投稿者:美鈴さんに捧げる 投稿日:2005/08/07(Sun) 01:42
ホテルに戻ると、もう午前1時を過ぎていました。ベッドに入っても、妻の事や彼女の事が頭に浮かびなかなか眠れずにいると、携帯に妻からの着信が有りましたが、出るつもりは有りませんでした。
ホテルのベッドは寝辛く熟睡が出来ずに辛い朝でしたが、出社すると休んだ分だけの仕事に追われ、気が付くともう終業時間に成っていました。まだ仕事が残っていましたが、身体が辛く早めに退社
する事にして、帰り仕度をしていると、彼女から前夜の事を気にしている様な事を言って来ました。
「酔いすぎてしまって、妙な事を言ったかもしれません。申し訳
有りませんでした。あれからご自宅に帰られたのですか?」
「いやホテルに泊まったよ。今日は帰ろうと思っているけどね。」
何か言いたそうな彼女を、お茶にでも誘おうかと思いましたが、その日は家に帰って、妻と話しをしょうと決めていました。当分の間帰らずに居様と思っていましたが、何か逃げている様な感じがして、腹立たしく成っていたのと、頻繁に掛かる妻からの電話に,
閉口してしまいました。
いざ帰路に着くと、何を話すべきか何も考えていなかった事が気に成ります。
『成る様にしか成らないさ。俺の気持ちは決まっているんだ。』
玄関の前に立つと、あの日の事を思い出し、やり切れない気持ちに成ってしまいましたが、そんな事を考えている時では無いと自分に言い聞かせます。
ドアを開けると、妻が飛び出して来ました。
「貴方何処へ行っていたの!何回も携帯に電話したのに出てくれないし。心配したんだから。」
この女は、何を心配したのでしょうか?何故こんなに平然として居られるのか、不思議で仕方が有りません。
「何処に行ってい様と、心配する事は無い。別に疚しい事も無いしな。お前は何をしていた?また男のマンションに行ってたのか?あそこは交通の便の良い所では無いから、通うのも大変だろう。
この前お前の車が停まっていたが、路上駐車は止めた方が良いぞ。」
妻の表情が、明かに変わりました。
「余り俺を舐めるなよ。まあ、全ては終った事だ。好きにすれば良いさ。お前は離婚届けに、サインさえしてくれれば良いんだ。もうしてくれているだろう?」
「・・・・いいえ、していません。する気持ちは有りません。」
「お前、何を考えているんだ?勝手な事ばかり言ってると思わないか?好き放題しておいて、自分の思い通りに成るなんて、都合の良い事を考えるべきでは無いな。その位は分かるよな?」
「こんな所で話していてもしょうが無いわ。中に入ってよ。」
私がリビングに入って行くと、妻が玄関のドアに鍵を掛ける音が聞こえました。
ソファーに座ると、妻はビールとつまみを用意して来ましたが、私は手を付けませんでした。
キッチンでまだ何かしている様子です。
「何をしているんだ?俺はお前と話しにに来たんだ。飯を食う為に来たんじゃないぞ。」
妻は手を止め、向かいのソファー腰を落としました。
「分かったわ。じゃあ、貴方のしてきた事は何なの?ここ何年か、私を女として見てくれたかしら?私は貴方にとって何なのかしら?」
「何を言いたい?自分のした事を正等化仕様とでも思ったか?余り都合の良い事は言うなよ。」
妻の思ってもいなかった反撃が、何を意味するのか分かりませんでした。
「私が貴方を裏切った事を、許してとは言わないわ。でもね、私も女なの。貴方には分からないかも知れないけれど、私は本当に寂しかったのよ・・・」
そう言うと激しく泣き出し、話をするどころでは無く成りましたが、
「泣けば良いと思っても駄目だ。そんな事で済まされる事では無い。お前が前に言っていた事は全て嘘だ。それに女だからって何だと言うんだ。俺に何を求める?あの男とお前はまだ続いているのだ
ろう?俺に求めて得られ無いものがあいつに有るのなら、あいつの所に行けば良い。離婚するそうだからな。お前も離婚届にサインして自由に成れば好きに出来るだろう。」
「・・・あの人とは、もう何も有りません。」
「俺に嘘を言って、あいつのマンションに行っておいて、そんな事信じられると思うか?都合の良い事ばかり言うなよ。」
「あの時は、本当に何も無かったの。信じてもらえないだろうけど、何も無かった。」
「それではお前が言っていた、浮気の理由が出鱈目だったのは何だ?奥さんが言っていたが、あいつが別居する原因はお前だったそうだな。よくもそんな酷い事を。お前とあいつの絆を感じるよ。
その絆をもっと強くする方が良いんじゃ無いのか?色々大変な事も有るだろうが、その方が楽だと思うけどな。」
「・・・そんな事無いわ。そんな事・・・」
より激しく泣き出し、私はこれ以上の話は無理だと思い、ただ天井を見詰める事しか出来ませんでした。
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