投稿者:バーバラ 投稿日:2005/07/27(Wed) 23:07
「奥さんがあんたと別れたいと言ってる」
勇次は単刀直入にそう切り出しました。
わたしは沈黙しました。しばらくして、
「寛子は」
かすれた声で言いました。その声は他人のもののように、そのときのわたしには聞こえました。
「やはりお前といるのか・・・」
「いるよ。ずっと一緒に暮らしてる」
勇次は店の中の、高い棚の上にある品物を取る台の上に、どっかりと腰掛けました。
「奥さんがいきなり駆け込んできたときはびびったよ。ベロベロに酔っ払ってて、もう泣くわ泣くわ。ひとしきり泣くと、今度はしがみついてきてさ。それからはもうぐちゃぐちゃ。あんまり激しいんで、おれもつられてそ~と~燃えたけどね・・・しばらくしたら、酔いが回りすぎたらしくて、トイレで一回吐いてきて、でもそれからまた、もう蒼い顔になってるってのに、おれを放さないんだよ。次の日の昼もずっとやってたね。あんなに凄いセックスはしたことないよ」
へらへらと勇次はわらいました。
「凄いよ。凄い女だね、あんたの奥さん」
「寛子に会わせろ・・・会わせてくれ」
わたしは勇次の顔を暗い目で見つめました。
「離婚するかどうかは、寛子と会ってから決める。とにかく一度会わせろ・・・それから二度とそんな調子でくだらないことをほざくな・・・」
わたしの狂気がかったような表情と声に、勇次は少しの間、ぎょっとしたようにわたしを見つめていましたが、やがて言いました。
「いいよ。一度会って話しな。でも奥さんがあんたのとこに戻ることは絶対にないぜ」
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