投稿者:拓也 投稿日:2003/03/16(Sun) 07:35
妻が勤めだして、1ヶ月ほど経った金曜日の6時頃、妻から電話が有り。
「あなた。・・ごめんなさい。・・今日・・残業する事になってしまって・・・」
「残業はしない約束だろ。」
「・・急に1人辞めてしまって・・・私だけ帰るとは言えなくて。・・ごめんなさい。」
「百合子の立場もあるから仕方ないか・・・。帰りは何時になるんだ。」
「・・ごめんなさい。・・・8時には帰れると思います。・・子供達の食事お願いしま
す。・・・・・・ごめんなさい。」
この時の妻の沈んだ声と、「ごめんなさい。」という言葉がやけに多いのが気にはなり
ましたが、43歳の妻が1日残業するぐらいで、何を心配しているのだと思い直し、
電話を切りました。
しかし、次の金曜日も残業、その次の金曜日も残業と3週も続き、帰りも8時が9時
になり、10時になりと段々遅くなり、また妻がほとんど笑顔を見せなくなったので
最初は疲れているからだと思っていましたが、流石に何かあると思い、次の金曜日の
8時頃に会社へ行ってみると、工場は真っ暗でしたが事務所には電気が点いていて、
人影も何人か見え、取り越し苦労だったのかと帰ろうとした時、駐車場に妻の車が無
い事に気付いて、妻の携帯に電話しましたが、電源が切られていて繋がりません。
今思えば、そのまま張り込んで決着を付けていれば、私にとって一番屈辱的な場所で
の、今でも頭から離れない妻の姿を見なくて済んだのですが、その時は気が動転して、
どうしたら良いのか分からずに、急いで家へ戻って妻の帰りを待ちました。
11時に帰って来た妻を寝室まで連れて行き。
「今まで何処に行っていたんだ。」
「エッ。・・・会社にいました。」
「俺は今日8時頃に、お前の会社に行ったんだ。そうしたらお前の車は無いし、携帯
も繋がらなかった。おまえは何処で何をしていたんだ。」
しばらく妻は無言でしたが、目に涙を溜めて。
「コンビニにみんなの夕食を買いに行っていました。・・・携帯も仕事の時は切って
いてそのまま忘れていました。・・ごめんなさい。」
妻が精一杯嘘を吐いているのは、様子から分かりましたので、その後色々問い詰めま
したが、何を訊いてもただ謝るだけで、何も訊き出せません。
その夜はなかなか寝付けず。
『もしも浮気では無かったら、俺は百合子に何て事を言ってしまったんだ。』
『百合子に限って浮気なんて有り得ない。百合子は今でも私を愛してくれている。』
『何か訳が有るに違いない。・・・しかし私に言えない訳って何だ。』
『そう言えば、残業の日は帰ると直ぐ風呂に入っている・・・。夜も疲れたからと言
って・・・・。』
『もしも浮気だとしたら相手は誰だ。・・・加藤。・・・・いや、それは有り得ない。』
3日後、私の考えていた最悪の結果だった事を、加藤からの電話で知りました。
「ご主人。この度は申し訳御座いませんでした。残業はさせない約束だったのに、夜
遅くまでさせてしまって。おまけに弁当まで買いに行かせて。しばらく残業をお願い
したいのですが、出来る限り早く帰って頂きますので、宜しくお願いします。」
「分かりました。」
一言だけ返事をして、こちらから携帯を切りました。
『妻は嘘を吐いている。という事は加藤も嘘を吐いている。』
『加藤は弁当の言い訳まで知っていて、私の携帯番号まで知っている。間違いない。
加藤と妻は親しい関係にある。』
『妻と加藤だけの秘密・・・。不倫だ。それしかない。』
『あの妻が私を裏切った。それも相手は信用していた加藤。』
私は目の前が真っ暗になり、その場に座り込みましたが、暫くして、妻と付き合う前
の、荒れていた頃の私が囁きました。
『悲しんでいる場合か。復讐だ。ぶっ殺せ。』
今の私が囁きます。
『いや。今のお前に疑いだけでやれるのか。・・・証拠だ。言い逃れ出来ない証拠を
掴むんだ。』
直ぐにでも飛んで行って殴り倒したい感情を抑え、まずは証拠を押さえる事にしまし
たが、今回の事で警戒して、なかなか尻尾を出さない可能性も有ると思い、こちらか
ら罠を仕掛ける事にしました。
丁度今週の金、土、日曜日と、息子は部活の遠征、娘は友達と旅行。
子供達には知られたく無いのと、私の我慢も長く続きそうも無かったので、この日し
か無いと思い。
「百合子、この間はごめん。仕事の事でイライラしていて、変な疑いをかけて。」
「いいえ。私こそ心配をかけてごめんなさい。」
後ろめたい事が有る為、妻は俯いたままです。
「急で悪いが、今週の金曜からいつもの釣り仲間と、2泊で釣りに行って来る。」
「気を付けてね。」
「ああ、仕事を忘れて楽しんで来る。」
しかし、これだけでは完全では有りません。
どうしても、妻から進んで浮気しているとは思えなかったからです。
何らかの理由で加藤に脅されて関係を持っているとすれば、私が留守にする事を加藤
に教えない可能性もあると思い、次の日加藤に電話して、昨日電話を貰った時の態度
を詫び、子供の話と趣味の話に持ち込み、今週末は妻以外誰もいない事を、それと無
く告げました。
その日まで、妻を問い正したい、加藤を殴り殺したいという気持ちを抑え、悟られな
い様に平静を装うのが、気が狂いそうな程苦しかったです。
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