投稿者:KYO 投稿日:2006/02/27(Mon) 22:12
しかし、その淫乱女は私が誰よりも愛した妻なのです。いえ、正直
に言うとビデオの中のすっかり変貌した妻を見せつけられても、そ
の思いは変わらないのです。
すっかり思考停止の状態に陥った私は、無意識のうちに「写真」の
フォルダをクリックしていました。マウスは自然に「20041204」と
いうサブフォルダに移動します。サブフォルダの中には200枚以
上の画像ファイルがあります。
画像ファイルは整理しやすいよう、撮影順に自動的に番号が振られ
ているようです。私は一番若い番号の画像をクリックしました。
液晶画面一杯に妻の姿が現れました。それは、私が恐れていたよう
な、あるいは心のどこかで期待していたような裸や下着姿ではなく、
私がこの冬のシーズン初めに買ってあげた、お気に入りのグリーン
のコートを着て、車の前でにこやかに微笑む妻の立ち姿でした。
これから2人で温泉へとドライブを楽しむところなのでしょうか。
幸せそうな表情で写っている姿は、先ほど見た男の上で素っ裸で恍
惚の表情を浮かべている妻の姿態よりも、ある意味ショックでした。
写真の撮られた場所は私にも見覚えのある駅前の公園です。男は大
胆にも私の家の近くまで妻を迎えにきたのです。
次の画像をクリックします。アップになった妻の顔が画面一杯に広
がります。やはり妻は少し恥ずかしげな顔をカメラに向け、にっこ
りと微笑んでいます。
(どうして他の男にそんな顔を見せるんだ)
次の画像をクリックします。車のボンネットに片手をつき、モデル
のようにポーズを取る妻。男のものと思われるその車は、メルセデ
スベンツのAクラスでした。小さ目のその車体さえ妻と男の親密さ
を示しているようで、私の心は激しい嫉妬に焼かれます。
次の画像をクリックした私は、一瞬目を疑いました。
妻は今度はボンネットに片手をついたまま、カメラに向けたお尻を
思い切り突き出していました。なんと妻は空いた手でコートとスカ
ートを持ち上げ、黒いシースルーのパンティを丸出しにしています。
何と妻と男は、我が家の近くの公園で野外露出まで楽しんでいたの
です。
私はぶるぶる震える手で次の画像をクリックします。今度はカメラ
が妻にぐっと寄り、画面一杯に薄いパンティに包まれた妻のお尻が
映し出されます。
私は最悪の予感を覚えながら次の画像をクリックしました。そこに
現れた画像はやはり妻の裸の尻でした。突き出された大きな尻に完
全に打ちのめされた私は、急いで画像を閉じました。
急に、妻を失うかもしれないという恐怖と悲しみが私を襲いました。
それは先程感じた妻に対する怒りよりもはるかに激しい感情でした。
いや、私は既に妻を失っているのかもしれないのです。
殺しても妻を失う。殺さなくても妻を失う。私はどうしたら良いの
か分からなくなりました。
(とにかく、少し落ち着かなくては……)
考え事をしている間にだいぶ時間が経ってしまいました。妻が帰っ
て来るまであと1時間もありません。小説やドラマでは登場人物は
こんな時大抵煙草を吸います。しかし、私は気管が弱く煙草を吸わ
ないので、珈琲をいれることにしました。
妻にどうやって対処するかを、あと1時間弱で決めなければなりま
せん。日常的な動作をすれば人は落ち着くものなのでしょうか。珈
琲豆を挽き、珈琲メーカーにいれ、スイッチを入れる。落ち着いた
のは良いのですが、ショックが大きかったためか、私の思考は完全
にストップしています。
珈琲がポットの中に溜っていくのをぼんやり見ていると、いきなり
玄関のチャイムがなり私は飛び上がるほど驚きました。
「ただいま」
妻が帰って来ました。予定より早い帰宅に何の心の用意も出来てい
なかった私はうろたえました。あわてて玄関に行き、内鍵を外しま
す。
「お、お帰り」
「一人にさせてすみません」
妻は例の男との温泉旅行でも着ていたグリーンのコートを脱ぎなが
ら、居間に入って来ます。
「あら、珈琲をいれていたの?」
テーブルの上で珈琲メーカーがポコポコと音を立てているのに気づ
いた妻が、明るい声で尋ねます。
「私の分もあるかしら?」
「あ、ああ……」
「ありがとう」
妻はそういうといそいそと珈琲カップやソーサー、ミルクなどを用
意します。私はふと気になって妻のノートPCの位置を確認しまし
た。いつも置かれている棚の上にあるのを見て胸をなでおろします。
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