くんは・・・道具とか使うのも好きで・・・バイブレーターとか・・・そういうものを使われて・・・胸とか・・・あそことかを・・・ずっとされていると・・・・おかしくなるんです・・・自分が自分でなくなるみたい・・・もっときもちよくなれるなら、なんでもしたい・・そんなふうにおもえてきて・・・自分から彼に求めてしまうことも・・・ありました・・・・彼はわたしに恥ずかしい言葉を言わせるのが好きで・・・・わたしが淫らな・・・恥ずかしい言葉でおねだりすればするほど・・・激しく・・・いかせてくれました・・・」
細く、途切れがちの言葉で、妻はそう告白しました。自分の不倫の情交をわたしに語るのは辛いことでしょうが、それはわたしにとっても胸を焼き焦がすような地獄の言葉です。
「縛られるのも・・・最初は怖くて・・・痛くて・・・厭でした・・・でもそのうちに・・・縛られて抵抗できない状態で・・・身体を好き勝手に弄ばれることが・・・快感になってきて・・・・恥ずかしいほど乱れてしまうようになりました・・・・彼は『寛子はマゾ女だな』とよく言っていました・・本当にそうなのかもしれません・・・恥ずかしい・・・・わたしはおかしいんです・・・淫乱なんです」
「そんなことはない」
わたしはそう言って妻を慰めましたが、その言葉の空虚さは自分が一番よく分かっていました。
こらえきれず、また顔を両手でおさえてすすり泣きだした妻を、わたしはそっと抱きしめました。
「よく話してくれた・・・もう寝よう・・・・明日からはまた夫婦でがんばっていこう」
その夜。もちろんわたしは一睡も出来ませんでした。
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