投稿者:拓也 投稿日:2003/03/16(Sun) 07:49
「身体の関係を持ちたいと思った理由は、本当にそれだけか。」
「・・・・・・。」
「加藤。ここまで来たら正直に全て話せ。死にたくないだろ。」
「・・・百合子さんがあの時どんな乱れ方をするのか、どんな声を出すのか知りたか
ったです。それと・・・妻には出来ない色々な事もしてみたかった。」
「ビデオはどうして毎回撮った。脅すだけならそんなに要らないだろう。」
「もしもの時に脅す目的も有りましたが。・・・本当の目的は、百合子さんがどの様
に変わって行くのか・・記録に撮ろうと・・。」
この後加藤は私の質問に対し、何か吹っ切れた様に詳しく雄弁に答え出したので、自
慢している様にも聞こえて怒りを覚えましたが、本当の事を訊き出すには我慢するし
か有りません。
「加藤。どうして金曜日ばかりで他の日は会わなかった。」
「妻の母親が1人暮らしをしていたので、この春から金曜日には、妻は昼過ぎに、子
供達は学校が終わると直接義母の家へ行って、泊まってあげる事にしていました。私
も金曜日は午後から得意先を回って、ほとんど直接家に帰っていたので、会社にも家
族にも怪しまれずに自由な時間が作れました。」
「どこのホテルを使っていた。」
「いいえ。ホテルへは行っていません。ラブホテルも考えましたが、遠くでは時間が
少なくなり、近くでは知人に会わないとも限りません。何より百合子さんがホテルに
すんなり入ってくれるとは思えないので、自宅にしました。」
「自宅・・。おまえ達の寝室では、何か痕跡が残って奥さんにばれるだろ。」
「はい。寝室では知られる恐れが有りますが、私の書斎なら、会社の資料も置いて有
ったので部屋に鍵を掛けていましたし、重要な仕事を持ち帰っていた時は掃除も断っ
て、妻でさえ中には入れなかったので安心でした。・・それと仮眠用に・・ベッドも
有りましたし・・・・。」
「どうやって百合子を連れ込んだ。」
「金曜日の朝、少しでも長く百合子さんと会える様に、暇になったので今日から暫く、
4時迄にさせて欲しいとお願いして、こっそりメモを渡しました。」
その時妻が顔を上げて私の方を見たので、まだメモが有ると思い、見せる様に言うと
持って来ました。
メモ : 突然でごめんなさい。先月の検診で私が癌である事が分かり、どうも余り
良くないみたいです。私より妻が参ってしまいました。今日4時過ぎに下記の地図の
公園で待っていますので、私と一緒に自宅へ来て、妻の悩みを聞いてあげて貰えない
でしょうか。まだ誰にも知られたく無いので、社員やご家族に内緒でお願いします。
「これに百合子は騙されたのか・・・・。近所の目は気にならなかったのか。」
「私の家は分かり難いからと言って、公園から私の車の後部座席に乗せて、隠れて貰
いました。」
「隠れる・・・。」
「近所に有る事無い事言いふらす人が居て、2人だけで乗っていると誤解されても嫌
だから・・と騙して・・・・。」
「百合子は、家に誰も居ないのを不思議に思わなかったのか。」
「女房は買い物に行ったらしいと騙して、書斎まで連れて行き・・・。」
私はビデオをセットして、リモコンのスイッチを押しました。
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